第2節 社会資本の老朽化対策等

第2節 社会資本の老朽化対策等

(1)国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)
 我が国では、昭和39年の東京オリンピック以降に整備された首都高速1号線等、高度成長期以降に整備したインフラが今後一斉に老朽化し、今後20年間で、建設後50年以上経過する施設の割合が加速度的に高くなる見込みである。例えば、道路橋は、その割合が平成25年3月の約18%から、10年後には約43%、20年後には約67%と急増する(図表II-2-2-1)。このように一斉に老朽化するインフラを戦略的に維持管理・更新することが求められる。
 
図表II-2-2-1 社会資本の老朽化の現状
図表II-2-2-1 社会資本の老朽化の現状

 このため、25年10月には、「インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議」が設置され、同年11月、政府、地方公共団体等における、あらゆるインフラを対象にした今後の取組みの全体像を示すものとして、「インフラ長寿命化基本計画」が決定された。
 これを受けて、国土交通省では、全府省庁に先駆けて、26年5月、「国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)」を決定し、基本計画に基づく具体的な取組みを確定・見える化し、メンテナンスの指針として、メンテナンスサイクルの構築に向けた道筋を提示した(図表II-2-2-2)。
 
図表II-2-2-2 国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)の概要と行動計画を踏まえた取組み
図表II-2-2-2 国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)の概要と行動計画を踏まえた取組み

 具体的には、1)定期的な点検を行い、必要な修繕・更新を実施するとともに、その情報をカルテとしてデータベース化し、メンテナンスサイクルを構築する、2)メンテナンス技術によるコスト縮減と予防保全の考え方に基づく長寿命化を戦略的に進めることで、今後のメンテナンスに係る中長期的なトータルコストを縮減・平準化する、3)インフラの大部分を管理する地方公共団体等の取組みを進めるため、防災・安全交付金等による財政支援や研修等の人的支援を実施する、が挙げられる。
 また、これらの取組みを推進するため、27年9月に閣議決定した第4次社会資本整備重点計画では、「社会資本の戦略的な維持管理・更新を行う」ことを1つ目の重点目標として掲げ、個別施設ごとの長寿命化計画(個別施設計画)の策定率(32年度に100%)をはじめとする指標を設定するなど、インフラ老朽化対策に重点的に取り組むこととしている。
 さらに、行動計画に基づくインフラ老朽化対策の進捗状況を見える化するため、行動計画のフォローアップを毎年行っている。国土交通省は、必要なインフラが持続可能なものとして維持されるよう、引き続き老朽化対策について、重点的・計画的に取り組んでいく。

(2)メンテナンス産業の育成・拡大
 社会資本整備審議会・交通政策審議会の下に設置された社会資本メンテナンス戦略小委員会において、平成25年12月の「今後の社会資本の維持管理・更新のあり方について」の答申を踏まえ、26年度には、施策の具体化に向け引き続き検討すべき事項について調査・審議がなされ、1.「点検・診断に関する資格制度の確立」、2.「維持管理を円滑に行うための体制、地方公共団体等の支援方策」、3.「維持管理・更新に係る情報の共有化・見える化」について、今後の方向性に関する提言が取りまとめられた。
 このうち、1.「点検・診断に関する資格制度の確立」については、業務内容に応じた必要な知識・技術等を定め、民間資格の登録制度を創設するとともに、登録された点検・診断等の資格を27年度発注業務から活用している。
 2.「維持管理を円滑に行うための体制、地方公共団体等の支援方策」については、民間の技術・ノウハウやスケールメリットを活かして、効率的な維持管理を図るため、複数の分野や施設の維持管理業務を包括的に民間に委託する手法について、地方公共団体と協力して具体的な検討を進めている。また、社会資本の維持管理において課題をかかえる市町村へ民間技術者を派遣する技術者派遣を試行的に行い、有効な業務の抽出、派遣技術者に求められる技術水準の確認、手続きの定型化の検討を行っている。
 3.「維持管理・更新に係る情報の共有化・見える化」については、各施設の点検の実施状況等、社会資本の維持管理情報のうち特に重要な情報の見える化を行っていく。
 また、インフラメンテナンスサイクルのあらゆる段階において、多様な産業の技術や民間のノウハウを活用、メンテナンス産業の生産性を向上させ、メンテナンス産業の育成・活性化を図るため、平成28年11月に産学官民が一丸となって知恵や技術を総動員してメンテナンスに取り組むプラットフォームとして「インフラメンテナンス国民会議」を設立するとともに、インフラメンテナンスに係る優れた取組や技術開発を表彰する「インフラメンテナンス大賞」を創設した。
 今後は、以上の取組等を充実させ、メンテナンス産業の育成・活性化によって、着実かつ効率的なインフラメンテナンスの実現や地域活性化を図っていく。
 
図表II-2-2-3 各分野における点検実施状況等の公表状況
図表II-2-2-3 各分野における点検実施状況等の公表状況

(3)モニタリング技術の開発・導入
 社会インフラの状態の効率的な把握を可能とするモニタリング技術の開発・導入の推進に向け、平成25年10月に開催した「社会インフラのモニタリング技術活用推進検討委員会」において、現場ニーズとシーズのマッチングや、有効性の評価・分析を行うため、モニタリング技術の現場実証に係る検討を行った。26年9月より公募を開始し、現場実証等を進めている。

(4)ロボットの開発・導入
 今後増大するインフラ点検を効果的・効率的に行い、人が近づくことが困難な災害現場の調査や応急復旧を迅速かつ的確に実施する実用性の高いロボット開発・導入を推進している。


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