第3節 動き方の変化

(5)移動需要の変化

 先に見たように、三大都市圏においては、自動車の利用が減少する一方で鉄道の利用が進んでおり、車による移動が公共交通機関による移動に代替されている様子がうかがえる。車を保有していない者について車を持たない理由を尋ねると、過半数の者が、公共交通機関で十分移動できると答えており、また、4割を超える者が、自転車、バイク、徒歩等の公共交通機関以外の交通手段によって十分移動できると答えている(図表170)ことから、公共交通の利便性が高まったことや、様々なモノ・サービスへのアクセシビリティの高いまちの中心部に居住する者が増えたこと等により、車に依存しない生活を送る者が増えていると推察される。
 車での移動を代替するものは、他の交通手段に限らない。「移動」というものは、ドライブ等交通機関での移動そのものを目的とする場合もあるが、そのほとんどは、通勤・通学や買い物等の目的を果たすために派生的に発生するものと言える。これまでは、人々が、目的のモノやサービスを得られる場所に移動することによって目的を達成することが多かったが、近年は、情報通信技術や物流網の発達等により、人が移動せずとも得られるようになったモノやサービスもある。例えば買い物については、店舗に出かけ、店員に相談をしながら商品を比較し購入するという従来の方法に加え、インターネットで商品を検索し、口コミを見ながら商品を比較し、購入したものを自宅に届けてもらうという方法が急速に普及している。実際に、年齢別に買い物先を見てみると、他の年齢層と比べ、30歳未満や30代では一般小売店やスーパーにおける買い物の割合が低く、インターネットによる通信販売による買い物の割合が高くなっている(図表178、179)。
 
図表178 年齢階級別に見た買い物先
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図表179 年齢階級別インターネット販売の利用状況
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 このような移動をめぐる変化は、都市部・地方部のそれぞれにおいて人々の暮らし方を大きく変えるものと考えられる。モノ・サービスには、例えば、病院で精密な検診を受けたり、観光名所をめぐったりといったように移動させられないものがあることや、移動自体を楽しみたいという需要も引き続き存在すると考えられることから、今後も、モノ・サービスの性質により、人をモノ・サービスに近づける機能とモノ・サービスを人に近づける機能の両方を保ちつつ、移動自体に対する人々の需要も踏まえながら、望ましい交通のあり方が検討されることが重要である。


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