第1節 働き方に関する取組み

■2 働き方の質の向上に関する取組み

(子育て世代のワークライフバランス実現への取組み)
■テレワークの推進
 働く場所にとらわれない環境の整備や通勤時間の短縮は、子育てと仕事の両立や柔軟な働き方を実現し、子育て世代をはじめとしたワークライフバランスの実現につながるとともに、交通渋滞や鉄道の混雑緩和にも貢献すると考えられる。
 このような取組みの例として、情報通信技術(ICT)を利用した「テレワーク」があり、国土交通省も多くの関係府省・団体と連携してテレワークの普及を進めている。その一環として、2017年からは、7月24日注20を「テレワーク・デイ」と位置づけ、約950団体、6.3万人が一斉テレワークを行った。2年目にあたる2018年は、期間を7月23日から7月27日までの5日間に拡大し、「テレワーク・デイズ」として、複数日の一斉テレワークの実施を呼びかけ、さらなる取組みの促進を図っている。
 また、近年のテレワーク拠点整備の一例として、福岡県福岡市の(株)スマートデザインアソシエーション等は、地元の協力の下、福岡市中心部から車で30分の海辺の空きスペースを活用し、「SALT」というシェアオフィスを運営している。ここでは、周辺の居住者のみならず、海辺の立地環境を活かして、数日から数ヶ月のリゾートワークを楽しむ利用者もターゲットとし、同社が、周辺の空き物件をリノベーションした宿泊先の案内や提供などもあわせて行っている。この取組みは、普段の生活や仕事の拠点を離れ、観光やリフレッシュを楽しみながら、よりよい仕事をして帰ってくるという、新たな「働き方」の実現をコンセプトにしており、国土交通省としてもテレワークセンターの先進事例として応援しているところである(図表3-1-5)。
 
図表3-1-5 シェアオフィス「SALT」サテライトオフィス
図表3-1-5 シェアオフィス「SALT」サテライトオフィス

(技術革新等を活用した仕事の効率化への取組み)
■i-Constructionの推進
 人口減少や高齢化が進む中にあっても、建設業が社会資本の整備の担い手や我が国の国土保全上必要不可欠な「地域の守り手」としての役割を果たすため、建設業の賃金水準の向上や休日の拡大等による働き方改革とともに、生産性向上が求められている。そのためには、建設現場の生産性向上を図り、賃金水準の向上や、安定した休暇の取得等による働き方改革が実現されること等により、女性や高齢者等も含めた多様な人材が建設現場で活躍できる魅力ある建設現場を実現していく必要がある。
 国土交通省では、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までの全ての建設生産プロセスでICT等を活用する「i-Construction」を推進し、建設現場の生産性を2025年度までに2割向上させることを目指している(図表3-1-6)。その中で、建設現場における作業員の労働を具体的にサポートするものとして、測量作業を効率化するためのドローンの導入、現場施工を効率化するためのICTを活用した半自動制御可能な建設機械の導入、作業困難箇所への点検・施工等が容易となるロボット技術の導入といった取組みを推進している(図表3-1-7)。
 
図表3-1-6 i-Construction
図表3-1-6 i-Construction

 
図表3-1-7 水中ロボットと溶接ロボット
図表3-1-7 水中ロボットと溶接ロボット

 2017年度は、i-Construction開始から2年目を迎え、トップランナー施策として、「ICT土工」を着実に進めると同時に、舗装工や浚渫工へのICT工種の拡大、3次元モデル設計の推進、コンクリート工の規格の標準化、施工時期の平準化、産学官連携のコンソーシアム等を通じた技術開発や導入促進などに取り組んできている。今後は、これまでの取組みを一層推進していくとともに、維持管理・建築分野等へのICT の導入拡大、大規模構造物等における3次元設計の拡大、公共事業のイノベーション転換を図るための新技術導入促進、中小企業の取組みを加速化させるための支援の充実などに取り組む。

■リカレント教育の支援
 建設産業の生産性の向上を図るためには、建設現場において直接施工を担う建設業従事者一人ひとりの技能を高め、中小・中堅建設企業等の「生産性革命」を実現することが必要である。
 このような中、国土交通省では、生産性向上のため必要である技能の効果的・継続的な学び直し・訓練(建設リカレント教育)等であって、中小・中堅建設企業、地域の教育訓練機関等が連携して行うものに対して、支援を実施している(図表3-1-8)。
 
図表3-1-8 建設リカレント教育
図表3-1-8 建設リカレント教育

■造船現場における生産性向上(海事生産性革命「i-Shipping」の深化)
 造船業の競争力向上を図る上では、女性・高齢者等の活用を含め、あらゆる人材の確保・育成が重要であり、そのためには、現場の生産性向上等を通じ労働環境改善を図る必要がある。
 現在、国土交通省では、海事産業の生産性向上を図り、我が国造船業の新造船建造量世界シェア30%(2025年)獲得を目指す、海事生産性革命「i-Shipping」を推進している。この中で、造船現場の生産性向上に係る取組みとして、民間事業者等が行う、3D設計データと連動した加工自動化、AI等の革新的な技術を用いた効率的な自動溶接機の導入、技能工の労働負荷を低減させるアシストスーツの導入、IT技術を活用した最適な部材管理による造船工程の効率化等の研究開発等へ支援を実施している(図表3-1-9)。
 
図表3-1-9 自動溶接機とアシストスーツ
図表3-1-9 自動溶接機とアシストスーツ

■物流生産性革命および道路の物流イノベーションの取組み
 国土交通省では、生産性を向上させ、将来の労働力不足を克服し、経済成長に貢献していくため、物流の大幅なスマート化を図る物流生産性革命を推進している。改正物流総合効率化法の枠組みを活用した共同輸配送等の促進等による業務効率の改善や、受け取りやすい宅配便、物流システムの国際標準化の推進等の付加価値の向上を推進することで、2020年度までに物流事業の労働生産性を2割程度向上させることを目指している(図表3-1-10)。
 
図表3-1-10 物流生産性革命
図表3-1-10 物流生産性革命

 また、道路の物流イノベーションとして、平常時・災害時を問わない安定的な輸送を確保するため、基幹となる道路ネットワークに対し、機能強化や重点支援を行う「重要物流道路制度」を創設するとともに、ダブル連結トラックによる省人化、物流モーダルコネクトの強化、特大トラック輸送の機動性強化等、トラック輸送の生産性向上に資する取組みを積極的に展開している(図表3-1-11)。
 
図表3-1-11 道路の物流イノベーション
図表3-1-11 道路の物流イノベーション


注20 2020年東京オリンピック競技大会 開会式の開催予定日。


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