第2節 観光先進国の実現に向けた取組み

■3 すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に

(1)最先端技術を活用した革新的な出入国審査等の実現
 関係省庁と連携の下、入国審査の待ち時間を活用して個人識別情報を事前取得するバイオカートの配備空港を3空港から15空港に拡大したほか、平成29年10月、日本人帰国手続きのための顔認証ゲートを羽田空港に先行導入した。
 さらに、那覇、鹿児島など8空港に新たにボディスキャナーを導入するとともに、高性能な爆発物自動検出機器類について、羽田空港をはじめ一部の主要空港等に新たに導入した。

(2)民間のまちづくり活動等による「観光・まち一体再生」の推進
 拠点駅周辺の案内サイン、バリアフリー交通施設、歩行空間等の整備を支援し、わかりやすく使いやすい歩行空間のネットワークの構築を推進している。
 また、日本の都市の魅力を発信し、インバウンド需要の取り込み、都市開発の海外展開につなげるため、シティ・フューチャー・ギャラリー(仮称)構想の検討を進めた。

(3)訪日外国人旅行者受入環境整備
 公共交通機関、観光案内所等における多言語対応、無料公衆無線LAN環境の整備や公衆トイレの洋式化等に対する支援を行った。
 また、約600の旅館・ホテル等宿泊施設におけるインバウンド対応経費の支援を行った。
 一般物品の免税販売の対象となる購入下限額の引下げ等を含めた、外国人旅行者向け消費税免税制度について引き続き周知徹底を図り、地方も含めた消費税免税店の拡大に取り組んだ。また、外国人旅行者の利便性の向上及び免税店事業者の免税販売手続の効率化を図る観点から、平成30年7月より一定の条件(特殊包装等)の下、一般物品と消耗品の合計金額が5,000円以上となる場合も免税販売の対象とするとともに、32年4月より免税販売手続を電子化することとした。
 また、「道の駅」について、消費税免税店や観光案内所の設置、無料公衆無線LAN(「道の駅」SPOT)等のインバウンド対応を促進し、地域の情報発信の拠点とする取組みを推進した。
 
図表II-3-2-1 消費税免税店の推移
図表II-3-2-1 消費税免税店の推移
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(4)急患等にも十分対応できる外国人患者受入体制の充実
 外国人旅行者を受入可能な医療機関について、厚生労働省との連携のもと、都道府県の協力を得て、平成29年度に約1,260の医療機関をリスト化し、情報発信を行った。また、引き続き外国人旅行者が医療費の不安なく治療が受けられるように、訪日後でも入れる旅行保険への加入を促進した。

(5)「地方創生回廊」の完備
 訪日外国人旅行者の更なる地方誘客に資するよう、ジャパン・レールパスについて、販売窓口の体制の充実として、平成30年3月、国内販売箇所を16駅・空港から55駅・空港に拡大した。
 さらに、多様な交通モードが選択可能で利用しやすい環境を創出し、人とモノの流れや地域の活性化を促進するため、バスを中心とした交通モード間の接続(モーダルコネクト)の強化を推進している。28年4月には、新宿駅南口に日本最大級のバスターミナルであるバスタ新宿が開業し、新宿駅西口周辺に19箇所点在していた高速バス停が集約された。平成29年度は品川駅や神戸・三宮周辺地区において、立体道路制度を活用した集約交通ターミナル整備に向け検討を推進した。バスタ新宿においては、30年3月28日より、ETC2.0を共通プラットフォームとする新たな高速バスロケーションシステムの実証実験を開始したところであり、引き続き、実証実験参加会社・路線を拡充し更なる利便性向上に努めるとともに、他のターミナル等への展開等についても検討を推進していく。
 訪日外国人旅行者をはじめ、すべての利用者にわかりやすい道案内を実現するため、整備の進む我が国の高速道路ネットワークにおいて、路線名に併せ、高速道路に路線番号を付す「ナンバリング」を導入し、2020年までの整備概成に向けて、各道路管理者と連携して整備を推進した。また、全国の主要観光地49拠点等において、各機関の案内看板等とも連携し、道路案内標識の英語表記改善を推進するとともに、著名な観光地や名所等において交差点名標識への観光地名称の表示を推進した。
 高速道路会社が、レンタカーを利用する訪日外国人旅行者向けに、北海道エリアなど地域ごとに高速道路の周遊定額パスを実施するとともに、全国エリアを対象とした初めての周遊定額パスを29年10月より開始した。
 また、船旅に係る新サービス創出の促進を図るため、28年4月より開始した「船旅活性化モデル地区」制度については、30年3月末時点で18地区設定された。
 過疎地域等における観光客の交通手段を確保するため、「自家用有償旅客運送制度」の対象を国家戦略特別区域において訪日外国人旅行者をはじめとする観光客に拡大し、兵庫県養父市において検討会議を設置し検討を進め、29年12月、養父市区域計画が策定、認定された。
 地方自治体の交通施策担当者が訪日外国人旅行者の誘客を支える交通施策を立案する上で参考となるよう「地域のモビリティ確保の知恵袋2017〜訪日外国人旅行者の地方誘客を支える交通施策〜」を策定した。

(6)地方空港のゲートウェイ機能強化とLCC就航促進
 国際線就航を通じた訪日誘客誘致の促進のため、平成29年7月に全国27の空港を「訪日誘客支援空港」として認定し、LCCを含む国際線の新規就航・増便、旅客の受入環境高度化への支援等を実施している。
 このほか、JNTOにおいて、国際航空見本市へ出展し、商談を実施するとともに、新規就航・増便に合わせ、各市場において共同広告を実施した。
 また、民間の知恵と資金の活用を図ることにより空港の活性化を目指すため、高松空港、福岡空港、熊本空港、北海道内7空港、広島空港について、空港運営の民間委託に向けた手続き・検討等を進めた。
 さらに、羽田空港の飛行経路見直しに必要な施設整備、成田空港の高速離脱誘導路等の整備、中部空港のLCC専用ターミナルの整備、福岡空港及び那覇空港の滑走路増設事業等、空港発着容量拡大等の取組みを進めた。

(7)クルーズ船受入の更なる拡充
 観光ビジョンに掲げた「訪日クルーズ旅客を2020年に500万人」という目標の実現のため、既存ストックを活用して大型クルーズ船を受け入れるための係船柱、防舷材等の整備を行うとともに、クルーズ旅客の利便性、安全性の確保等を図る事業を行う地方公共団体等に対する補助制度(国際クルーズ旅客受入機能高度化事業)を平成29年度に創設するなど、クルーズ船寄港の「お断りゼロ」に向けた取組みを行った。
 また、国土交通大臣が指定した港湾において、旅客施設等を整備し一般公衆の利用に供する民間事業者に対し、岸壁の優先使用などを認める協定制度の創設等を内容とする「港湾法の一部を改正する法律案」が同年6月に成立、7月に施行された。同年7月26日には、法律に基づく新制度を適用する「国際旅客船拠点形成港湾」として6港を指定した。さらに30年2月27日に鹿児島港を「『官民連携による国際クルーズ拠点』を形成する港湾」に追加で選定した。
 さらに、マレーシア及びフィリピンにおいての現地旅行会社等を対象としたセミナーや、「全国クルーズ活性化会議」と連携して、クルーズ船社と港湾管理者等との商談会を開催したほか、港湾施設の諸元や寄港地周辺の観光情報を一元的に発信するウェブサイトの充実を図った。

(8)公共交通利用環境の革新
 全国の公共交通機関を網羅した経路検索を可能にするため、交通事業者と経路検索サービス提供事業者等との間で、時刻表や経路等の経路検索に必要な情報の受渡しを行うための共通フォーマットを作成した。また共通フォーマットの効率的な活用に向け、課題を整理するための実証実験を行った。
 駅ナンバリングについて、JR東海は平成30年3月から名古屋・静岡の都市圏エリア及び高山線・中央線における外国人利用の多い駅9路線176駅に順次導入しており、JR西日本は同年3月までに近畿エリアの12路線266駅に導入した。また、バスナンバリングが既に導入された系統の改善及び未導入系統における導入促進に向け、同年2月に設置した関係者からなる検討会において議論を実施した。
 タクシーについて、アプリを活用し29年8月から10月にかけて事前確定運賃、30年1月から3月にかけて相乗りタクシーの実証実験を実施した。また、外国語等に対応した高級車による予約配車サービスの実証実験を実施した。
 訪日外国人旅行者が鉄道等で大きな荷物を持ち運ぶ不便を解消するため、空港・駅等で荷物の一時預かり、空港・ホテル・海外の自宅等へ荷物を配送する手ぶら観光を推進した。(「手ぶら観光」共通ロゴマークの認定数:30年3月現在222箇所)

(9)2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けたユニバーサルデザインの推進
 平成29年2月に決定した「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づき、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の確実な成功及びその先を見据え、大規模駅等のバリアフリーの高度化に取り組むとともに、全国各地における高い水準のバリアフリー化、心のバリアフリーを推進していくこととされた。これに関連して、平成30年2月、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」を国会に提出するとともに、同年3月に交通バリアフリー基準を改正した。
 また、バス・タクシーのバリアフリー車両導入促進を図ったほか、観光においては、宿泊施設、旅行業、観光地域向け接遇マニュアルの作成、旅行相談窓口や宿泊施設の情報発信のあり方の検討を行うとともに、旅館・ホテルが行うバリアフリー化への改修の支援事業を開始した。
 東京都、千葉、埼玉、神奈川県内における「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた道路標識改善の取組方針」を策定し、英語表記改善、路線番号の活用、ピクトグラム・反転文字の活用等による道路標識の改善を実施した(29年11月時点で1都3県で整備着手)。
 さらに、全国の主要鉄道駅や観光地周辺における道路について、駅前広場等の歩行空間のユニバーサルデザイン化を重点的に支援した。
 加えて、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会関連駅へのエレベーターの増設やホームドアの整備などのバリアフリー化について支援した。
 空港においては、旅客ターミナルビルの対応に関する数値目標を設定するとともに、旅客利便性を向上させるため、羽田空港国際線ターミナルのタクシー乗り場再配置等を実施した。


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