第1節 若者を取り巻く社会経済状況の変化

(2)長期的な経済の低迷

(経済成長率の低迷)
 我が国の経済は、第二次世界大戦の戦後復興と高度経済成長期を経て大きな成長を遂げ、1960年代の終わりには世界第2位の経済大国となった。しかしながら、1990年初めのバブル崩壊を受け、1988年度に6.4%だった実質経済成長率は1993年度に-0.5%まで減少するなど、我が国の経済成長はそれまでと比べ大きく落ち込むこととなった。2002年からは長期の景気拡張過程に入っていたが、2008年にはリーマンショックを契機とした世界経済の低迷の影響を受け、我が国の経済成長率はマイナス成長に転じ、その後も低成長を続けている(図表13)。
 
図表13 実質GDP、実質経済成長率の推移
図表13 実質GDP、実質経済成長率の推移
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 このようにマクロ経済が変化する中で、これまでの若者はそれをどのように体感していたのだろうか。若年期に経験した経済成長率を世代別に見てみると、現在の若者は、以前の若者世代が経験したよりも低い経済成長率を経験していることが分かる。2012年時点で69歳(1943年生まれ)の人々が20代・30代の頃に経験した経済成長率の平均が6.59%だったのに対し、59歳(1953年生まれ)の人々は3.99%、49歳(1963年生まれ)の人々は2.55%、39歳(1973年生まれ)の人々は0.83%、29歳(1983年生まれ)の人々は0.84%と、おおむね、近年になればなるほど、若年期に経験した経済成長率の平均が低くなる傾向にある(図表14)。
 
図表14 各世代の若年期の経済成長率
図表14 各世代の若年期の経済成長率
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(失業率の上昇)
 次に、完全失業率の推移を見てみる。年齢別の完全失業率は、どの年齢層でも上昇しているものの、20〜24歳では特に上昇幅が大きく、1970年には2.0%だった失業率が2012年には7.9%となるなど、現在の若者は以前の若者と比較して高い水準の失業率に直面している(図表15)。
 
図表15 若者の失業率の推移
図表15 若者の失業率の推移
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 世代ごとに、各年齢で経験した完全失業率を見てみても、同一の年齢時点で比較した場合、若い世代ほどより高い失業率を経験していることが分かる。例えば、20〜24歳時点では、1953〜1962年生まれの世代では3.5%、1963〜1972年生まれの世代では4.3%、1973〜1982年生まれの世代では7.8%、1983〜1992年生まれの世代では8.2%の失業率を経験しており、その後、25〜29歳、30〜34歳と年齢を重ねた際に、それぞれの世代において20〜24歳時よりも失業率はおおむね低下しているものの、若い世代ほど、より高い水準のまま推移している(図表16)。
 
図表16 世代別にみた完全失業率の推移
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(デフレーションの進行)
 また、物価水準の推移を見てみると、1970年から長期的に物価の上昇が続いていたが、1998年をピークに下落傾向に転じることとなった。1999年以降、2012年までは物価の下落が続いており、現在の若者は若年期のほとんどをデフレーションの中で過ごしていると言える(図表17)。
 
図表17 消費者物価指数の推移(全国)(2010年=100)
図表17 消費者物価指数の推移(全国)(2010年=100)
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 このように厳しい経済状況を経験してきた影響もあり、国土交通省が2013年3月に実施した国民意識調査(以下「国民意識調査」という。)注1において、10年後の社会に対するイメージを尋ねたところ、「不安がある社会」、「暗い社会」等と答えた者の割合は他の年齢層よりも高くなっている(図表18)。
 
図表18 10年後の社会に対するイメージ
図表18 10年後の社会に対するイメージ
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注1 2013年3月に全国の20代から60代までの男女を対象に、インターネットを利用して実施し、4,109人の回答を得た。地域、性別による偏りが生じないように、実際の人口構成比に合わせて割付を行っている。


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