第2節 震災後の国民意識の変化 (国民意識の変化)  未曾有の震災である今回の東日本大震災は、防災等に対する国民意識を大きく変えた。国土交通省が平成24年1月末〜2月に実施した国民意識調査(以下「国民意識調査」)注において、「東日本大震災後の考え方の変化」について聞いたところ、「防災意識の高まり」(52.0%)が最多で、「節電意識の高まり」(43.8%)、「家族の絆の大切さ」(39.9%)が続いた。 図表42 東日本大震災後の考え方の変化  また、「社会資本に求める機能」については、「安全・安心を確保する機能」(74.4%)が最多で突出しており、「高齢者、障害者対応の機能」(25.8%)、「環境対策の機能」(24.1%)、「地域経済活性化の機能」(23.5%)、「省エネ機能」(19.3%)が僅差で続いている。 図表43 社会資本に求める機能 (企業における災害対応意識の高まり)  東日本大震災では、サプライチェーンの寸断による生産減等、民間の経済活動に多大な影響が生じた。そのため、企業行動においても、今回の震災を機に災害対応の意識が高まり、災害時の事業継続体制を強化する動きが見られる。具体的には、日銀さくらレポート(平成23年10月)において、多重性(リダンダンシー)という観点から複数拠点で生産する体制づくりや工場等の移転・再配置を検討する動き、部材調達の複線化や在庫の積み増し等を検討する動き等があると指摘されている。 図表44 東日本大震災を受けてBCPにおいて対策が必要と考える項目  また、震災後、企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)という考え方に基づき、寄付や物資供給のほかに、人の派遣といった支援を行う企業が見られた。これを機にボランティア休暇制度を設ける企業もあった。会社内の部門横断でチームを作り被災地へ送り出す企業や、被災地で活動するNPOの戦略づくりを支援する企業、昼休み時の活動を用意する企業等、多様な取組みが見られた。 図表45 企業による被災地支援実施状況 (不動産の災害リスクや省エネ性能への関心の高まり)  震災後、不動産の災害リスクへの関心が高まっている。「主要都市の高度利用地地価動向報告」(平成23年第3四半期)によると、東北地方の被災地のみならず、東京圏においても、海岸・湾岸沿いの物件や高層マンションの高層階への需要減退が見られたほか、中古物件の耐震性への不安感等、災害リスクへの関心が高まっている様子がうかがえる。 図表46 不動産の災害リスクへの関心の高まり  また、今回の国民意識調査においても、重視する住宅性能として、「耐震化や免震化等、地震に強い家」が最多(67.5%)で、次いで「省エネに優れた家」(54.0%)であった。 図表47 住宅性能で重視する点  さらに、(独)住宅金融支援機構が震災後の23年10月に民間住宅ローン利用予定者を対象に実施した調査においても、住宅取得時に「耐震性能」、「省エネ性能」を重視し、コストアップをしてもこれらの性能を高めたいと回答した者のうち約8割が5〜10%までのコストアップなら許容できると回答した。 図表48 住宅の耐震性能や省エネ性能へのコスト負担意識 注 平成24年1月〜2月に、全国の満20歳以上の男女を対象に、インターネットベースにて実施し、4,000人の回答を得た。地域、世代、性別による偏りが生じないよう、実際の人口構成比に合わせて割付を行っている。