第2節 総合的・一体的な物流施策の推進

■2 国内における効率的・持続的な物流システムの構築のための施策

 環境への負荷の低減を図りつつ、我が国産業の競争力強化及び物流の生産性向上に資するよう、国内における効率的・持続的な物流網構築のための取組みを進めている。

(1)地域間物流の効率化
 複合一貫輸送等の推進に向け、港湾・貨物駅等の物流結節点の整備等を進めている。これまで鉄道貨物輸送力増強事業を行った施設整備を活用することで、更なる貨物鉄道輸送の効率化が期待される。このほか、東予港等で海上輸送と他の輸送モードとの連携強化のため、複合一貫輸送ターミナルの整備等を実施している。さらに、鉄道輸送障害時の代替輸送に係る諸課題について、平成27年6月に報告書を取りまとめた。また、輸出入コンテナ貨物の国内輸送においては、40フィート背高コンテナの鉄道輸送へのモーダルシフトを促進するため、27年度からトンネル等の既存構造物の高さの制約に対応した低床貨車の開発を進めている。
 また、トラック輸送の効率化に向けて、基幹的な道路ネットワークを整備する。

(2)都市・過疎地等の地域内物流の効率化
 「流通業務市街地の整備に関する法律」に基づき、平成28年3月末までに20都市、29箇所の流通業務市街地注1の整備が行われ(うち27箇所が稼働中)、流通業務施設の適切かつ集約的な立地により都市の流通機能の向上及び道路交通の円滑化を図っている。
 また、路上荷捌き駐車を削減するため、駐車場附置義務条例に荷捌き駐車施設を位置付けるよう地方公共団体に促している。27年3月末現在で、89都市において、一定規模以上の商業施設等への荷捌き駐車施設の設置を義務付ける条例が制定されている。
 このほか、交通流対策として、渋滞ボトルネック箇所への集中的対策、交差点の立体化、開かずの踏切等の解消を図るとともに、「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づき共同輸配送の促進等のソフト施策を併せて推進している。
 さらに、過疎地域等においては、日常の買い物等が困難な者が増加する一方、物流の効率が低下していることから、26年度末に取りまとめた「地域を支える持続可能な物流ネットワークのあり方に関する検討会」報告書を踏まえ、モデル事業を全国5地域において実施し、オペレーション上の課題や対応策等について検討を行い、実践的なノウハウの蓄積・普及を図った。
 27年6月から、宅配事業者、通販事業者等の関係者からなる「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」を開催し、回避可能な再配達の削減に向けた現状把握、要因分析を行うとともに、同年9月に諸課題及び対応の方向性に関する報告書を取りまとめた。
 ドローン等の小型無人機については、近年、急速な技術開発とビジネス展開が進んでおり、物流分野においても、過疎地や都市部の貨物輸送や災害発生時等の非常時において活用される可能性がある。このため、27年12月の「航空法の一部を改正する法律」の施行による基本的な飛行ルールの整備等に基づく安全な飛行の確保を前提として、小型無人機の実用化に向けた調査や課題の整理等を行い、小型無人機の物流への早期活用が実現されるよう取り組むこととしている。

(3)高度化・総合化・効率化した物流サービス実現に向けた更なる取組み
 高度化・多様化した物流ニーズに応える3PL事業注2をより一層促進するため、人材育成研修への参画や中小事業者のEC市場参入促進のためのガイドラインの策定等を通じ、物流事業者が3PL事業に進出しやすい環境の整備を行うとともに、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」に基づき、総合効率化計画注3の認定制度を通じた物流の総合化及び効率化を図っている。平成28年3月末時点で同法に基づく総合効率化計画の認定は289件である。
 また、物流事業者と荷主が一体となり物流業務の効率化を推進できるよう、平成27年3月に「物流事業者におけるKPI注4導入の手引き」を取りまとめた。

(4)物流分野における労働力不足対策
 少子高齢化や人口減少を背景として、物流分野においても、特にトラック業界、内航海運業界を中心として労働力不足が顕在化しつつある。このような状況に対応し、物流に必要な人材の確保や物流の効率化・省力化のため、「物流分野における労働力不足対策アクションプラン」(平成27年3月、国土交通省)に基づき、物流業の社会的意義等の効果的なPRに努めるとともに、モーダルシフトや共同輸配送のさらなる促進、再配達の抑制等による物流の効率化・省力化に取り組んでいる。
 また、27年4月に交通政策審議会交通体系分科会に物流部会が設置され、社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会との合同会議において同年12月に取りまとめられた答申を踏まえ、物流事業の生産性向上に取り組むとともに、女性を含め年齢に関わりなく誰もが就業し活躍できる環境を整え、長時間労働の抑制や賃金の上昇を含め、やり甲斐と誇りを持って働くことのできる「働きたい職場」となるよう、就業環境の整備を推進している。


注1 トラックターミナル、倉庫等の物流関連施設が集約的に立地した大規模物流拠点として、高速道路インターチェンジ周辺部等の適地に建設された市街地
注2 サード・パーティー・ロジスティクス:荷主から物流を一貫して請け負うサービス
注3 高速道路のインターチェンジ、港湾等の社会資本の近傍に立地する物流施設を中核として、輸送網の集約・輸配送の共同化等を図りつつ、情報システムや防災設備等の機器を導入し、物流の総合化・効率化を行う計画
注4 KPI:「重要業績評価指標」という意味の英語「Key Performance Indicator(s)」の略語であり、企業目標等の実現を目的として、業務プロセス等のモニタリングに用いる指標のこと


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