第1節 交通ネットワークの整備

■2 幹線鉄道ネットワークの整備

(1)新幹線鉄道の整備
 新幹線は、我が国の基幹的な高速輸送体系であり、地域間の移動時間を大幅に短縮させ、地域社会の振興や経済活性化に大きな効果をもたらす。また、新幹線は安全(昭和39年の東海道新幹線の開業以来、乗客の死亡事故はゼロ)かつ環境にもやさしい(鉄道のCO2 排出原単位(g-CO2/人キロ)は航空機の1/5、自家用車の1/6)という優れた特性を持っている。全国新幹線鉄道整備法に基づき、昭和48年に整備計画が定められている、いわゆる整備新幹線については、平成9年10月の北陸新幹線(高崎・長野間)の開業を皮切りに、東北新幹線、九州新幹線、北陸新幹線、北海道新幹線と順次開業してきている。
 また、北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)、北陸新幹線(金沢・敦賀間)、九州新幹線(武雄温泉・長崎間)については、「整備新幹線の取扱いについて」(27年1月14日政府・与党申合せ)に基づき、現在、開業に向けて着実に整備を進めているところである。さらに、未着工区間である北陸新幹線敦賀・大阪間については、29年3月に与党において、敦賀駅−小浜市(東小浜)付近−京都駅−京田辺市(松井山手)付近−新大阪駅を結ぶルートとすることが決定された。現在、鉄道・運輸機構において、平成29〜30年度にかけて駅・ルート公表に向けた詳細調査が行われているところであり、この調査による駅・ルートの公表後、環境影響評価の手続きが進められていくことになる(4年程度)。なお、整備財源の確保については、与党において、これらの詳細調査・環境影響評価の間に検討を行うこととされている。また、九州新幹線(西九州ルート)については、フリーゲージトレインの導入を前提としているところであるが、実用化の前提となる耐久走行試験において車軸に摩耗痕が確認され、摩耗対策に時間を要するため、導入が遅れること、また、通常の新幹線よりもコストが大きくかかることから、営業主体であるJR九州によって、導入が困難との立場が示されたことを踏まえ、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム九州新幹線(西九州ルート)検討委員会において議論が行われ、29年9月に、整備のあり方等に係る今後の検討方針がとりまとめられた。その内容に基づき、フリーゲージトレインを導入する場合、フル規格の新幹線で整備する場合、ミニ新幹線で整備する場合のそれぞれについて、費用や投資効果、工期、山陽新幹線への乗り入れ等の、整備のあり方の検討に必要な項目について調査を行い、3月に同委員会に対し報告を行ったところである。
 
図表II-6-1-6 全国の新幹線鉄道網の現状
図表II-6-1-6 全国の新幹線鉄道網の現状

 北海道新幹線については、新幹線列車と貨物列車がレールを共用し走行している区間の高速走行について、安全の確保に万全を期しつつ、新幹線の高速走行と鉄道貨物輸送との二つの機能に十分に配慮しながら、引き続き検討を進めている。また、営業主体であるJR北海道は現在厳しい経営状況に置かれていることから、新青森・新函館北斗間の収益向上に資する取組みの実施状況や、新函館北斗・札幌間の開業による効果等について確認していく。
 その他、平成29年度より幹線鉄道ネットワーク等のあり方に関する調査を行っており、具体的には、主要都市間の輸送密度等の基礎的なデータ収集や、単線による整備等の効率的な新幹線整備手法の研究、在来線の高速化及び既存幹線鉄道との接続手法等の研究等に取り組んでいる。
 中央新幹線は、東京・名古屋間を約40分、東京・大阪間を約1時間で結び、全線が開業することで三大都市が1時間圏内となり、人口7千万人の巨大な都市圏が形成されることとなる。これにより、我が国の国土構造が大きく変革され、国際競争力の向上が図られるとともに、その成長力が全国に波及し、日本経済全体を発展させるものである。全線開業の時期については、財政投融資を活用することにより、当初57年であった大阪までの全線開業を最大8年間前倒すこととし、28年に独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法の改正を行い、同年11月から、同機構より、建設主体であるJR東海に対して、財政融資資金の貸付けが行われ、昨年7月までに、予定していた3兆円全ての貸付を完了したところである。現在、国土交通大臣が認可した「中央新幹線品川・名古屋駅間工事実施計画(その1)及び(その2)」に従い、JR東海において、39年の品川・名古屋間の開業に向け、品川駅や南アルプストンネルの工事等を進めているところである。

(2)技術開発の促進
1)超電導磁気浮上式鉄道(超電導リニア)
 超電導リニアの技術開発については、超電導磁気浮上方式鉄道技術開発基本計画に基づき、既に確立している実用技術のより一層の保守の効率化、快適性の向上等を目指した技術開発を推進する。

2)軌間可変電車(フリーゲージトレイン)
 軌間可変技術評価委員会(平成30年3月開催)による審議を踏まえ、営業走行を目指し、耐久性の向上に資する技術開発等を実施するとともに、運行環境に適応した、更なる安全性の向上に資する雪対策(耐雪・耐寒化)に関する技術開発を推進する。


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