第2節 地域活性化を支える施策の推進

■3 地域特性を活かしたまちづくり・基盤整備

(1)民間投資誘発効果の高い都市計画道路の緊急整備
 市街地における都市計画道路の整備は、沿道の建替え等を誘発することで、都市再生に大きな役割を果たしている。このため、残りわずかな用地買収が事業進捗の隘路となっている路線について、地方公共団体(事業主体)が一定期間内の完了を公表する取組み(完了期間宣言路線(平成29年4月現在73事業主体130路線)を通じ、事業効果の早期発現に努めている。

(2)交通結節点の整備
 鉄道駅やバスターミナル等の交通結節点には、様々な交通施設が集中し、大勢の人が集まるため、都市再生の核として高い利便性と可能性を有する。
 このため、新宿駅南口地区等の交通結節点及びその周辺において、交通結節点改善事業や都市・地域交通戦略推進事業、鉄道駅総合改善事業等を活用し、交通機関相互の乗換え利便性の向上や鉄道等により分断された市街地の一体化、駅機能の改善等を実施し、都市交通の円滑化や交通拠点としての機能強化等を図った。
 
図表II-4-2-2 交通結節点改善事業の例(新宿駅南口地区)
図表II-4-2-2 交通結節点改善事業の例(新宿駅南口地区)

 また、医職住の近接による地域の集約化等の観点から、既存の鉄道駅に子育て支援施設や医療施設を併設するなど、安心して暮らせる地域の総合的な拠点としての駅機能の高度化を推進した。

(3)交通モード間の接続(モーダルコネクト)の強化
 バスタ新宿をはじめとする集約交通ターミナルについて、官民連携を強化しながら道路事業による戦略的な整備を展開して、多様な交通モードが選択可能で利用しやすい環境を創出し、人とモノの流れや地域の活性化を促進するため、バスを中心とした交通モード間の接続(モーダルコネクト)の強化を推進している。
 我が国のバスの利用環境は、鉄道や航空あるいは諸外国と比較し、ユーザー目線から程遠く、あまりにも貧弱である。今後、ストック効果を高める利用重視の道路施策を進めていく上で、地域における高速道路、鉄道・新幹線等のネットワークの状況を踏まえながら、バスを含めた公共交通の利便性を向上する取組みを道路施策としても加速する必要がある。
 このような中、バスを中心とした取組みとして、ITSとPPPをフル活用しながら、 バス利用拠点の利便性を向上するための『バスタプロジェクト』を展開することにより、多様な交通モード間の接続(モーダルコネクト)を強化し、地域の活性化、生産性の向上、災害対応の強化を実現している。
 平成28年4月には、新宿駅南口に日本最大級のバスターミナルであるバスタ新宿が開業した。バスタ新宿は道路事業(国道20号)で基盤整備を行い、民間バスターミナルが施設運営を行う官民連携事業により整備がなされ、鉄道と直結し、新宿駅西口周辺に19箇所点在していた高速バス停が集約された。開業後の利用者の意見も踏まえながら、コンビニエンスストアの本格営業や女子トイレの増設、ベンチの増設等の利便性の向上や、高速バスの運行経路見直しや交差点の左折レーン延伸等の国道20号の渋滞対策の強化を推進した。
 引き続き、高速バス運行支援システムの本格導入による運行情報の利用者への情報提供や施設内スペースの有効活用による利便性の向上、国道20号の荷さばき車両対策、交通管理者との連携による交通流対策の強化等の渋滞対策を推進していく。
 また、29年度は、品川駅や神戸・三宮周辺地区においては、立体道路制度を活用した集約交通ターミナル整備に向け検討を推進した。
 そのほか、高速道路のSA・PAを活用した高速バス間の乗換や中継輸送、高速バスストップの有効活用、路線バスの利用環境の改善を推進していく。
 また、カーシェアリングやシェアサイクルといった新たな交通モードについて、道路空間を有効活用しながら、公共交通との連携を強化させる取組みを推進している。
 東京都千代田区においては、地下鉄大手町駅に近接した箇所に、我が国では初となる道路上のカーシェアリングステーションを設置し、公共交通の利用促進の可能性を検証する社会実験を実施しており、平成30年3月には、立地条件の異なる新橋駅付近にステーションを増設している。さらに、このステーションの近傍では、首都圏では初となる国道上のシェアサイクルポートを設置し効果検証する社会実験を、別途実施している。今後は、この社会実験の結果を踏まえながら、道路空間の有効活用による道路利用者の利便性向上に向けた検討を進めていく。

(4)企業立地を呼び込む広域的な基盤整備等
 各地域が国際競争力の高い成長型産業を呼び込み集積させることは、東アジアにおける競争・連携及び地域活性化の観点から大きな効果がある。このため、空港、港湾、鉄道や広域的な高速道路ネットワーク等、地域の特色ある取組みのために真に必要なインフラへ集中投資を行い、地域の雇用拡大・経済の活性化を支える施策を推進している。

1)空港整備
 国内外の各地を結ぶ航空ネットワークは、地域における観光振興や企業の経済活動を支え、地域活性化に大きな効果がある。アジア等の世界経済の成長を我が国に取り込み、経済成長の呼び水となる役割が航空に期待される中、我が国全体の国際競争力や空港後背地域の地域競争力強化のため、空港の処理能力向上や空港ターミナル地域再編による利便性向上等を図っている。

2)港湾整備
 四方を海に囲まれている我が国においては、海外との貿易の大部分を海上輸送が担っており、また国内においても、地域間の物流・交流等に海上輸送が重要な役割を担っている。そうした中で、港湾インフラは海外との貿易の玄関口であるとともに、企業活動の場として日本の産業を支えている。物流効率化等による我が国の産業の国際競争力の強化、雇用と所得の維持・創出を図るため、地域の基幹産業を支える港湾において、国際物流ターミナルの整備等を行っている。

3)鉄道整備
 全国に張り巡らされた幹線鉄道網は、旅客・貨物輸送の大動脈としてブロック間・地域間の交流を促進するとともに、産業立地を促し、地域経済を活性化させることで、地域の暮らしに活力を与えている。特に、鉄道貨物輸送は、地域経済を支える産業物資等の輸送に大きな役割を果たしている。

4)道路整備
 迅速かつ円滑な物流の実現等により国際競争力を強化するとともに、地域活性化の観点から、高規格幹線道路等の幹線道路ネットワークの形成を進めている。

(5)交通インフラの整備促進
 平成27年度税制改正において、「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法(大深度地下法)」に基づく地下使用の認可を受けた事業に係る区分地上権等設定対価が譲渡所得に該当するかどうかの判定方法について、土地価額の4分の1に代えて、使用収益の制限される垂直方向の範囲に応じて設定する割合とする措置が講じられている。この措置により、大深度地下法の認可事業と一体的に施行される事業に係る一定の区分地上権等設定対価については譲渡所得として課税されることになり、収用交換等の場合の5,000万円特別控除等の適用が可能となることで、事業効果の早期発現を推進している。

(6)地域に密着した各種事業・制度の推進

1)道の駅
 「道の駅」は道路の沿線にあり、駐車場、トイレ等の「休憩機能」、道路情報や地域情報の「情報発信機能」、地域と道路利用者や地域間の交流を促進する「地域の連携機能」の3つを併せ持つ施設で、平成29年11月現在1,134箇所が登録されている。
 近年、地域の雇用創出や経済の活性化、住民サービスの向上にも貢献するなど、全国各地で「道の駅」を地域活性化の拠点とする取組みが進展している。これらの取組みを関係機関と連携して重点的に応援するための重点「道の駅」制度を26年度に創設した。創設時に選定した全国モデル「道の駅」6箇所、重点「道の駅」35箇所に加え、27年度には重点「道の駅」を38箇所選定した。また、28年度からは、特定テーマを設定し、その観点で他の模範となる先進事例をモデル認定する取組を開始した。28年度は、“住民サービス部門”6箇所を、29年度は“地域交通拠点部門”7箇所の認定を行った。
 
図表II-4-2-3 モデル「道の駅」箇所
図表II-4-2-3 モデル「道の駅」箇所

2)高速道路の休憩施設の活用による拠点の作成
 高速道路利用者だけの使用を前提とした「高速道路の休憩施設」は、近年、ウェルカムゲートやハイウェイオアシス等により、沿道地域への開放による地域活性化が図られており、その促進のため、関係機関が連携の上、進捗状況に応じた支援を実施している。
 これによって、平成29年3月岡山自動車道高梁SAにおいては、ウェルカムゲートが設置され、沿道地域からのSA利用が促進された。

3)官民連携による道路管理の充実
 道路管理にあたっては、これまでも地域と協働した取組みとして、ボランティア・サポート・プログラム(VSP)などにより民間団体等の協力を得てきている。平成28年4月には道路における身近な課題の解消や道路利用者のニーズへのきめ細やかな対応などの活動を自発的に実施する民間団体等との連携により道路管理の一層の充実を図るため、「道路法」を改正し、道路協力団体制度を創設した。平成29年度末までに直轄国道において30団体を指定している。
 道路協力団体は道路空間において、道路の魅力向上のための活動の実施や、その活動により得られた収益により道路管理の活動を充実させることが可能であり、また、道路協力団体が行う道路に関する工事や維持及び道路の占用について、行政手続を円滑、柔軟化する措置を講じている。

4)「かわまちづくり」支援制度
 河口から水源地まで様々な姿を見せる河川とそれにつながるまちを活性化するため、地域の景観、歴史、文化及び観光基盤などの「資源」や地域の創意に富んだ「知恵」を活かし、市町村、民間事業者及び地元住民と河川管理者の連携の下、「かわまちづくり」計画を作成し、河川空間とまち空間が融合した良好な空間形成を推進している。平成29年度までに191箇所が「かわまちづくり」支援制度に登録している。

5)地域住民等の参加による地域特性に応じた河川管理
 河川環境について専門的知識を有し、豊かな川づくりに熱意を持った人を河川環境保全モニターとして委嘱し、河川環境の保全、創出及び秩序ある利用のための啓発活動等をきめ細かく行っている。また、河川に接する機会が多く、河川愛護に関心を有する人を河川愛護モニターとして委嘱し、河川へのごみの不法投棄や河川施設の異常といった河川管理に関する情報の把握及び河川管理者への連絡や河川愛護思想の普及啓発に努めている。
 さらに、河川の維持や河川環境の保全等の河川管理に資する活動を自発的に行っている民間団体等を河川協力団体として指定し、河川管理者と連携して活動する団体として法律上の位置付けを行い、団体の自発的活動を促進し、地域の実情に応じた多岐にわたる河川管理の充実を推進している。

6)海岸における地域の特色を活かした取組みへの支援
 海岸利用を活性化し、観光資源としての魅力を向上させることを目的に、砂浜確保のための養浜や海岸保全施設等の整備を行う海岸環境整備事業の支援を行っている。
 海岸保全に資する清掃、植栽、希少な動植物の保護、防災・環境教育等の様々な活動を自発的に行う法人・団体を海岸協力団体に指定することにより、地域との連携強化を図り、地域の実情に応じた海岸管理の充実を推進しており、平成29年度までに14団体を指定している。

7)港湾を核とした地域振興
 地域住民の交流や観光の振興を通じた地域の活性化に資する「みなと」を核としたまちづくりを促進するため、住民参加による地域振興の取組みが継続的に行われる施設を港湾局長が「みなとオアシス」として登録している(平成30年3月末時点、107箇所)。
 「みなとオアシス」は、「みなとオアシス全国協議会」等が主催する「みなとオアシスSea級グルメ全国大会」などの、様々な活動を通じ、地域の賑わい創出に寄与している。近年急増する訪日クルーズ旅客の受入れや災害発生時の支援など、新たなニーズへの対応も期待されている。
 また、クルーズ船寄港時のおもてなしなど港湾の多様化するニーズに対応するため、官民連携による港湾の管理等を促進するなどの目的で、港湾管理者が適正な民間団体等を指定する「港湾協力団体」制度を活用し、みなとを核とした地域の更なる活性化を図ることとしている。
 
図表II-4-2-4 みなとオアシス全国マップ
図表II-4-2-4 みなとオアシス全国マップ

8)マリンレジャーの拠点づくり
 既存の港湾施設やマリーナ、フィッシャリーナ等を活用した「海の駅」の設置を推進している。海の駅は、平成30年3月末時点で161駅が登録されており、国土交通省では、陸と海とをつなぐ接点として、訪れた人が楽しめるよう、レンタルボートを利用したクルージングや海産物の販売、漁業体験、イベントの実施等、地域の特性を活かした様々な取組みに対する支援を行っている。また、関係機関と連携して、その魅力の増大、認知度の向上、防災・救難拠点としての活用などにも取り組んでいる。

(7)地籍整備の積極的推進
 地籍調査は市町村等が個々の土地の境界等を調査するものであり、大規模災害に備えた事前防災対策の推進、被災後の復旧・復興の迅速化、インフラ整備の円滑化、民間都市開発の推進等に貢献する。地籍整備を一層促進するため、地籍調査への財政支援のほか、都市部における官民の境界情報の整備や山村部における境界情報の保全を国直轄で行うとともに、地籍調査以外の測量成果の活用を推進している。
 また、衛星画像等を用いた測量技術を活用した効率的な調査手法を検討するとともに、当該手法に係る作業要領を作成するなど地籍調査の効率化を推進している。

(8)大深度地下の利用
 大深度地下の利用については、審査の円滑化に関する技術的検討のほか、大深度地下使用協議会を活用し、大深度地下空間の情報交換を図っている。


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