第3節 イノベーションの歴史

コラム イノベーションと安全性の確保

 自動車が発明され、動力の性能や自動車の生産効率が向上し、関連する様々なインフラ等が整備され、多くの人々が自動車を保有して自由に利用できるようになったことは、陸上交通における近代の大きなイノベーションの一つであると言えます。日本においても、自動車の利用は年々増加し、2016年では自動車の保有台数は8,000万台を超えています。
 一方で、自動車の利用の増加に伴い交通事故死者数も増加しており、1959年には1万人を超え「交通戦争」と呼ばれた時代もありましたが、近年では、自動車の安全性能の向上、安全に係るインフラ側の工夫、交通安全教育等のソフト対策の充実等、関係者の不断の努力の結果、2016年には4,000人を下回るまで減少しています。
 別の事例として、近年ではインターネットを活用した様々な商品やサービスが展開されており、人々はその利便性を享受していますが、このインターネットについても、セキュリティの問題等絶対的な安全性が確保されている状況ではなく、日々高まる脅威とセキュリティ対策の向上とが日進月歩している状況です。
 このように過去の歴史を振り返ると、イノベーションが社会に実装されていく過程において、絶対的な安全性を確保することが困難なケースも多く、社会がその利便性と危険性を比較衡量して、選択的にイノベーションを受容している現状があります。
 今後も世界各地で様々なイノベーションが創出されていくことが予想されますが、そのメリットを最大限享受し、デメリットを極力低減させ、社会をより豊かに発展させていくため、関係者の不断の努力が求められていると言えます。


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