第6章 競争力のある経済社会の構築 第1節 交通ネットワークの整備 ■1 幹線道路ネットワークの整備 (1)幹線道路ネットワークの整備  幹線道路の整備は、昭和29年に策定された第1次道路整備五箇年計画以来、現在に至るまで着実に進められてきた。例えば、高速道路等の幹線道路ネットワークの整備は、高速道路のインターチェンジ周辺での工場の立地を促すなど、地域経済の活性化に大きく寄与するとともに、地方部における広域的な医療サービスの享受、災害等で幹線道路が途絶した場合の広域的な迂回ルートの確保等が可能となるなど、国民生活の質や安全の向上にも大きく貢献してきた。  例えば、首都圏では3つの環状道路の道路を進めており、その3つの環状道路の一番外側である圏央道においては、平成27年度に埼玉県内の区間が全通した。東名高速から東北道まで圏央道でつながることで、都心の渋滞を避けて目的地へ行けるようになり、観光交流の推進や沿線に立地する企業の生産性向上に寄与している。  一方で、都市間移動の速達性を表す都市間連絡速度を見ると、幹線道路ネットワークが未整備の地域では遅い傾向にあり、諸外国と比較すると、我が国の都市間の速達性は全体的に低い水準にある。また、欧米において高速道路は平均4車線以上であるのに対し、日本は片側1車線が3割以上を占めている。  高速道路は一般道路と比べて、死傷事故の起こりやすさは約10分の1、二酸化炭素の排出量は約3分の2、車線当たりの走行台数は約7倍と、「安全でクリーン」であるとともに、災害時には「命の道」として機能する。高速道路ネットワークをしっかりつなぐとともに、賢く使う取組みを推進する。 図表II-6-1-1 都市間連絡速度 図表II-6-1-2 高速道路の車線数別延長の構成比 (2)道路を賢く使う取組みの推進  円滑、安全、快適で、地域の活力向上にも資する道路交通サービスを実現するため、必要なネットワークの整備と合わせ、運用改善や小規模な改良等、今ある道路の更なる機能の向上に向けた取組みを進めている。特に平成27年8月より本格的な導入が開始されたETC2.0がその取組みを支えている。 1)賢く使う取組みを支えるETC2.0  ETC2.0とは、全国の高速道路上に設置された約1,600ヶ所の通信スポットと走行車両が双方向で情報通信を行うことにより、これまでのETCと比べて、 大量の情報の送受信が可能となる ICの出入り情報だけでなく、経路情報の把握が可能となる  など、格段と進化した機能を有し、ITS推進に大きく寄与するシステムである。 2)賢い料金  国土幹線道路部会の中間答申を踏まえ、首都圏の料金体系について、料金水準の整理・統一及び起終点を基本とした新たな料金を平成28年4月から導入するとともに、近畿圏の料金体系について、国土幹線道路部会で検討を実施している。  全国の高速道路にはガソリンスタンドが100km以上ない区間が83箇所あり、これらの区間などにおいては一定水準のサービスを確保することが求められている。こういった課題に対応するため、ETC2.0が有する高速道路利用時以外も含めた経路情報の把握機能を活用し、27年4月より、中国自動車道六日市IC及び吉和ICにおいて、指定ガソリンスタンドで給油のため一時退出した場合には、目的地まで連続して走行した場合と同額とする社会実験を実施している。 図表II-6-1-3 首都圏の新たな高速道路料金の概要 3)賢い料金所  ETCが基本のストレスのない「賢い料金所」の導入に向け、圏央道の入口料金所(桶川北本IC、狭山日高IC)においてETCバーの開放運用実験を実施するとともに、首都高速入口におけるETCレーンを主流化する取組みを、三軒茶屋入口等にて先行的に実施している。 図表II-6-1-4 ETC2.0が基本のストレスのない「賢い料金所」 4)賢い投資  今あるネットワークの効果を、最小コストで最大限発揮させる取組みとして、上り坂やトンネルなどの構造上の要因で、速度の低下や交通の集中が発生する箇所を、ETC2.0等により収集したきめ細かい旅行速度データや加減速データ等のビッグデータにより特定し、効果的に対策する取組みを実施している。中央自動車道上り線の調布付近では、速度低下の要因となっている調布ICの合流部や深大寺BS付近のサグ部・上り勾配区間等において、平成27年12月より既存の道路幅員内で付加車線を設置し、3車線とする運用を開始している。また、東名高速道路の海老名ジャンクションにおいては、1車線のため混雑しているランプ合流部について、同年10月より既存の道路幅員の中で、2車線とする運用を開始している。 5)賢い機能強化  全国の高速道路の約3割は暫定2車線区間となっており、対面交通の安全性や走行性、大規模災害時の対応などの課題がある。そこで、運転者の安心や快適性、走行性を高める観点から、高速道路の暫定2車線区間を4車線化する際、第三者委員会での議論など、透明性の確保を前提に国土開発幹線自動車道建設会議の議を経ずに、機動的に対応することが可能となる「高速自動車国道法施行令の一部を改正する政令案」が平成27年11月13日に閣議決定された。 6)その他の取組み  地域との連携促進のため、高速道路と施設との直結等によるアクセス機能の強化を進めている。スマートIC等を柔軟に追加設置することにより、高速道路から物流拠点や観光拠点等へのアクセス向上や、「コンパクト+ネットワーク」の考え方による機能の集約化・高度化、既存のIC周辺の渋滞緩和を図る。特に、高速道路の近傍に位置する大規模な物流拠点や工業団地、商業施設等については、高速道路の利用促進や利便性の向上による地域活性化の観点から、適切な負担の下、スマートIC等を活用した高速道路と施設の直結を含めた新たなルールを整理している。スマートICについては、国として必要性が確認できる箇所等について、今年度より新たに、国による「準備段階調査」を制度化し、計画的かつ効率的なスマートICの準備・検討を実施している。 図表II-6-1-5 スマートIC整備効果の例