第3節 社会インフラの維持管理をめぐる状況

◯1 社会インフラの老朽化

 我が国では、1964年の東京オリンピックの頃に整備された首都高速1号線をはじめ、高度成長期以降に整備したインフラが急速に老朽化し、今後20年間で、建設後50年以上経過する施設の割合が加速度的に高くなる見込みである(図表1-3-1)。
 
図表1-3-1 建設後50年を経過する社会資本の割合
図表1-3-1 建設後50年を経過する社会資本の割合

 
図表1-3-2 さまざまなインフラの老朽化
図表1-3-2 さまざまなインフラの老朽化

 我が国のインフラが、全体としてどの程度老朽化が進んでいるかについて、インフラのヴィンテージ注13という概念で見ていく。図表1-3-3は、内閣府「日本の社会資本2012」等のデータを用いて、国土交通関係8分野のインフラのヴィンテージの推移を試算したものである。戦後間もない時期には、日本にインフラの蓄積が少なかったため、新規投資が進むにつれてヴィンテージは低下(インフラの平均経過年数が低下)していったが、高度成長期を経てインフラが一定程度蓄積されてくると、ヴィンテージは上昇に転じた。そして、2000年代以降は、公共投資の削減が進むなかで、整備されて間もない社会資本ストックの割合が低下したことから、ヴィンテージは高まってきている。
 
図表1-3-3 国土交通関係8分野のインフラのヴィンテージ
図表1-3-3 国土交通関係8分野のインフラのヴィンテージ
Excel形式のファイルはこちら

 このようななかで、社会インフラの老朽化に対する国民の不安は高まっている。2012年12月2日には、中央自動車道笹子トンネルにおいて天井板の落下事故が発生し、道路構造物が通常の供用状態下で落下し死亡者・負傷者が生じるという、我が国において例を見ない重大な事故となった。国土交通省において実施したアンケート調査(以下「国民意識調査」という。)注14で見ると、この事故の後、社会インフラの老朽化問題を認知している人の割合と、社会インフラの今後について不安に思う人の割合は高まっており、人々の社会インフラの老朽化に対する関心は高まっていることがうかがえる(図表1-3-4)。
 
図表1-3-4 社会インフラの老朽化をめぐる意識
図表1-3-4 社会インフラの老朽化をめぐる意識
Excel形式のファイルはこちら

 個別の社会インフラの老朽化程度には、立地条件や利用条件等によりばらつきはあるが、供用後に特に大規模な補修・修繕や更新を行わなければ、おおむね経過年数や過酷な使用状況の蓄積に伴い、インフラの損傷は進んでいく。例えば、首都高速道路株式会社の調査では、供用経過年数や累積交通量に応じて、kmあたりの損傷数が増加することが確認されている(図表1-3-5)。
 
図表1-3-5 首都高速道路の老朽化の状況
図表1-3-5 首都高速道路の老朽化の状況

 老朽化したインフラは、本来は適切に補修・修繕を行い、機能維持を図ることが望ましいが、なかには、適切な補修・修繕が実施されないこと等により損傷程度が悪化し危険性が増し、供用することができなくなったインフラも出てきている。こうした状況は市区町村においてより深刻であると考えられ、通行止め・通行規制が行われている橋梁について見ると、その数は、管理する橋梁数が国等に比べて多い市区町村において大きく増加している(図表1-3-6)。
 
図表1-3-6 全国の通行止め橋梁数・通行規制橋梁数
図表1-3-6 全国の通行止め橋梁数・通行規制橋梁数
Excel形式のファイルはこちら



注13 ヴィンテージとは設備の古さのことであり、ここではある時点における社会インフラの平均経過年齢を示している。
注14 2014年2月に、全国の個人を対象としてインターネットを通じて実施(回答数3002)。なお、比較に用いている過去の調査結果は、それぞれの時点において全国の個人を対象として、インターネットを通じて実施したものである。


テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む