ロードプライシングを導入した結果、課金エリアに進入する車両は18%、課金エリア内を通行する車両は15%減少し、交通渋滞は30%緩和されました。また、公共交通利用者が増え、バスの運行本数は23%増加し、バスの運行時間の遅れは60%減少しました。さらに、課金エリア内において、CO2の排出量は19%、燃料消費量は20%減少しました。
また、ロンドン交通局(Transport for London)では、交通量だけでなく、ロードプライシング導入の便益や費用を市場価値に換算して測定しています。効果の測定にあたっては、各主体への影響(料金収入等)と社会的影響(交通事故の減少等)に分け、それぞれについて便益と費用を試算しています。その結果、社会全体の便益は費用を7100万ポンド上回ることが示されており、ロードプライシング導入が社会全体として望ましい結果をもたらしたことが示されています(図表2-1-6)。
なお、一日の通行料については、2005年に8ポンド、2011年には10ポンドに引き上げられ、課金エリアについては、2007年に一旦拡大されたものの2011年には当初のエリアに戻されるなど、様々な動向を踏まえての制度変更が行われています。
このように、ロンドンではロードプライシングを活用することで、道路という社会インフラを賢く使い社会全体の効用を高めています。
ストックホルムの事例
ロードプライシングは、スウェーデンのストックホルムにおいても行われています。ストックホルムでは、中心部の混雑緩和と生活環境改善(排出ガス削減、住環境改善)のため、2006年1月から7月にかけてロードプライシングが試行され、2007年8月からは恒久的措置として導入されています。
同制度は平日の6:30から18:30までの間にストックホルム中心部に流出入する車両を対象に課金をするものです注2。課金ポイントは18箇所あり、課金ポイントを通過する際に、レーザーで車両を検知して前後のナンバープレートを撮影するという仕組みになっています(図表2-1-7、図表2-1-8)。課金額は時間帯により異なり、1回通過するごとに10、15、20クローナ(150、225、300円注3)必要になります注4。
ロードプライシングの導入により、ストックホルムにおいても、公共交通機関の利用者が増加し、中心部の交通渋滞は緩和されました。平日の6:00から19:00の間に課金ポイントを通過する車両数は、同制度を適用した2006年の1月から7月と2007年の8月以降は、課金をしていない2005年と比べると約2割減少しています(図表2-1-9)。
なお、同制度は住民に好意的に受け入れられている点も特徴といえます。試行前の住民アンケートでは「賛成」、「おおむね賛成」と答えた者の割合は36%でしたが、試行後の投票では、53%の住民が同制度の継続を支持しました。2007年8月に恒久的措置として再実施されると、年々支持者は増え続け、2011年5月にストックホルムとその周辺地域で行われた投票では、7割を超える支持を得ています。
(参考文献)