第4節 動き方に対する意識と今後の取組みに求められること

■1 動き方に対する国民の意識

(交通手段等に対する不便・不満)
 日常生活や通勤・通学時における交通手段に対する、不便や不満については、居住地によってその内容が異なる。
 人口規模が大きい地域ほど、「電車、バスなど公共交通の混雑」、「慢性的な道路の渋滞」、「長い移動時間など無駄な待ち時間」、「電車・バスなどの公共交通の遅れ」等、移動時における快適性に不満を抱いている(図表2-4-1)。特に、三大都市圏については、「電車、バスなど公共交通の混雑」との回答が他の地域と比較して、非常に多い。さらに、公共交通の混雑緩和のニーズを地方別に詳細に分析した結果、東京圏注19である南関東地方において、最も高くなっており、公共交通の混雑は、東京圏において、特に深刻な問題であると言える(図表2-4-2)。
 
図表2-4-1 交通手段等の不便・不満(居住地別)
図表2-4-1 交通手段等の不便・不満(居住地別)
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図表2-4-2 公共交通の混雑緩和ニーズ(地方別)
図表2-4-2 公共交通の混雑緩和ニーズ(地方別)
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 一方、人口規模が小さい地域ほど、公共交通の「運行本数の少なさ」、「他都市へのアクセスの不便さ」、「最終運行時刻の早さ」等、公共交通自体が不足し充実していないことへの不満が多い(図表2-4-1)。
 また、三大都市圏以外の地域では、「自動車がなければ生活できない不便な移動環境」が最も多く、特に5万人以上市町村、5万人未満市町村では、それぞれ46.9%、54.7%と約半数の人が回答しており、生活する上で自動車が不可欠となっている環境に不満を持っていることがわかる。

(今後求められる取組み)
 自動車を運転できない高齢者の増加、人口減少に伴う公共交通の採算の悪化、また、技術開発に伴う移動の高度化等が想定される中、充実した暮らしを実現する上で、今後、「動き方」において、どのような取組みが求められるかについて調査した。
 これに対し、どの居住地においても、「病院など生活に不可欠な施設までの公共交通機関の確保」という回答が最も多く、高齢化等により移動手段が確保できず生活に支障が出ることへの不安があるものと推察される(図表2-4-3)。
 
図表2-4-3 交通に関する今後求められる取組み(居住地別)
図表2-4-3 交通に関する今後求められる取組み(居住地別)
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 次に、「駅や歩道の段差解消などバリアフリーを進めること」、「誰でも自動車を安全に利用できる自動運転技術が発展すること」という回答が多い。この中でも、人口規模が大きい地域ほど「駅や歩道の段差解消などバリアフリーを進めること」を、人口規模が小さい地域ほど「誰でも自動車を安全に利用できる自動運転技術が発展すること」を求めており、居住地によって求められる取組みが異なることがわかる。

■駅や歩道等のバリアフリー
 駅や歩道の段差解消等のバリアフリーを進めることへのニーズをさらに分析して見ると、子育て世代と考えられる20〜30代は、総じてバリアフリーを求める声が多いことが分かる(図表2-4-4)。一方、三大都市圏や政令市・県庁所在地・中核市の70代は、20〜30代の若年層より、バリアフリーのニーズが高い。電車やバスなどの公共交通が比較的確保された都市では、公共交通が高年層の主な移動手段となりうるため、その快適性が高まることを望んでいるものと推察される。
 
図表2-4-4 駅や歩道などのバリアフリーのニーズ(居住地別)
図表2-4-4 駅や歩道などのバリアフリーのニーズ(居住地別)
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■自動運転技術の発展
 安全に利用できる自動運転技術の発展へのニーズをさらに分析して見ると、5万人以上市町村や5万人未満市町村では、60〜70代の高年層を中心に自動運転技術の発展を求めている(図表2-4-5)。これは、人口規模の小さい地域では、公共交通の確保に不足感があり、自動車利用への依存が大きく、今後、運転能力の低下が懸念される高年層が、自動運転技術の発展に大きな期待を寄せているものと推察される。
 
図表2-4-5 自動運転技術の発展のニーズ(居住地別)
図表2-4-5 自動運転技術の発展のニーズ(居住地別)
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 また、総じて20代の関心が高く、特に、三大都市圏や政令市・県庁所在地・中核市では、それぞれ39.3%、40.3%と他の地域より高い。これは、若年層について、技術革新に敏感であることや運転免許を取得しない者が増加していること等が一因となっているのではないかと推察される。


注19 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の一都三県を指す。


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