まとめ

まとめ

 以上のように、我が国においても社会インフラ整備の歴史は古く、先人たちの知恵と努力によって蓄積されてきた社会インフラが、今日の我が国の経済社会の諸活動や日々の生活の基盤にある。
 今日の我が国は、人口減少社会へと移行しつつあり、今後急激な人口減少が予想される中で、厳しい財政状況を克服しつつ、安定した経済活動の維持に努め一定の経済成長を実現していくことが必要となる。また、我が国特有の厳しい国土条件のなかで引き続き国民の安全・安心は確保していかねばならない。コンクリートにも寿命があるように、整備されたインフラには寿命があり、その効果が永続的に発揮されるわけではない。これまでに整備してきた社会インフラを適切に維持管理することでその機能を適切に発揮させるとともに、必要な社会インフラについてはその充実を図ることが重要となる。さらに、将来世代のためにも、こうした取組みが持続的に行われるよう戦略的に取り組んでいくことが必要である。
 そのためにはまず、厳しい財政状況のなかで、これまでに蓄積された社会インフラをより効率的かつ有効に活用していく「賢さ」が求められる。社会インフラには経済活動を支える機能があり、その機能が適切に発揮されることが経済成長を下支えする。すでにある社会インフラをより賢く使うことができれば、我が国の成長力を高めることにもつながっていくはずである。
 さらに、歴史をふり返ってわかるように、社会インフラの整備や維持管理は公的な主体が中心となって行われてきたものであることは事実であるが、必ずしもそのすべてを公的主体が担ってきた訳ではなく、時代時代の要請に応じて、様々な主体がその役割を担ってきている。江戸期において橋の管理が地域住民の手によって行われたように、これからの社会インフラの維持管理も、適切な役割分担のもと、多様な主体の様々な知恵を活用しつつ連携していくことによって、必要な社会インフラを「みんなで支える」ことが必要であろう。
 そして、我が国の経済社会が持続的に成長していくためには、歴史に学びつつ常に将来を意識した取組みを進めていくことが必要である。「荒廃するアメリカ」は、我が国の社会インフラの維持管理を考える際の重要な教訓である。目先の対応に囚われて長期的な視点を欠いてはそのツケが将来世代に及ぶ。将来世代は先人たちが下した決断を変えることはできない。こうした観点から、有効に活用できていない社会インフラについては思い切って廃止することも含めて、将来生じるリスクや負担等、「将来を見越した」取組みを進めていくことが必要である。
 以下、第2章では、1)賢く使う、2)みんなで支える、3)将来を見越す、という3つの視点から、現在進められている各種の取組みを紹介しつつ、その必要性について考察していく。


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