第2節 楽しみ方に対する国民の意識と求められるすがた

■1 楽しみ方に対する国民の意識

(多様な余暇)
 余暇の過ごし方は、年代によって多種多様となっている。特に20代と60〜70代では、その過ごし方に大きな差があり、行動範囲にも違いがある。
 20代は、「自宅で休養する(ゆっくりする、寝る)」が61.5%と最も多く、「TV・DVD・CDなどを視聴・鑑賞する」、「インターネット・ソーシャルメディアを利用する」など、自宅等室内で余暇を過ごす傾向がある。外出については、「ショッピング・映画鑑賞などに出かける」や「食事やお酒を飲みに出かける」など、気軽に近場で過ごすという回答が多い(図表2-2-1)。
 
図表2-2-1 余暇の過ごし方(全体・20代・60〜70代)
図表2-2-1 余暇の過ごし方(全体・20代・60〜70代)
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 一方、60〜70代は、「国内旅行(宿泊)に出かける」「国内旅行(日帰り)に出かける」「海外旅行に出かける」が、全体と比べて高く、行動範囲が20代よりも広いと言える。自宅で過ごす場合には、「読書・家庭菜園・模型づくりなど趣味活動をする」が多く、自宅でも比較的、動的な活動をしていることがうかがえる。

(充実させたい余暇)
 長時間労働の是正やワークライフバランスの実現等により、働き方が変わった場合、どのような余暇を充実させたいかについて調査したところ、現在よりも行動範囲を広げたいという潜在的な希望や、自己啓発や学び直し等、自分自身の成長のための時間を充実させたいという希望があることがわかった。

■行動範囲の広がり
 現在、20〜50代では、60〜70代と比較して旅行等遠方に出かけて過ごす余暇は少ない(図表2-2-2)。しかし、働き方が変わり、時間が創出された場合に充実させたい余暇については、「旅行に出かけたい」という回答が多く、潜在的に行動範囲を広げたいという希望があることが推察される。
 また旅行の中でも、「国内旅行(宿泊)に出かける」は、各年代で充実させたい余暇として多く挙げられており、魅力ある国内旅行が求められている(図表2-2-2)。
 
図表2-2-2 充実させたい余暇(遠方への外出/年代別)
図表2-2-2 充実させたい余暇(遠方への外出/年代別)
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■自己啓発や学び直し等の充実
 現在の余暇として、「自己啓発・資格取得・学び直しのために勉強する」と回答した人は少なく、20〜40代では、それぞれ9.0%、7.5%、6.6%であるのに対し、今後、充実させたいとの回答は、それぞれ17.0%、15.2%、13.1%と現在の2倍程度の割合に増加する(図表2-2-3)。総数は少ないながらも、同様の傾向が「本業と別の仕事(副業)をする」との回答にも現れている。これらのことから、「人生100年時代」を見据えて、スキルの更新やスキルアップのための学び直しや副業をするといった新しい働き方を志向する人が存在しているのではないかと推察される。
 
図表2-2-3 充実させたい余暇(自己啓発等の学び直し/年代別)
図表2-2-3 充実させたい余暇(自己啓発等の学び直し/年代別)
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(余暇を楽しむために足りないもの)
 余暇を楽しむために足りないものとしては、「お金」や「時間」が多く、余暇時間を増加させるために、働き方を変える取組みを進めることや、お金や時間をかけず気軽に楽しむことができる場所が求められている(図表2-2-4)。
 
図表2-2-4 余暇を楽しむために足りないもの(居住地別)
図表2-2-4 余暇を楽しむために足りないもの(居住地別)
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 「時間」と「お金」以外の足りないものについて、居住地別に見ると、三大都市圏では、「特に足りないと感じるものはない」が12.1%と他の居住地と比べて、やや高い傾向にあり、余暇に対する不足感が比較的小さい。
 また、全地域において、「近場で楽しめる場所(公園、商業施設、文化施設、娯楽施設など)」が足りないと感じる人が多い。これに関し、人口規模が小さい地域ほど、「文化施設・娯楽施設が集積する大都市へのアクセス手段」と回答している人が多いことから、交通手段の利便性が高まれば、「近場で楽しめる場所」の不足感を、大都市の施設を利用すること等により補うことができるのではないかと推察される。
 続いて、居住地を問わず、「共通の価値観を持つ友人・コミュニティ(集まり)」が多く挙げられており、余暇を一緒に過ごす仲間等、つながりに不足感があることがうかがえる。

(人生の楽しみとしての社会貢献活動)
 本節では、自分の時間を自由に使うことだけではなく、地域活動・ボランティア活動等の社会貢献活動に参加することにより、生きがいを感じることも広い意味で「楽しみ」と捉える。
 余暇の時間を使って社会貢献活動に参加することを、人生の楽しみにつながると回答する人は、総じて多い(図表2-2-5)。その中でも20代、70代では、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した割合の合計がそれぞれ59.4%、64.2%と他の年代と比べて多く、社会貢献活動に対する意識の高さがうかがえる。
 
図表2-2-5 社会貢献活動は人生の楽しみにつながるか(年代別)
図表2-2-5 社会貢献活動は人生の楽しみにつながるか(年代別)
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 また、社会貢献活動を、まちづくり等に活用することを促す(広げる)べきであるかについて調査したところ、図表2-2-5と同様に、各年代で肯定的な回答が多く、特に70代では、「積極的に促すべき」「促すべき」をあわせると、73.0%と多い(図表2-2-6)。次に20代の67.1%と続き、社会貢献の意識の高い年代では、社会貢献活動をまちづくり等に活用する意識が高いことがうかがえる。我が国は、厳しい財政状況にあり、これまでのような行政サービスが困難となっていくと考えられることから、こうした国民の意欲を、いかに活かしていくかが重要である。
 
図表2-2-6 社会貢献活動を促すべきか(年代別)
図表2-2-6 社会貢献活動を促すべきか(年代別)
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 このように、社会貢献活動の参加を希望する声がある一方で、実際の活動状況の有無を年代別で見ると、60〜70代ではお祭り、ゴミ拾い等を中心に参加しているが、20〜50代では「特にない」と回答する人が最も多い。(図表2-2-7)。
 
図表2-2-7 実際の社会参加(年代別)
図表2-2-7 実際の社会参加(年代別)
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 さらに、社会貢献活動を充実させるために不足しているものについて調査したところ、全ての年代で、「気軽に参加できるコミュニティ」を挙げる人が多く、つながりの場を必要としていることがわかる(図表2-2-8)。特に60代、70代では、それぞれ28.6%、30.3%と高く、他の年代が勤務先や学校(家族が通う学校を含む)等のコミュニティがある一方、高年層はこのようなコミュニティが不足しており、社会貢献活動に参加するきっかけを求めていることが推察される。
 
図表2-2-8 充実した社会貢献活動のための不足感(年代別)
図表2-2-8 充実した社会貢献活動のための不足感(年代別)
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 また、20〜50代では、他の年代より、資金や時間の不足感があることから、お金や時間をかけず、気軽に参加できるコミュニティや活動を増やすこと等が必要であると考えられる。さらに、この年代は、仕事等日々の生活に追われ、余暇時間が少ないことが推察されるため、ワークライフバランスを実現すべく働き方を変えるための取組み等が求められる。


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