第1節 地球温暖化対策の推進

■3 再生可能エネルギー等の利活用の推進

 平成26年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」に基づき、再生可能エネルギーの導入を最大限加速していくこととされていることを踏まえ、国土交通省では、港湾の洋上風力、空港施設等の広大なインフラ空間、河川流水、安定かつ豊富な下水道バイオマス等といった再生可能エネルギーのポテンシャルを活用した導入を推進している。

(1)海洋再生可能エネルギー利用の推進
 四方を海に囲まれた我が国では、洋上風力をはじめ豊富な海洋再生可能エネルギーに恵まれている。鹿島港においては、占用公募制度に基づく全国2例目の洋上風力発電事業者の公募が実施され、平成29年7月に事業予定者が選定された。また、洋上風力発電設備に関する電気事業法と港湾法に基づく審査手続きの合理化や事業者の負担軽減のため、経済産業省と連携して設置した港湾における洋上風力発電施設検討委員会による検討を踏まえ、港湾法に基づく洋上風力発電設備に関する技術基準を改正するとともに、平成30年3月に「洋上風力発電設備に関する技術基準の統一的解説」及び「港湾における洋上風力発電設備の施工に関する審査の指針」を策定した。
 また、波力、海流等の海洋エネルギーについては、浮体式の発電施設の安全ガイドラインを策定してきたが、これを活用した世界で初めてとなる浮体式海流発電施設の実証試験が行われた。このように関係省庁と連携して、新たな海洋再生可能エネルギーの実現促進を図っている。

(2)小水力発電の推進
 河川等における再生可能エネルギーの導入促進に向けた取組みとして、小水力発電の導入を推進している。具体的には、登録制による従属発電の導入促進、現場窓口によるプロジェクト形成支援、砂防堰堤における小水力発電設備の導入支援を行っているほか、直轄管理ダム等においてダム管理用発電設備の積極的な導入による未利用エネルギーの徹底的な活用を図っている。

(3)下水道バイオマス等の利用の推進
 国土交通省では、下水汚泥のエネルギー利用、下水熱の利用等を推進している。
 平成27年5月には、「下水道法」が改正され、民間事業者による下水道暗渠への熱交換器設置が可能になったほか、下水道管理者が下水汚泥をエネルギー又は肥料として再生利用することが努力義務化された。固形燃料化やバイオガス利用等による下水汚泥のエネルギー利用、再生可能エネルギー熱である下水熱の利用について、PPP/PFI等により推進している。

(4)インフラ空間を活用した太陽光発電の推進
 東日本大震災を契機とするエネルギー需給の変化を踏まえ、下水処理場、港湾・空港施設における広大なスペースの有効活用に加え、官庁施設等の公共インフラ空間における公的主体による太陽光発電設備の設置や導入のほか、道路・都市公園においては、民間事業者等が設置できるよう措置している。

(5)水素社会実現に向けた取組みの推進
 家庭用燃料電池(平成21年市場投入)や燃料電池自動車(26年市場投入)など、今後の水素エネルギー需要の拡大が見込まれる中、水素の製造、貯蔵・輸送、利用という観点から、水素をエネルギーとして利活用する社会“水素社会”の実現に向けた環境を整備する。また、29年12月に「水素基本戦略」が再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議決定されており、国土交通省としても関係省庁と連携しつつ取組みを進めていく。

1)燃料電池自動車の普及促進
 燃料電池自動車の世界最速普及を達成すべく、また、比較的安定した水素需要が見込まれる燃料電池バス等を普及させることが水素供給インフラの整備においても特に重要であるとの認識の下、民間事業者等による燃料電池自動車の導入事業について支援していく。平成28年度以降、日本初となる燃料電池バス (累計5台)の本格導入に対して補助を行った。

2)水素燃料電池船の実用化に向けた取組み
 水素燃料電池船の実用化に向けた基盤整備の一環として、「水素燃料電池船の安全ガイドライン」及び「水素燃料供給に関するガイドライン」を策定し、安全面の環境を整備している。

3)液化水素の海上輸送システムの確立
 平成27年度より、川崎重工業(株)等が、豪州の未利用エネルギーである褐炭を用いて水素を製造し、我が国に輸送を行う液化水素サプライチェーンの構築事業(経済産業省「未利用エネルギー由来水素サプライチェーン構築実証事業」(国土交通省連携事業))を実施している。
 このため、国土交通省では、高効率で安全な荷役方法の確立を図るため、26年度より、内閣府と連携し、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のエネルギーキャリアにおいて、液化水素用ローディングシステムの研究開発を行っている。

4)下水汚泥由来の水素製造・利活用の推進
 下水汚泥は、量・質の両面で安定しており、下水処理場に集約される。下水処理場が都市部に近接している等の特徴から、効率的かつ安定的な水素供給の実現の可能性が期待されている。そこで、再生可能エネルギーである下水汚泥から水素を製造・利活用するため、下水道施設での水素製造技術の開発・実証等を推進している。


テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む