第3節 我が国における新たな兆し

コラム 通所介護型クッキングスタジオ

 東京都目黒区自由が丘に「料理」をテーマにした「全員参加型」高齢者デイサービス「なないろクッキングスタジオ」があります。介護業界初の「料理」をコンセプトにした、クッキングデイサービスで、利用者の「できた!やれた!もっとやりたい!」をカタチにする、まるでお料理教室のような今までにない新しいタイプのものです。
 事業主体の(株)ユニマット リタイアメント・コミュニティは、高齢者や認知症の方が料理を楽しめて、さらに生きがいにして取り組めるという認識や理解を広める活動を推進したいという思いから、このサービスを作りました。料理が苦手な方や初体験の方でも、簡単な作業から徐々にステップアップできるので、気軽に参加できます。また、料理はリハビリテーションにおける大変効果の高い作業療法の1つとも考えられています。食材を切ったり、皮をむいたり、バランスを考えて盛り付けたり、数を数えたり、時間を考え配膳するなど五感を刺激する活動のすべてが認知機能の改善につながる“料理療法”となります。
 建物の外観は、赤を基調としたオシャレなテントが目を引きます。内部は、白を基調としたナチュラルテイストで、中央には楕円形のクックカウンターが設置されています。カラフルなペンダントライトや各所に飾られているインテリアがとても可愛らしく、利用者の心を明るくしてくれます。スタッフが料理の準備を進めるなか、来所した利用者が順番にバイタルチェックを受けて、プログラムが始まります。料理が始まる前に、座学がスタートし、管理栄養士のスタッフがレシピやそれぞれの食材に含まれる栄養成分について説明します。利用者それぞれができることをスタッフが割り当て、野菜を切る、卵を割る、皮をむくなどの作業を車椅子のまま、椅子に座って、立ったままなど体調に合わせて行います。シェフやスタッフとの会話を楽しみながら、和気あいあいとした雰囲気のなか、1時間ほどで料理は完成します。テーブルごとに楽しい食事時間を過ごして、あっという間に3時間が過ぎてしまいます。
 現在、このデイサービスは、男女比2対8で女性が多く利用しており、最高齢は96歳の女性です。利用者本人の分だけでなく、家族のために料理を作って持ち帰る方も多く、家族にも喜ばれています。半年に1度の成果発表会では、家族やケアマネジャーを招待して、パーティーメニューを作る姿を見てもらい、一緒に食事をします。自宅での姿とは異なり、はつらつと料理をする姿に家族は感動を覚えます。また、ここに通う方たちは料理をすることで自分のやりがいや生きがいを再確認して、自分のため、人のために頑張ろうという気持ちが芽生えています。
 高齢化社会が進む日本において、介護が必要な高齢者の数も増えています。ずっと付き添っていなければならない世帯もあり、家族の仕事や用事のために常に介護することが難しい家庭において、役立つのが「デイサービス」です。社会の多様化が進む中で、通所者やその家族の生活が充実し、活き活きと過ごせるよう、様々な種類のデイサービスが生まれていることに、私たちは注目すべきと考えます。
 
図表1-3-7 なないろクッキングスタジオ
図表1-3-7 なないろクッキングスタジオ


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