第2節 観光先進国の実現に向けた取組み

■1 観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に

(1)魅力ある公的施設・インフラの大胆な公開・開放
 首都圏外郭放水路の見学会の開催回数を拡大するなど、インフラを観光資源として活用・開放し地域振興を図るインフラツーリズムを推進した。

(2)景観の優れた観光資産の保全・活用による観光地の魅力向上
 良好な景観の形成や観光振興、安全で快適な通行空間の確保、道路の防災性の向上等の観点から、道路の新設又は拡幅を行う際の同時整備や低コスト手法の導入に向けた実証実験を実施するなど無電柱化を推進した。
 また、「無電柱化の推進に関する法律」に基づき、無電柱化の推進に関する施策の総合的、計画的、かつ迅速な推進を図るための無電柱化推進計画の策定を進めた。
 また、全都道府県・市区町村を対象にした講習会等の開催等により、主要な観光地の市町村等における景観計画の策定を促進するとともに、国営公園で案内板の多言語化等を実施した。
 河川においては「河川敷地占用許可準則」の緩和措置等を活用した民間事業者によるオープンカフェ・川床の設置など、民間事業者等との連携により、河川空間とまち空間を融合させ、旅行者を魅了する良好な空間の形成を推進した。

(3)古民家等の歴史的資源を活用した観光まちづくりの推進
 地域に眠る資産である古民家等の歴史的資源を宿泊施設等に活用し、地域の活性化に繋げるため、関係省庁と連携しながら、古民家相談窓口を設置し地域からの相談への対応や、専門家の派遣等の支援を行っている。また、クラウドファンディング等による小口投資を活用した古民家等の再生を促進するため、平成29年12月に不動産特定共同事業法を改正し、新たに創設した小規模不動産特定共同事業等の普及・啓発に取り組んでいる。

(4)新たな観光資源の開拓
 観光資源の体験メニューの充実、体験満足度の向上に向けて、平成29年9月から「『楽しい国 日本』の実現に向けた観光資源活性化に関する検討会議」において検討を行い、30年3月に提言を取りまとめた。

(5)広域観光周遊ルートの世界水準への改善
 訪日外国人旅行者の地方誘客に資するテーマ・ストーリーを持った広域観光周遊ルートの形成を促進するため、全国計11ルートにおける具体的なモデルコースを中心に、地域の観光資源を活かした滞在コンテンツの充実、ターゲット市場へのプロモーション等、訪日外国人旅行者の周遊促進の取組みを支援している。さらに、地域の魅力・課題の発見や施策の提案、地域の関係者のスキル向上の支援等を行うため、各地域へ専門家の派遣を行っている。
 また、酒蔵やロケ地等、特定の観光資源で地方誘客を図るため、ネットワーク化した各地域を「テーマ別観光による地方誘客事業」により支援している。
 他にも、酒蔵ツーリズム推進の一環として、日本産酒類の認知度向上や輸出促進等を目的に、輸出酒類販売場の許可を受けた酒類の製造場において、酒類製造者が訪日外国人旅行者へ販売する酒類について、消費税に加えて酒税も免除する「輸出酒類販売場制度」を平成29年度税制改正において創設した。
 さらに、平成29年10月、訪日外国人旅行者の移動の実態(利用交通機関や周遊ルート等)が把握できるFF-Dataについて最新2ヶ年分(27、28年分)を公表した。これにより、周遊ルートの分析や戦略的なプロモーション施策の企画立案・見直しへの活用が期待される。
 さらに、ビッグデータを活用しつつ、既存の道路や駐車場の容量・空間を賢く使い、即効性のある渋滞対策の強化に取り組んだ。具体的には、北海道富良野美瑛地域では幅広路肩を活用した駐車待ち車両と通過交通との分離や臨時駐車場を活用したパーク&バスライドによる渋滞対策を行ったほか、国営ひたち海浜公園(茨城県)のコキア紅葉期間には円滑で確実な駐車により周辺駐車場への利用分散を促す「事前予約」の試行を実施した。

(6)「観光立国ショーケース」の形成推進
 訪日外国人旅行者を地方へ誘客するモデルケースを形成するため、釧路市、金沢市及び長崎市の3都市を選定し、関係省庁と3都市との意見交換会等により各都市の策定した「観光立国ショーケース実施計画」の推進を支援している。

(7)東北の観光復興及び九州北部豪雨をはじめとした自然災害への対応
 東北の観光復興の取組みを一層推進するため、平成28年を「東北観光復興元年」とし、各種施策を推進している
 また、29年7月に発生した九州北部豪雨における対応として、国内旅行客に向けてはブロガーやメディア等を通じ、訪日外国人旅行者に向けては旅行会社招請やSNS等を通じ、それぞれに九州地方における観光地の魅力の発信等を行った。
 30年1月に草津白根山(本白根山)が噴火した際には、観光庁や日本政府観光局(JNTO)のホームページを通じて正確な情報発信を行い、風評被害の防止に努めた。


注 東北の観光復興については、第1章第4節(2)を参照。


テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む