第2節 国土のすがたの変化

第2節 国土のすがたの変化

■1 国土のすがたの変化

(1)国土の整備とその効果
 戦後、我が国は社会資本整備を急速に進めることにより、国土のすがたを変化させてきた。1953年度時点で約30兆円であった社会資本ストック(純資本ストック)は、近年、横ばい傾向にあるものの、2014年度時点で約638兆円と大きく増加している(図表1-2-1)。さらに、このように社会資本ストックが増加していく過程において、一人当たり県民所得の格差は総じて縮小している。また、社会資本の整備による効果の具体例の一つとして、東京駅から鉄道で日帰りが可能な範囲は、1947年当時と比べて飛躍的に拡大していることなどが見て取れる(図表1-2-2)。
 
図表1-2-1 社会資本ストック及び一人あたり県民所得のジニ係数の経年変化
図表1-2-1 社会資本ストック及び一人あたり県民所得のジニ係数の経年変化
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図表1-2-2 東京駅から鉄道で日帰りが可能な範囲
図表1-2-2 東京駅から鉄道で日帰りが可能な範囲

 以上のように、我々は国土のすがたを変化させることにより、人流・物流の活性化や住環境の向上等、日本経済の発展に寄与し、一人ひとりの生活を豊かにしてきたと言える。

(2)人口分布の変化
 国土のすがたが変化していく過程で、国土に暮らす人々の間には一定の動きが生まれ、戦後ほぼ一貫して、三大都市圏を中心とした都市部へ人口が集中した。その傾向は現在もなお続いており、総務省によると、2017年における東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の転入超過数は約12万人となっている。
 こうした傾向を踏まえて、2050年における人口分布を推計したものが図表1-2-5である。その結果をみると、2010年を基準に、2050年において人口が増加するのは全居住地域の2%のみであり、6割以上の地域において人口が半分以下になると推計されている。
 
図表1-2-5 2010年から2050年にかけての人口増減状況
図表1-2-5 2010年から2050年にかけての人口増減状況

(3)国土全体に関わる近年の問題点
(空き家・空き地問題)
 全国的な人口減少が進行する中、国土の利用に関する問題として、空き家・空き地問題が近年顕在化している。
 空き家について、総務省によると、1983年からの20年間でその数が倍増しており、2013年における空き家数は820万戸である(図表1-2-6)。さらに、民間推計によると、2033年時点において2,166万戸にまで増加すると見込まれている。
 
図表1-2-6 全国の空き家数及び空き家率
図表1-2-6 全国の空き家数及び空き家率
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 次に、空き地について、2013年における空き地面積は1,554km2であり、2008年時点(1,217km2)と比較すると28%増加している(図表1-2-7)。また、市区町村へのアンケート結果から、人口減少率が高い市区町村ほど、空き地が増加していると回答した割合が高いことがわかる(図表1-2-8)。
 
図表1-2-7 全国の空き地面積及び空き地率
図表1-2-7 全国の空き地面積及び空き地率
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図表1-2-8 人口増減別空き地の過去10年の変化
図表1-2-8 人口増減別空き地の過去10年の変化
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 こうした空き家・空き地の増加は、国土の利用効率の低下につながることとなり、いわゆる「所有者不明土地」も増加している。このことにより、例えば、都市において、密集市街地における既存私道の公道化にあたり協議が進まないことや、地方において、森林伐採事業において伐採が行えないといった問題が生じているなどと言われている。

(社会資本の老朽化)
 我が国の社会資本(インフラ)ストックは高度成長期以降に集中的に整備されたものが多い。今後、建設から50年以上が経過するインフラは加速度的に増えていくと見込まれており、インフラによって人々にもたらされる恩恵を次世代へ確実に継承していくために、適切な維持管理・更新を計画的に進めていく必要がある(図表1-2-9)。
 
図表1-2-9 建設後50年以上経過する社会資本の割合
図表1-2-9 建設後50年以上経過する社会資本の割合

 このような我が国の国土を形成するインフラの急速な老朽化は大きな問題であり、社会全体として取り組んでいくことが求められている。


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