第3節 将来を見越す

コラム 「ドボジョ」〜Civil Engineering注1の世界で働く女性たち〜

 土木系の仕事や学問に携わっている「土木好きの女子」を指す呼び名、「ドボジョ」という言葉をご存じでしょうか。
 1982年、土木学会誌に「女性土木技術者登場」の特集が組まれて以降、女性の土木技術職への進出は拡大してきています。文部科学省の学校基本調査を見ると、大学の土木工学科・土木建築工学科で学ぶ学生に占める女性の割合は、1993年では9.4%でしたが、男子学生数が大幅な減少傾向であった一方、女子学生数は大きな変動がなかったこともあり、2013年には16.7%まで増加しました。また、大学卒業後に建築・土木・測量技術者として就職した人のうち、女性が占める割合も徐々に高まってきています。
 
図表2-3-51 土木工学・土木建築学学生数と女子学生の割合の推移
図表2-3-51 土木工学・土木建築学学生数と女子学生の割合の推移
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 では、実際に女性の土木技術者はどのくらい存在するのでしょうか。「国勢調査」(2010年)によると、女性の土木・測量技術者数は5,870人(女性比率2.4%)とされており、土木学会企画委員会実施の「技術者動向調査」(2012年12月)によれば、その活躍の場は、官公庁、大学、建設会社、電力会社、コンサルタント業等様々な業種に広がっていると考えられます。
 
図表2-3-52 建築・土木・測量技術者 就業者数の推移
図表2-3-52 建築・土木・測量技術者 就業者数の推移
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 漫画でもヒロインとして取り上げられた「ドボジョ」。この言葉は、「土木系女子」だけでなく、「作業服姿にヘルメットをかぶり、土木・建築の現場で働く女性たち」すべてを表す言葉として定着しつつあります。しかし、工事現場は通常「囲い」がなされているため、実際に作業をしている「ドボジョ」を目にする機会は少ないようです。そのため、これから土木の世界に入ろうと考える女性には、まだまだ不安も多くあります。1983年に発足した「土木技術者女性の会」注2では、これから「ドボジョ」を目指す女性のために、土木の仕事をイラストで紹介したり、先輩女性土木技術者からのメッセージを込めた「ロールモデル」を集めた冊子「Civil Engineerへの扉」を作成しています。また、女性土木技術者を応援する本は土木学会からも発行されています。
 
図表2-3-53 漫画「ドボジョ」
図表2-3-53 漫画「ドボジョ」

 
図表2-3-54 女性土木技術者を紹介する本
図表2-3-54 女性土木技術者を紹介する本

 今後、ますます女性の活躍が広がっていくと予想されるなか、日本建設業連合会では女性技能労働者について5年以内に倍増を目指すことを目標にした、女性技能労働者活用のためのアクションプランを策定(2014年3月20日)し、会員各社に対して職場環境の整備等に積極的に取り組むよう求めています。また、国土交通省においても、「もっと女性が活躍できる建設業」へ向けて官民を挙げた取組みを進めていくこととしています。
 
図表2-3-55 女性技能労働者活用のためのアクションプラン
図表2-3-55 女性技能労働者活用のためのアクションプラン

 多くの人の笑顔のために働く女性たち、彼女たち自身が輝く笑顔で働くことができる、そんな土木・建築の現場が今後増えていくことが期待されています。


注1 「市民のための工学」あるいは「市民の文明的な暮らしのために、人間らしい環境を整えていく仕事」を意味する言葉。(公益社団法人 土木学会ウェブサイトhttp://www.jsce.or.jp/より)
注2 2013年11月18日に「一般社団法人土木技術者女性の会」となりました。


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