第2節 国土のすがたの変化

コラム 島根県邑南町(おおなんちょう)の取組み

 島根県邑南町は、島根県の中央部に位置する人口約1.1万人、高齢化率43.2%(2017年4月1日現在)の中山間地域であり、2004年10月に当時の羽須美村、瑞穂町、石見町の3町村の合併によってできた町です。邑南町は、他の中山間地域と同様に、人口減少・少子高齢化に長年悩まされてきましたが、独自の方針を打ち立ててその課題に向き合い、克服してきた自治体として、近年、注目を集めています。
 まず、2011年に定めた「攻めと守りの定住プロジェクト」が大きな効果を発揮しました。まず、『攻め』として、A級グルメ構想を打ち立てて食と農を切り口にした町づくりを推進するとともに、「A級グルメのまち」の商標登録を行うなど、邑南町の認知度やイメージの向上に向けた取組みを行いました。また、『守り』として、日本一の子育て村を目指すこととし、既に移住している人々への徹底したケア等の取組みを行いました。特に、子育てをアピールする自治体は当時としては珍しく、「中学校卒業までの医療費無料」「保育料第二子以降完全無料」などの施策が効果を発揮しました。その結果、2013年には、町村合併後初めて社会増(転入者数>転出者数)を記録し、以降、2015年まで連続して社会増が続いています。
 邑南町では現在、上記プロジェクトの総括を踏まえて新たな構想を掲げ、様々な施策に取り組んでいます。その構想は、「『地域で子育て』を実践し、日本一の子育て村を住民が実感できる町に」というもので、子どもの誕生を町内全体でお祝いする、「子育て支援ポイント付与制度」を創設して、地域内での子育てサービスの利用を促す等の施策を行っています。また、移住者に対しても、「定住支援コーディネーター」を設置するなど継続したケアを行っています。
 さらに、町内を12の地区に分け、町民一人一人が参画する「地区別戦略」を策定しました。「地区別戦略」では、地域の総意の上、人口減少に歯止めをかけるため、地域住民が主体となって実施できる事業が計画されています。一例として、日貫地区では、空き地を活用した宿泊施設やカフェ、地元の素材を生かした料理や陶芸体験の場等を提供する集客プロジェクトが実施される予定であり、2018年度より本格的な事業としてスタートします。
 以上のような邑南町の取組みは、人口減少・少子高齢化が今後加速していく中山間地域における先進的な事例として、更に注目されるものと考えられます。
 
図表1-2-20 日貫地区における集客プロジェクトの打合せ風景
図表1-2-20 日貫地区における集客プロジェクトの打合せ風景


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