■8 不動産業の動向と施策
(1)不動産業の動向
不動産業は、全産業の売上高の2.6%、法人数の11.1%(平成26年度)を占める重要な産業の一つである。
平成28年地価公示(28年1月1日時点)の結果によると、全国平均では、住宅地は下落したものの下落率は縮小し、商業地は横ばいから上昇に転換した。三大都市圏平均では、住宅地、商業地とも上昇を継続した。一方、地方圏では住宅地、商業地ともに下落が続いているものの、下落率は縮小している。新規住宅着工戸数は、24年度は89万戸を超え、25年度には98万戸を超えたものの、26年度は消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減もあって88万戸となった。
既存住宅の流通市場については、指定流通機構(レインズ)注1の27年度の成約件数が17.3万件(前年度比9.5%増)となった。
(2)不動産業の現状
宅地建物取引に係る消費者利益の保護と流通の円滑化を図るため、「宅地建物取引業法」の的確な運用に努めている。宅地建物取引業者数は、平成26年度末において122,685業者となっている。
国土交通省及び都道府県は、関係機関と連携しながら苦情・紛争の未然防止に努めるとともに、同法に違反した業者には、厳正な監督処分を行っており、26年度の監督処分件数は249件(免許取消141件、業務停止74件、指示34件)となっている。
マンションの販売の際の悪質な勧誘については、宅地建物取引に係る勧誘をする際の禁止行為などについて、引き続き、国土交通省ウェブサイト等で消費者に注意喚起を図るとともに、関係機関とも連携して必要な指導監督に努めている。
また、マンションストックの増大に伴い、その適正な管理を図るため、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」に基づき、マンション管理業者の登録制度や業務規制を実施している。マンション管理業者数は、26年度末において2,214業者となっている。
マンション管理業者に対しては法令遵守を促進し、不正行為の未然防止を図る観点から、立入検査を実施している。
さらに、賃貸住宅管理業務に関して一定のルールを設ける、「賃貸住宅管理業者登録制度」を23年12月から施行し、優良な賃貸住宅管理業の育成と発展に努めている。登録業者数は、26年度末において3,538業者となっている。
(3)市場の活性化のための環境整備
1)不動産市場の現状
我が国における不動産の資産額は、平成26年末現在で約2,400兆円となっている注2。
27年度にJリート(不動産投資法人)、不動産特定共同事業者、特定目的会社等により証券化の対象として取得された、不動産又は信託受益権の資産額は、約5.4兆円となっている。
不動産投資市場の中心的存在であるJリートについては、27年度の1年間で新たに5件の新規上場が行われた。28年3月末現在、53銘柄が東京証券取引所に上場されており、対象不動産の総額約14兆円、不動産投資証券の時価総額約12兆円となっている。
Jリート市場全体の値動きを示す東証リート指数は、不動産市況が改善していることや、訪日外国人客数の増加によりインバウンド消費が拡大していることや日銀によるマイナス金利の導入など、市場を後押しする材料もあったが、相次ぐ公募増資による需給軟化の懸念や中国株式市場の大幅下落の影響も受け、上値が重い展開となり年度では1.7%の上昇となった。
また、Jリートにおける1年間の資産取得額を見ると、27年は約1.6兆円となった。
2)不動産に係る情報の環境整備
国土交通省では、不動産市場の透明化、取引の円滑化・活性化等を図るため、全国の不動産の取引価格等の調査を行っている。調査によって得られた情報は、個別の物件が特定できないよう配慮した上で、取引された不動産の所在、面積、価格等をインターネット(土地総合情報システム注3)を通じて公表している(平成28年3月現在の提供件数は、2,650,557件、Webアクセス総数は、約6億2千万件)。また、28年4月には、不動産取引価格情報の複数年一括ダウンロードを可能にするとともに、API注4を通じた情報提供を開始し、ユーザーの利便性の向上を図っている。
サブプライム危機等の教訓から、不動産バブルに対するEarly Warning Signal(早期警戒指標)を構築するため、国土交通省では、国際機関が作成した指針に基づく不動産価格指数(住宅)の公表を行い、不動産価格指数(商業用不動産)についても、28年3月に試験運用を開始した。