第4節 健全な水循環の維持又は回復

コラム 平成29年の荒川水系をはじめとした渇水への対応

 平成29年は、4月下旬から5月に東日本太平洋側と西日本では高気圧に覆われる日が多く、降水量が少なかったことに加え、梅雨前線が6月に南偏、7月に北偏し、同地域で少雨となり、国管理河川の約1割の全国12水系14河川で取水制限を伴う渇水となりました。直近の10年間で平成25年、平成20年に続く3番目に多い取水制限となりました。特に、関東地方の荒川においては平成9年3月以来、20年ぶりとなる取水制限となり、四国地方の吉野川においては直近10年間で平成20年に続く2番目の長さとなる95日間の取水制限となりました。
 首都圏の水源である荒川の4ダムのうち、平成23年3月に滝沢ダムが完成整備されたことで、取水制限日数は58日短縮されたと推定されます。また、浦山ダムと滝沢ダムの両ダムがなければ、貯水量が枯渇し、給水制限や断水等の危機的な渇水に陥ったと推定されます。
 首都圏の都市用水(水道用水、工業用水)及び農業用水は、利根川、荒川水系のダム群、武蔵水路や北千葉導水路等の広域ネットワークにより支えられています。荒川において取水される都市用水は、約7割が利根川上流8ダムから供給され、今回渇水が発生した平成29年においても武蔵水路により、1月〜8月まで約5億m3が導水され、荒川流域の水需要を支えました。この導水量は、東京都と埼玉県の水道給水人口約2,000万人の生活用水の約83日分に相当します。
 今回の渇水では、断水等の深刻な渇水は発生しませんでしたが、依然として毎年のように全国的に取水制限を伴う渇水が発生しています。
 将来の気候変動や危機的な渇水に強い地域づくりに向けて、渇水対策を検討していく必要があり、施設整備の着実な推進や既存施設の徹底活用などのハード対策、渇水対応タイムライン(時系列の行動計画)の作成の促進等のソフト対策の両面による幅広い取組を着実に推進していきます。
 
首都圏の広域ネットワークによる水利用
首都圏の広域ネットワークによる水利用

 
首都圏の広域ネットワーク
首都圏の広域ネットワーク


注 二瀬ダム、浦山ダム、滝沢ダム、荒川貯水池


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