第3節 産業の活性化

◯9 持続可能な建設産業の構築

(1)建設産業を取り巻く現状と課題
 建設産業は、地域のインフラの整備や維持管理等の担い手であると同時に、地域経済・雇用を支え、災害時には最前線で地域社会の安全・安心の確保を担う地域の守り手として、国民生活や社会経済を支える大きな役割を担う。
 一方、近年の建設投資の急激な減少等によるダンピング受注や下請企業へのしわ寄せなどを背景として、現場の技能労働者の減少、若手入職者の減少、高齢化の進行等の問題が発生しているため、防災・減災、老朽化対策、インフラメンテナンス、耐震化の整備等の業務に十分対応できるよう、中長期的に持続可能な建設産業の構築が重要となる。
 建設投資、許可業者数及び就業者数の推移は図表II-6-3-14のとおりである。
 
図表II-6-3-14 建設投資(名目値)、許可業者数及び就業者数の推移
図表II-6-3-14 建設投資(名目値)、許可業者数及び就業者数の推移
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(2)建設産業の担い手確保・育成について
 建設産業は、技術者・技能者の能力が生産の成否を左右する「人」が支える産業であり、将来にわたって、安全安心な国土の形成など重要な仕事を担っていくためには、若い労働者の入職を促進し、技術・技能を身につけながら、誇りを持って仕事に打ち込めるような環境を整えていく必要がある。
 このため、行政と建設業界が一体となって、技能労働者の適切な賃金水準の確保や社会保険への加入徹底等の就労環境の改善に取り組むとともに、技術者や技能労働者の育成を図るため、建設産業界の人材育成の拠点である富士教育訓練センターの機能の充実強化を推進している。
 また、早期資格取得に向けたインセンティブを与え、優秀な若手技術者を確保するため、技術検定試験の受検資格の見直しを行っている。
 さらに、建設産業に対する世間一般のイメージ向上や入職が期待される若者へのアピールを図るための戦略的な広報活動を推進している。
 これらの取組みに加え、作業管理・調整能力等を有し、基幹的な業務に従事する登録基幹技能者の確保・育成・活用を積極的に推進している。登録基幹技能者数は、平成26年3月31日現在で41,951人(32職種)となり、経営事項審査における加点評価や公共工事における総合評価落札方式(試行工事)における活用等を実施している。

(3)公正な競争基盤の確立
 地域のインフラの整備や維持管理等、地域社会の安全・安心を確保するための担い手である建設産業においては、「その技術力・施工力・経営力に優れた企業」が、成長していけるよう、建設業者における法令遵守の徹底をはじめとする公正な競争基盤の確立が重要である。このため、従来より下請取引等実態調査や立入検査等の実施、建設工事の請負契約を巡るトラブル・苦情等の相談窓口「建設業取引適正化センター」の設置、「建設業取引適正化推進月間」(11月)における都道府県との連携等を通じて、建設業における元請・下請間の取引の適正化に取り組んでいる。

(4)建設企業の支援施策について
1)地域建設業経営強化融資制度
 地域建設業経営強化融資制度は、元請建設企業が公共工事請負代金債権を担保に事業協同組合等又は一定の民間事業者から工事の出来高に応じて融資を受けることが可能となるものであり、これにより元請建設企業の資金繰りの円滑化と金利負担等の軽減を図っている。
 
図表II-6-3-15 地域建設業経営強化融資制度
図表II-6-3-15 地域建設業経営強化融資制度

 なお、本制度は平成20年11月から実施されており、26年度においても引き続き実施することとした。

2)下請債権保全支援事業
 下請債権保全支援事業は、ファクタリング会社注1が、下請建設企業等が元請建設企業に対して有する工事請負代金等債権の支払を保証する場合に、保証時における下請建設企業等の保証料負担を軽減するとともに、保証債務履行時のファクタリング会社の損失を補償することにより、積極的な債権の支払保証を促進する事業である。
 
図表II-6-3-16 下請債権保全支援事業
図表II-6-3-16 下請債権保全支援事業

 なお、本事業は平成22年3月から実施されており、26年度においても引き続き実施することとした。

3)建設業災害対応金融支援事業
 建設業災害対応金融支援事業は、災害対応等のため災害時において使用される代表的な建設機械の中小・中堅建設企業による購入及び東日本大震災により被災した中小・中堅建設企業による建設機械の購入に係る借入金の金利負担を支援する事業である。
 なお、本事業は平成25年3月から実施されており、26年度においても引き続き実施するとともに助成対象機種を3機種から41機種に拡充した。

4)建設企業のための経営戦略アドバイザリー事業
 建設企業のための経営戦略アドバイザリー事業は、中小・中堅建設企業の新事業展開等の経営上の課題又は施工管理等の技術的な課題の解決を支援するため、中小企業診断士等専門家によるアドバイスを実施する事業である。また、特に他企業に対するモデル性のある案件については、専門家の支援チームによる経営改善計画の策定等の目標達成までの継続支援(チームアドバイス支援)や建設企業のもつノウハウを活かした地域の課題解決に資する事業に要する経費の一部支援(ステップアップ支援)を実施しており、平成25年度はチームアドバイス支援23件、ステップアップ支援20件を選定して支援を実施した。
 なお、本事業は23年4月から実施されており、26年度においても引き続き実施するとともに建設関連企業(測量業、建設コンサルタント及び地質調査業)も本事業の対象に加えることとした。

(5)建設関連業の振興
 建設関連業(測量業、建設コンサルタント、地質調査業)全体の登録業者情報を毎翌月末に、その情報を基にした業種ごとの経営状況の分析を翌年度末に、さらに地方公共団体における登録制度の活用状況の調査結果を平成25年11月に、それぞれホームページにて公表しており、建設関連業の健全な発展と登録制度の有効な活用に努めている。

(6)建設機械の現状と建設生産技術の発展
 我が国における主要建設機械の保有台数は、平成23年度で約81万台注2であり、建設機械の購入台数における業種別シェアは、リース・レンタル業が約54%、建設業が約18%となっている。
 なお、建設業の死亡災害のうち、建設機械等によるものは約15%を占め、建設機械施工安全技術指針及び建設機械施工安全マニュアルの周知等により、建設機械施工の安全対策を推進している。
 また、ICTを活用した革新的な施工技術である情報化施工の普及促進を図っており、25年度は、第二期「情報化施工推進戦略」(25年3月策定)に基づき、トータルステーションによる出来形管理技術を直轄事業で一部使用原則化するとともに、マシンコントロール/マシンガイダンス技術を一般化推進技術に位置付け、積極的な活用を図っている。

(7)建設工事における紛争処理
 建設工事の請負契約に関する紛争を迅速に処理するため、建設工事紛争審査会において紛争処理手続を行っている。平成24年度の申請実績は、中央建設工事紛争審査会では50件(仲裁7件、調停40件、あっせん3件)、都道府県建設工事紛争審査会では105件(仲裁31件、調停67件、あっせん7件)となっている。


注1 他人が有する売掛債権の保証や債権の買取りを行い、その債権の回収を行う金融事業会社のこと。現在、銀行子会社系・前払保証会社系・リース会社系など10社のファクタリング会社が、当事業を運営している。
注2 主な機種:油圧ショベル約582千台、車輪式トラクタショベル約132千台、ブルドーザ約34千台


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