コラム 公共施設・公的不動産(PRE)とPPP/PFIの活用  第1章第2節2.「人口減少が地方のまち・生活に与える影響」で見たように、人口減少とそれに伴う経済・産業活動の縮小による税収入の減少や、高齢化の進行から社会保障費の増加が見込まれることにより、地方財政はますます厳しさを増していくことが予想されます。このようななかで、公的不動産の有効活用や高度経済成長期に建設された公共施設や道路・橋・上下水道といったインフラ老朽化問題への対応が課題となります。 (まちづくりと公的不動産(PRE)の連携)  コンパクトシティ形成に向けて都市のコンパクト化と交通ネットワーク形成を進めるに当たっては、都市全体の観点から、医療・福祉、中心市街地活性化、公的不動産(Public Real Estate:PRE)の再編等の関係施策との整合性を考慮する必要があります。先述のコンパクトシティ形成支援チームにおいても、これらの関係施策について市町村の取組みを支援することとしています。  その一つであるPREの現状について見ると、インフラの老朽化が進行する現在、耐用年数から公共施設やインフラ資産の老朽化状況を調査した結果、公共施設では約43%が老朽化しており、橋梁等他のインフラと比較して老朽化が進んでいることが分かります。  また、将来的には公共施設等の更新費用は増加する見込みであり、既存の公共施設等を現状のペースで維持更新を続けることは非常に困難となることが予想されています。  そのため、上記のような公共施設等の既存ストックを有効活用するとともに、コンパクトなまちづくりを行うためにも、PREの再編とまちづくりとの連携を図っていくことが重要となります。  我が国の不動産全体の約2,400兆円のうち、国・地方公共団体が所有しているPREは約590兆円(全体の約25%相当)存在しており、このうち、地方公共団体が所有するPREは約450兆円となっており、PRE全体の75%以上を占めています(図表2-2-28)。 図表2-2-28 我が国の公的不動産(PRE)の規模  そのため、PREについては公共・公益的な目的を踏まえつつ、経済の活性化及び財政健全化を念頭に、適切で効率的な管理、運営を推進することが重要となります。  国土交通省では、2013年6月に「都市のリノベーションのための公的不動産活用検討委員会(PRE検討委員会)」を設置し、地方公共団体におけるPREのまちづくりへの有効活用方策について検討を行っており、PRE検討委員会の検討結果を2014年4月に「まちづくりのための公的不動産(PRE)活用ガイドライン」として公表しました(図表2-2-29)。 図表2-2-29 「まちづくりのための公的不動産(PRE)有効活用ガイドライン」の概要  先進的な地方公共団体では、所有するPRE情報を整理・一元化し、まちの特性に応じた公共機能の再配置計画や公共施設白書等を既に作成しており、公有地を民間生活サービス機能の整備に活用するなど、将来のまちのあり方を考えた取組みを行っています。 (公共施設・公的不動産(PRE)の利活用についての民間活力の活用)  また、真に必要なインフラの整備・維持管理・更新と財政健全化の両立のためには、民間の資金・ノウハウの活用、すなわちPPP 注1 /PFI 注2 等による効率化を図ることも重要です。  1999年に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)」が制定されてから、2014年度までに実施方針を公表したPFI事業は489事業、総事業費は4兆5,015億円に達しています(図表2-2-30)。 図表2-2-30 PFI事業数及び事業費の推移(累計)  このうち、国土交通省関係のPFI事業は、地方公共団体が実施するものも含めて、2015年1月時点で累計139件、事業内容は庁舎、公営住宅等が中心となっています。また、スキーム別では、民間PFI事業者が整備した公共施設等の費用を公的主体が対価(サービス料)を延べ払いで支払う「サービス購入型」が大半を占めています(図表2-2-31)。 図表2-2-31 国土交通省関係のPFI事業の内訳(2015年1月1日現在)  国土交通省では、公共施設等運営権制度(コンセッション)の活用、収益施設の公共施設等への併設・活用、民間の提案を活かした公的不動産の有効活用などに政府が一体となって取り組み、2013年度からの10年間で12兆円規模に及ぶPPP/PFI事業を推進するとの目標を掲げた「PPP/PFIの抜本改革に向けたアクションプラン」(2013年6月民間資金等活用事業推進会議決定)及び、向こう3年間(2014年度から2016年度)を集中強化期間に設定しコンセッションを重点的に推進するとの政府全体の取組方針(2014年6月)を踏まえ、空港、下水道、道路におけるコンセッションの活用を推進するとともに、PPPを活用した首都高速の再生についても検討を進めています。 注1 Public Private Partnershipの略。公共サービスの提供において何らかの形で民間が参画する方法を幅広く捉えた概念で、民間の資金やノウハウを活用し、公共施設等の整備等の効率化や公共サービスの水準の向上を目指す手法のこと。 注2 Private Finance Initiative の略。公共施設等の建設、維持管理、運営等に民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより、効率的かつ効果的に社会インフラを整備・運営する手法。対象事業における資金調達を公的主体ではなく民間側が担う点が大きな特徴。