第1節 地球温暖化対策の推進

コラム 全国初!民間事業者による下水管からの熱供給で、低炭素まちづくりを推進

 都市を流れる下水は、夏は気温より冷たく冬は気温より温かいという特性を持ち、この大気との温度差を利用することで、省エネ効果、温室効果ガス排出削減効果がある。普段は地下を流れているため人々の目に触れることはないが、年間で排出される全国の下水の量は145億トンにも上り、商工業地域等の熱需要がありそうな地域に絞ったとしても、約80万世帯分の年間冷暖房需要に相当する熱を利用できるポテンシャルを有している。
 平成28年末時点で、下水熱の利用事例は全国16か所と少なく、またその多くは下水処理場等から採熱する事例に限られており、上述のポテンシャルと比較してその活用は十分とは言えない。下水道の管渠は、地下に埋設されており、これまで下水道管理者以外が物件を設置することは困難だった。しかし、近年の下水からの採熱技術の開発や、下水熱利用協議会等における活発な議論等を受け、未利用の下水熱エネルギーをより一層活用する必要性が認識されることとなった。
 
下水熱の利用事例

 こうした背景を受け、27年5月の下水道法改正においては、民間事業者が下水道の暗渠部分に下水熱利用のための熱交換器を設置することを可能とする規制緩和が行われた。
 本規制緩和を受けた民間事業者による熱交換器の設置の第1号は、28年1月に長野県小諸市において実施された。
 小諸市では、「コンパクトシティ」をコンセプトとして、公共施設や病院などを市中心部に集約するなど効率的で環境に負荷の少ない街づくりを進めてきた。下水熱の利用も、こうした都市機能の集約化、建築物の低炭素化・省エネ化の取組みの一環として、旧市庁舎跡地内への小諸更生総合病院を移転・新築する事業において実施された。
 
コンパクトシティ

 本事業は、小諸市とエネルギーサービス事業者、及び下水熱利用技術を有するメーカーの3者による共同事業として行われ、下水熱の利用についてはエネルギーサービス事業者からの提案で行われることとなった。下水熱の利用は、敷地に隣接する下水道管路に、管更生にも使用されるライナー材により採熱管を固定して、採熱を行う。これをヒートポンプ給湯機により熱回収を行い、病院の給湯へ活用することで、都市ガスを使った給湯ボイラーの燃料使用量を削減し、CO2排出量や経費の節減が図られる。
 街づくりと一体となった本取組みでは、地域の活性化を図ると同時に、都市の低炭素化や未利用資源の活用が行われており、こうした行政と民間が連携した先進的な事例を先駆けとして、今後ますます下水熱の取組みが拡大することが期待される。


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