第1節 交通ネットワークの整備

第6章 競争力のある経済社会の構築

第1節 交通ネットワークの整備

■1 幹線道路ネットワークの整備

(1)幹線道路ネットワークの整備
 幹線道路の整備は、昭和29年に策定された第1次道路整備五箇年計画以来、現在に至るまで着実に進められてきた。例えば、高速道路等の幹線道路ネットワークの整備は、高速道路のインターチェンジ周辺での工場の立地を促すなど、地域経済の活性化に大きく寄与するとともに、地方部における広域的な医療サービスの享受、災害等で幹線道路が途絶した場合の広域的な迂回ルートの確保等が可能となるなど、国民生活の質や安全の向上にも大きく貢献してきた。
 例えば、新名神では平成29年4月30日に城陽JCT・IC〜八幡京田辺JCT・IC、平成29年12月10日に高槻JCT・IC〜川西IC、平成30年3月18日に川西IC〜神戸JCTが開通し、全体で44kmがつながった。これにより、企業立地や観光周遊の促進などのストック効果が期待される。
 このようなストック効果が最大限発揮されるよう、幹線道路ネットワークの整備を引き続き推進する。特に、全国物流ネットワークの核となる大都市圏環状道路等については、現下の低金利状況を活かし、財政投融資を活用した整備加速による生産性向上を図る。
 一方で、全国においては未だ高速道路等の幹線道路ネットワークが繋がっていない地域があることから、計画的に整備を推進していく。
 
図表II-6-1-1 高規格幹線道路等の整備状況
図表II-6-1-1 高規格幹線道路等の整備状況

(2)道路を賢く使う取組みの推進
 生産性の向上による経済成長の実現や交通安全確保の観点から、必要なネットワークの整備と合わせ、今ある道路の運用改善や小規模な改良等により、道路ネットワーク全体の機能を最大限に発揮する賢く使う取組みを推進している。特に平成27年8月より本格的な導入が開始されたETC2.0がその取組みを支えている。

1)賢く使う取組みを支えるETC2.0
 ETC2.0とは、全国の高速道路上に約1,700箇所設置された路側機と走行車両が双方向で情報通信を行うことにより、これまでのETCと比べて、
など、格段と進化した機能を有し、ITS推進に大きく寄与するシステムである。

2)賢い料金
 平成28年4月には首都圏で、29年6月からは近畿圏で新たな高速道路料金を導入し、外側の環状道路への交通の転換や、都心流入の分散化などの効果が発揮され始めている。引き続き、効果を検証する。
 また、ETC2.0搭載車を対象に高速道路外の休憩施設等へ一時退出しても、高速を降りずに利用した料金のままとする実験を全国20箇所で実施した。これにより、休憩施設やガソリンスタンドの空白区間を解消し、良好な運転環境を実現する。
 
図表II-6-1-2 首都圏の高速道路を賢く使うための料金体系(平成28年4月より導入)
図表II-6-1-2 首都圏の高速道路を賢く使うための料金体系(平成28年4月より導入)

 
図表II-6-1-3 近畿圏の高速道路を賢く使うための料金体系(平成29年6月より導入)
図表II-6-1-3 近畿圏の高速道路を賢く使うための料金体系(平成29年6月より導入)

3)賢い料金所
 ETCが基本のストレスのない「賢い料金所」の導入に向け、圏央道の入口料金所等の料金所にてETCバーの開放運用実験を実施するとともに、首都高速入口におけるETCレーンを主流化する取組みについて、実施している。
 
図表II-6-1-4 ETC2.0 が基本のストレスのない「賢い料金所」
図表II-6-1-4 ETC2.0 が基本のストレスのない「賢い料金所」

4)賢い投資
 今あるネットワークの効果を、最小コストで最大限発揮させる取組みとして、上り坂やトンネルなどの構造上の要因で、速度の低下や交通の集中が発生する箇所を、ETC2.0等により収集したきめ細かい旅行速度データや加減速データ等のビッグデータにより特定し、効果的に対策するピンポイント渋滞対策を実施している。これまで、東名阪自動車道の四日市付近等9箇所で、既存の道路幅員の中で、付加車線等を設置する運用を開始している。現在、関越自動車道の高坂SA付近等10箇所で、ピンポイント渋滞対策を実施している。

5)賢い機能強化
 暫定2車線の高速道路は、対面交通の安全性や走行性、大規模災害時の対応などの課題がある。そこで、運転者の安心や快適性、走行性を高める観点から、高速道路の暫定2車線区間を4車線化する際、第三者委員会での議論など、透明性の確保を前提に国土開発幹線自動車道建設会議の議を経ずに、機動的に対応することが可能となる「高速自動車国道法施行令の一部を改正する政令」を平成27年11月18日に施行した。また、速度低下に対応した付加車線の機動的な設置を全国4路線で実施するとともに、正面衝突事故防止対策としてワイヤロープの設置検証を全国約100kmで実施している。

6)その他の取組み
 地域との連携促進のため、高速道路と施設との直結等によるアクセス機能の強化を進めている。スマートIC等を柔軟に追加設置することにより、高速道路から物流拠点や観光拠点等へのアクセス向上や、「コンパクト+ネットワーク」の考え方による機能の集約化・高度化、既存のIC周辺の渋滞緩和を図る。平成29年7月には高速道路と民間施設を直結する民間施設直結スマートIC制度の具体的なルールを定めた。また、民間施設直結スマートICの整備を促進するため、整備を行う民間事業者に対し民間事業者のIC整備費用の一部を無利子貸付する制度や、民間事業者が整備に係る土地を取得した場合の登録免許税の非課税措置を創設する。スマートICについては、国として必要性が確認できる箇所等について、「準備段階調査」により、計画的かつ効率的なスマートICの準備・検討を実施している。
 
図表II-6-1-5 スマートIC整備効果の例
図表II-6-1-5 スマートIC整備効果の例

 全国の渋滞箇所において効果的な対策を推進するため、都道府県単位等で道路管理者、警察等から構成される渋滞対策協議会を設置し、必要な対策を検討・実施している。平成29年度は、渋滞対策協議会とトラックやバス等の利用者団体が連携を強化し、利用者の視点で渋滞箇所を特定した上で、速効対策を実施する取組みを推進した。
 道路周辺の土地利用に伴う渋滞の抑制を図るため、大規模施設等の立地者に対する事前の交通アセスメントや、立地後の追加対策を要請するための新たな仕組みを検討している。
 広域的に渋滞が発生している観光地において、ETC2.0に加え多様なセンサーやAIによる解析技術等を融合し、時空間的な変動を考慮した交通マネジメントを強化する。


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