第1節 働き方に対する意識と求められるすがた

■1 働き方に対する国民の意識

(女性の高い勤労意欲)
 現在の勤務状況をみると、働いている人は、男性は72.0%、女性は46.6%であり、また、女性の正規雇用者は非正規雇用者より少ないことから、依然として男女間で労働状況が異なっている(図表2-1-1)。
 
図表2-1-1 現在の勤務状況(性別)
図表2-1-1 現在の勤務状況(性別)
Excel形式のファイルはこちら

 また、「働いていないが、今後働きたい」と回答した人の割合は、男性では7.4%であるのに対して、女性は19.1%である。さらに、女性の中では、30代の割合が高く(図表2-1-2)、その中でも、特に三大都市圏で高い割合となっている(図表2-1-3)。このことから、三大都市圏では、働く意欲はあるが、今は働くことができない女性が他の居住地より多く存在していることがわかる。これは、第1章第2節注16で述べたように、夫の仕事時間(勤務時間+通勤時間)が長く、女性の家事・育児負担が大きいこと等が理由であると推察される。
 
図表2-1-2 現在の勤務状況(女性/年代別)
図表2-1-2 現在の勤務状況(女性/年代別)
Excel形式のファイルはこちら

 
図表2-1-3 現在の勤務状況(30代女性/居住地別)
図表2-1-3 現在の勤務状況(30代女性/居住地別)
Excel形式のファイルはこちら

(長く働きたい希望)
 次に、現在働いている人に、どのくらいまで働きたいかを調査したところ、全ての年代で、「定年など関係なく働けるうちはできるだけ働きたい」という回答が多く、この傾向は高年層になるほど顕著に現れている。高年層は、長寿命化を現実のこととして受け止め、社会との接点を維持していくため、定年後も働き続けるすがたを想像しやすいこと等が理由であると推察される(図表2-1-4)。
 
図表2-1-4 就労意欲(年代別)
図表2-1-4 就労意欲(年代別)
Excel形式のファイルはこちら

(世代によって異なる、働く上で重視すること)
 働く上で最も重視することは、ライフステージにより異なる傾向がある。20〜40代は、「給与・賃金」を、50〜70代は「仕事のやりがい」を最も重視している(図表2-1-5)。
 
図表2-1-5 働く上で重視すること(年代別)
図表2-1-5 働く上で重視すること(年代別)
Excel形式のファイルはこちら

 20代では、30.2%が「給与・賃金」、続いて20.1%が「仕事のやりがい」となっており、待遇面を重視しながらも、仕事にやりがいを持ちたい傾向にある。
 30代では、「ワークライフバランス」を重視するとの回答が他の年代よりも多い。子育てや介護に直面している人が多い年代であり、働く上でのやりがいよりも、仕事と家庭生活との両立を重視していることが推察される。
 一方、70代では、「労働を通じた社会貢献」が他の年代よりも多い。この傾向は三大都市圏や政令市・県庁所在地・中核市で大きく、人口規模の大きい地域ほど、労働を通じて収入を得るだけではなく、社会貢献をしたいと考える意識が高いことが推察される(図表2-1-6)。
 
図表2-1-6 労働を通じた社会貢献の重視(年代別) 
図表2-1-6 労働を通じた社会貢献の重視(年代別) 
Excel形式のファイルはこちら

(働き方を変えるために求められること)
 勤務先における、働き方を変えるための制度・規則の存在やその運用状況について調査したところ、年代によって、回答に大きく差があった。20代では、「社内制度・規則が見直され働き方が変わっている」が最も多く、一方、30〜60代では、「社内制度・規則が見直されず働き方が変わっていない」が最も多い(図表2-1-7)。このことから、社会人になって日の浅い年代では、働き方の意識改革や、働き方を変えるための制度の利用が進んできているものと推察される。
 
図表2-1-7 働き方を変えるための社内制度・規則の実施・運用状況(年代別)
図表2-1-7 働き方を変えるための社内制度・規則の実施・運用状況(年代別)
Excel形式のファイルはこちら

 次に、働き方を変えるためにはどのような取組みが必要であると考えているかについて、居住地別に見ていく。
 どの居住地においても最も多いのは、「無駄な残業時間の削減など働く人間の意識の変化」であり、長時間労働の習慣からの意識改革を進めることが求められている(図表2-1-8)。
 
図表2-1-8 働き方を変えるために必要なこと(居住地別)
図表2-1-8 働き方を変えるために必要なこと(居住地別)
Excel形式のファイルはこちら

 この他、具体的な取組みとしては、「フレックスタイム制や短時間勤務制など労働時間の多様化」「在宅勤務(テレワーク)など居住地にとらわれない働き方」が多く、こうした時間や場所の制約の少ない働き方は、他の居住地と比較すると、三大都市圏で多く求められている。これは、三大都市圏の仕事時間(勤務時間+通勤時間)が他地域と比較して長く、時間の質の向上に対する意識が高いこと等が理由と推察される。
 続いて、「働く意欲や能力のある高齢者、女性、障害者等の多様な人材の就業促進」が三大都市圏をはじめ多く、労働力人口の減少が見込まれる中で、働く意欲の高い高齢者や女性等の活用が求められている。また、「育児・介護休暇などの利用によらずキャリアを継続できる人事制度」も居住地を問わず多いため、現在のキャリアを継続して働き続けることができる仕組みづくりが求められる。
 労働者の確保とともに重要となってくるのが、生産性の向上であり、各分野において、AI等の技術革新の進展が注目されている。本調査において、「人工知能(AI)やビッグデータなど技術革新による仕事の効率化」と回答した人を年代別に分析したところ、若年層と高年層で高い。日常的にインターネットの利用が多く、技術革新の中心になると思われる若年層だけでなく、高年層においても、仕事の継続等のため、技術革新を積極的に受け入れる姿勢があるのではないかと推察される(図表2-1-9)。
 
図表2-1-9 人工知能(AI)やビッグデータなど技術革新による仕事の効率化(年代別) 
図表2-1-9 人工知能(AI)やビッグデータなど技術革新による仕事の効率化(年代別) 
Excel形式のファイルはこちら


注16 第1章第2節2.(2)都市のライフスタイルの特徴を参照。


テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む