第1節 インフラシステム海外展開の促進

■2 国土交通省における取組み

 国土交通省においても、同戦略に基づき、かつ上記制度改善を最大限活用し、国土交通分野におけるインフラシステム海外展開を強力に推進する。競合する諸外国との競争に勝ち抜き、我が国企業が受注を獲得するためには、ハードとソフトが一体となって安全で信頼性の高いシステムを構築するなど、我が国の強みを発揮しつつ、相手国のニーズにも柔軟に対処していくことが必要である。そのため、以下のとおり1)「川上」からの参画・情報発信、2)ビジネスリスク軽減、3)ソフトインフラの展開の3つを施策の柱として推進を図っている。

1)「川上」からの参画・情報発信
 プロジェクトの構想段階(川上)からの参画を推進するため、我が国技術によりもたらされる安全性や信頼性、運営段階も含めトータルで見て優れた費用対効果について、官民一体となったトップセールスや、在京大使等を対象とした「シティ・ツアー」の実施、国際会議の機会等を活用した情報発信に取り組んでいる。

2)ビジネスリスク軽減
 巨額の初期投資や長期にわたる整備、需要リスクといった交通・都市インフラ分野において川下(管理・運営)に進出する企業の事業リスクを軽減するため、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)(平成26年10月設立)の積極的な活用のほか、海外で事業展開する企業のトラブル等の解決を支援するために相談窓口「海外建設・安全対策ホットライン」の設置や、海外建設・不動産市場データベース等を通じた最新情報の発信、ミッション派遣等による中堅・中小建設企業の海外進出支援、地政学的に重要な拠点国と連携した第三国への展開支援等、我が国企業のインフラシステム海外展開を多角的に支援する取組みを行っている。

3)ソフトインフラの海外展開
 我が国企業がプロジェクトに参画しやすい環境を整備するための我が国技術・システムの国際標準化や相手国でのデファクト・スタンダード化、我が国企業の事業環境を改善するための相手国の制度整備支援、相手国における持続的なインフラの運営・維持に資する技術者・技能者層の育成支援等の取組みを行っている。

(1)インフラシステム輸出の促進に係る体制整備
 国土交通分野の海外インフラ事業について、我が国事業者の海外展開を強力に推進するため、国土交通大臣が基本方針を定めるとともに、独立行政法人等に調査等の必要な海外業務を行わせるための措置等を講じる「海外社会資本事業への我が国事業者の参入の促進に関する法律案」を平成30年3月に閣議決定し、国会に提出した。

(2)トップセールスの推進
 トップセールスについて、平成29年度において、石井国土交通大臣は、マレーシア、シンガポール、インドネシア、米国等計8カ国を歴訪し、相手国のトップや国土交通分野を担当する閣僚との協議・意見交換を行うことにより、我が国インフラシステムのトップセールスに取り組んだ。また、国土交通副大臣・大臣政務官においては、ミャンマーやコロンビア、セネガル等21カ国を訪問し、インフラニーズの見込める国に対して、我が国インフラシステムのアピールを行った。このほか、諸外国の大臣等要人の来日・表敬といった機会、セミナーの開催等を通じ、我が国インフラシステムの優位性に関する発信に積極的に取り組んだ。

(3)国土交通省インフラシステム海外展開行動計画2018の策定
 近隣のASEAN諸国をはじめとして諸外国のインフラ需要は急速に拡大し、競合国との獲得競争は熾烈化している。我が国は、安倍総理が発表した「質の高いインフラパートナーシップ」を実現すべく、受注を目指した抜本的な制度拡充を行う等、政府を挙げた取組みを強化している。我が国のインフラ海外展開における国土交通省の占める役割は極めて大きく、現行の取組みを継続、強化しつつ、この制度拡充を最大限活用する等、現下の状況変化に応じた新たな取組みも行っていく必要がある。平成30年3月に策定した行動計画2018では、「海外社会資本事業への我が国事業者の参入の促進に関する法律案」の提出や各プロジェクトの進捗状況等を踏まえ、1)「チームジャパンの確立」、2)「競争力の強化」、3)「増加するPPP案件への対応」、4)「相手国への貢献を通じた受注機会の拡大」、5)「受注企業への継続的サポート」の5つの戦略を示すとともに、鉄道、港湾、空港、都市開発・不動産開発、建設産業の各分野別の具体的な取組み等についても策定した。

(4)インフラ海外展開における民間資金の一層の活用
 世界のインフラ市場は、更なる拡大が見込まれているが、とりわけ民間の資金を活用する官民連携(PPP:Public-Private Partnership)方式の要請が強くなっている。しかしながら、交通や都市開発のプロジェクトは、長期にわたる整備、運営段階の需要リスク、現地政府の影響力といった特性があるため、民間だけでは参入が困難なケースも見られる。
 このため、国土交通省では、我が国の民間企業による交通事業・都市開発事業の海外市場への参入促進を図るため、平成26年10月、需要リスクに対応し「出資」と「事業参画」を一体的に行う株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)を設立した。JOINはこれまで港湾、鉄道、都市開発、物流及び道路分野において11案件の支援決定(国土交通大臣認可)を行ったところである。また、安倍総理より28年5月に発表された「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」を受けて、政令改正や「最大出資者基準」の運用緩和など、質の高いインフラ輸出のための更なる制度改善を行った。30年度は、財政投融資を1,268億円(産業投資639億円、政府保証629億円)計上しており、引き続き、JOINを積極的に活用していく。

(5)戦略的対外広報の推進
 インフラシステム海外展開の一層の推進のため、日本のインフラシステムの特長である「質の高いインフラ」を分かりやすく伝える広報コンテンツを作成し、効果的なプロモーションを行っていくなど、戦略的広報のための取組みを推進する。「質の高いインフラ」を具体的に伝える内容の映像作成を行い、相手国政府要人へのトップセールス、要人訪日、セミナー等の際に活用するとともに、ネット放送・配信、新聞、雑誌等の媒体を活用し、相手国民等により広範に訴求していく。

(6)各国・地域における取組み
 上記の取組み以外にも、二国間において次官級会合の開催、大臣間の協力覚書の署名等を進めているほか、官民が連携してインフラシステム海外展開を進めていく場として、我が国が提唱する「質の高いインフラ投資」の理解促進等を図る官民インフラ会議や二国間対話を継続するとともに、エコシティ、水、道路、防災、鉄道、港湾、航空といったそれぞれのインフラ分野において海外官民協議会を設置し、我が国インフラについての情報発信を行っている。
 例えば、防災面での課題を抱えた新興国等を対象に、両国の産学官で協働し、解決策を追求する「防災協働対話」の展開に当たり、平成26年6月に設立した産学官の協力体制を構築する組織である「日本防災プラットフォーム」と連携し、我が国技術の相手国政府への紹介、提案等を行っている。また、ミャンマー、インドネシア、ケニア及びモザンビーク等での港湾整備・運営参画、ミャンマー、カンボジアでの海外港湾EDIシステムの導入、ベトナムでの港湾技術基準の導入等のプロジェクトを推進するため、人材育成の充実、「海外港湾物流プロジェクト協議会」を通じた情報共有・意見交換等を実施しているほか、都市開発の海外展開を推進するための「(一社)海外エコシティプロジェクト協議会」等による官民連携の取組みや、国際的な不動産見本市である「MIPIM」(28年3月フランス・カンヌ開催)への日本ブース出展の開催支援等を行っている。
 加えて、我が国の質の高い物流システムの海外展開に向け、物流パイロット事業として、ミャンマーにおける農産物の物流システム近代化に係る実証事業、インドにおける貨物鉄道利用促進に係る実証事業を実施した。
 また、我が国の質の高い高速道路システムの海外輸出に向け、我が国の高速道路会社と協力して海外展開を進めており、29年度はベトナムで中日本高速道路、インドでは東日本高速道路が海外の有料道路事業に参画した。
 29年6月、独自の技術を有するわが国の中堅・中小建設企業の海外市場への進出を促進することを目的として、中堅・中小建設業海外展開推進協議会(JASMOC)を立ち上げ、国内セミナーの開催やミッション派遣等を通じて、技術の売り込みや現地関係者とのコネクション構築等を支援した。
 29年度に、各地域・国との間で行われたインフラシステム海外展開を促進する対話、協力等の取組みは下記のとおりである。

1)ASEAN地域
 巨大な単一市場の実現に向け平成27年末に発足したASEAN経済共同体(AEC)においては、地域の連結性強化等による経済発展が重視されており、今後ヒト、モノ等の流れがより活発になってくることが予想される。
 新興国をはじめとするASEAN諸国からの制度整備支援要望が増加する中、土地・建設関連制度の整備普及を担うことができる人材育成を促進するため、29年9月、ASEAN諸国から政府職員を一堂に招へいし、関連制度の講義や現地視察を提供する「建設産業政策プログラム」を実施した。
 29年度においてASEAN各国との間で下記のような二国間の取組みを実施した。

・インドネシア
 平成29年7月にバスキ公共事業・国民住宅大臣等を招聘し、石井国土交通大臣がバスキ大臣と会談を行い、道路やダム再開発、下水道といった社会基盤整備に係る協力等について意見交換を行うとともに、両国間の関係をさらに強化していくことを確認した。
 同年10月、我が国中堅・中小建設企業の、技術の売り込みや現地関係者とのコネクション構築等を目的とした「日インドネシア技術連携セミナー」をバンドン工科大学と連携して開催した。
 同年11月、東京において「第8回日インドネシア交通次官級会合」を開催し、両国間の交通分野おける重要な協力案件である鉄道、港湾、航空分野等について、課題に対する解決策や今後の協力の方向性等の意見交換を行い、今後もインフラ建設等のハード面と制度構築・人材育成といったソフト面において両国間で緊密な協力・連携を図っていくことを確認したほか、ジャカルタにおいて「第10 回日本・インドネシア建設会議」を開催し、建設業の生産性向上の取組や今後の建設産業政策等について意見交換を行った。
 同年12月、ルフット海洋担当調整大臣が訪日し、石井国土交通大臣と会談を行った。会談では、来年は両国にとって国交樹立60周年の歴史的な年であり、両国の協力関係を更に強化していくことを確認した。また、ジャカルタにおいて、バスキ公共事業・国民住宅大臣も参加のもと「ダム再生・橋梁セミナー」を開催し、ダム再生や橋梁の老朽化・耐震化対策における日本からの提案内容等について説明を行い、インドネシア側関係者に広く共有した。
 30年1月には、東京において「第5回日インドネシア建設次官級会合」を公共事業・国民住宅省との間で開催し、全体会合で「ダム再生」、「トンネル技術」等のテーマについて、また、個別のワーキングでは、道路、住宅・建築、防災・水資源、下水道、建設の各分野について、両国における取組みや課題、技術等に関する情報交換を行ったほか、並行して日本企業の技術を紹介するポスターセッションを開催した。

・タイ
 平成29年5月、根本国土交通大臣政務官がタイに出張し、鉄道、交通安全、洪水対策、バス交通等の分野の政策課題について協議を行った。
 同年6月、ソムキット副首相、アーコム運輸大臣、アチャカ-科学技術大臣が訪日し、菅官房長官・石井大臣等出席の下、両国間の協力プロジェクトを推進するため第3回日タイハイレベル合同委員会を開催した。また、同委員会において石井大臣は、アーコム運輸大臣との間で鉄道分野の協力覚書を、アチャカ-科学技術大臣との間で電子基準点網構築に向けた協力覚書を締結した。
 同年12月、牧野国土交通副大臣がタイに出張し、主に鉄道・観光分野の発展等についてトップセールス及び政策協議を行った。さらに、バンコク〜チェンマイ間高速鉄道事業性調査の最終報告書をアーコム運輸大臣に手交し、日本の新幹線システム導入に向け、今後、タイ政府内で早期に事業承認がなされるよう働きかけを行った。
 30年2月、建設リサイクル制度の整備普及を促進するため、再生アスファルトに関するセミナーを開催し、我が国の関連制度及び技術の紹介を行った。

・ベトナム
 平成29年4月、石井大臣は訪日中のタン ホーチミン市共産党委員会書記と会談を行い、ホーチミン市における地下街開発、鉄道、道路等のインフラ整備について意見交換を行った。
 同月、石井大臣は訪日中のズン計画投資大臣と会談を行い、ベトナムにおける空港、地下街開発、鉄道、道路、港湾、自動車等の分野について意見交換を行った。
 同年6月、大野国土交通大臣政務官及び森技監は訪日中のドン交通運輸副大臣とそれぞれ会談を行い、ベトナムにおける港湾、航空等の分野並びに道路分野について意見交換を行った。また、赤坂迎賓館において、安倍総理及びベトナム・フック首相の立ち会いの下、「港湾施設の国家技術基準策定における協力に係る覚書」、また、ベトナム国内の高速道路を対象としたPPP事業の実現に向けてベトナム交通運輸省との間で「高速道路PPPプロジェクトに関する協力に係る覚書」に署名した。
 同年7月、奈良平国交審がベトナム・ハノイに出張し、日ベトナム交通次官級会合を開催した。同会合では、交通分野における両国の協力案件について、次官級による政策対話を行った。
 同年10月には、農業農村開発省との防災協働対話の一環として、ベトナムとの官民ワークショップを開催し、土砂災害分野において両国の防災協力の強化に官民協働で取り組んだ。
 同年11月、ベトナムでのネットワーク構築やベトナム進出に資する人材育成・確保の観点から、ベトナムの工科系大学生を対象とした合同就職説明会を開催した。
 同年12月、土地関連分野における両国間の協力関係を強化し、法制度の整備を支援するため、相互の知見・経験の共有や、ベトナムにおける我が国の土地評価に係る情報システムの導入に向けたパイロット事業の共同推進等を内容とする覚書を交換した。また、土地関連制度の整備・普及を支援するため、政策研究大学院大学と連携し、ベトナム政府職員への研修を実施した。
 同年12月、牧野国土交通副大臣がベトナムに出張し、日本の質の高い交通インフラシステムの導入が検討されている協力事業の進展や観光分野の交流促進等についてトップセールスを行った。
 30年1月、秋本国土交通大臣政務官がベトナムに出張し、日ベトナム交通運輸技術連携セミナーへ参加した。同セミナーでは、日本のインフラの導入を促進するため、日本の交通分野のソフトインフラ(技術・基準、運営、人材等)を紹介し、日本の「質の高いインフラ」について理解を深めた。
 同月、「第10回ベトナム高速道路セミナー」を開催し、ベトナムにおける道路PPP事業に関する提案を含む日本の取組みや、ベトナムにおける制度等について、意見交換を実施した。
 同年2月、建設リサイクル制度の整備普及を促進するため、再生アスファルトに関するセミナーを開催し、我が国の関連制度及び技術の紹介を行った。
 同年3月、建設省との間に締結している下水道分野に関する協力覚書(29年4月更新)に基づき下水道分野に関する第11回政府間会議を実施した。

・フィリピン
 平成29年11月、建設分野における関係性の強化等を目的として「第1回日本・フィリピン建設会議」を開催し、建設人材の育成に関する取組等について意見交換を行った。

・マレーシア・シンガポール
 平成29年4月、シンガポールにおいて「日シンガポール交通次官級会合」を開催した。本会合は、28年9月に行われた日シンガポール首脳会談において、陸、海、空の運輸・インフラ分野での今後の両国間における協力を強化するため関係省庁次官級協議を開催することで一致したことを受けて初めて開催されたもので、会合では各交通分野において現在の取組状況や今後の協力の方向性等に関する意見交換を行った。
 29年4月にシンガポール海事港湾庁との間で港湾分野における協力に関する覚書に署名を行った。覚書に基づき、同年8月に「シンガポール&日本港湾セミナー2017」を開催し、「LNGバンカリングに関する日・シンガポール共同調査」を開始した。
 同年5月と8月には、石井国土交通大臣がマレーシア・シンガポールを訪問し、両国政府要人と、鉄道、都市開発等のインフラ・交通分野における協力や観光分野における二国間での連携について意見交換を行った。また5月にマレーシアで、8月にはシンガポールで開催された高速鉄道シンポジウムに出席し、新幹線システムの導入がマレーシア・シンガポールの社会経済にもたらすメリット、人材育成・技術移転等の日本の協力の意義を訴えた。
 同年12月には、秋本国土交通大臣政務官がマレーシアを訪問し、デバマニ首相府副大臣とハミム天然資源・環境省副大臣と会談を行った。デバマニ副大臣との会談ではマレーシア・シンガポール高速鉄道計画に関するトップセールスを行うとともに、人材育成の実施等、引き続き両国において、新幹線システムが導入されるよう協力関係を深めていくことを確認し、ハミム副大臣との会談では、マレーシアは、日本同様に洪水被害が多く発生していることから、水防災分野に関する両国の課題解決に向けて協力を行うとともに、地理空間情報の高度な利用について、引き続き知見を共有していくことを確認した。

・ミャンマー
 平成29年7月、ヤンゴン市中心部における複合施設の建設・運営を行う都市開発事業につき、JOINが支援決定(国土交通大臣認可)した。
 同年10月、奈良平国交審がミャンマー・ネピドーに出張し、日ミャンマー交通次官級会合を開催した。同会合では、交通分野における両国の協力案件について政策対話を行った。
 同年11月、牧野副大臣は訪日中のチョウ・ミョー運輸通信副大臣と会談し、ミャンマーにおける鉄道、空港分野のプロジェクトや、ヤンゴンの交通渋滞・交通安全対策について意見交換を行った。
 同月、28年の両国間の住宅・都市分野に関する協力覚書を踏まえ、住宅金融に関わる支援を行い、円借款「住宅金融拡充事業」の事前通報が行われた。
 同年12月、石井国土交通大臣がミャンマー・ヤンゴンに出張し、第3回アジア・太平洋水サミットに出席した。オープニングセレモニーの他、水と災害、水循環、下水道に関する3つのテーマ別セッションでスピーチを行い、我が国の水問題に対処してきた経験を各国に伝え、日本の存在感を示すとともに、インフラシステム海外展開に貢献するため、水問題解決の我が国の技術をアピールした。
 30年1月、農業・畜産・灌漑省、運輸・通信省、社会福祉・救済復興省との間で防災協働対話を実施し、両国の防災政策に関する協力について意見交換を実施した。
 同年3月、建設分野に係る具体的且つ緊要性の高い問題について実務的な協議を行う「第3回日緬建設円卓会議」の開催を支援した。また、土地関連制度の整備・普及を支援するため、政策研究大学院大学と連携し、ミャンマー政府職員への研修を実施した。
 同年3月、「第5回日緬建設次官級会合」を開催し、道路、建設産業、都市開発、住宅に関する政策対話を行った。

・カンボジア
 平成29年5月、石井国土交通大臣がカンボジアを訪問し、道路、港湾、自動車、都市開発、下水道、観光交流等のインフラ・交通・観光分野の協力について、政府要人へのトップセールス・意見交換を行った。
 同年6月カンボジアからの要請に基づき平成28年に開始されたJICAによる国別研修「住宅政策」(3年計画)による本邦研修を行い、同年12月には現地セミナーが行われた。
 同年8月、カンボジアのフン・セン首相が訪日した際に、ゆりかもめを視察し、日本の新交通システムの技術についてトップセールスを行った。新交通システムに関しては、同年11月、公共事業運輸大臣が訪日した際に、横浜シーサイドラインを視察した。
 同年8月より、同年1月に国土整備・都市化・建設省と締結した協力覚書に基づき、4回に渡り専門家を派遣し、建設法案の起草支援を実施した。
 同年11月、スン・チャントール公共事業運輸大臣が訪日した際、石井国土交通大臣との大臣会談において、道路、港湾、自動車、都市開発、下水道等のトップセールスを行った。また、南部経済回廊の中心にあるカンボジア周辺の物流事業への日本企業の参画を促進するため、物流をテーマとした国際物流セミナーを開催した。

・ラオス
 平成29年4月、根本国土交通大臣政務官がラオスに出張し、航空、道路、建設産業、物流等の分野の政策課題について政府要人と政策協議を行った。また、我が国の支援により整備された気象水文システムの引渡式に列席した。
 同年7月、ブンチャン公共事業運輸大臣が訪日し、ラオスにおける航空、道路、建設分野のインフラ整備や人材育成について意見交換を行った。

2)南アジア
・インド
 平成29年9月の総理訪印に際し、ムンバイ〜アーメダバード間高速鉄道事業起工式典を開催し、第1回目となる円借款(1,000億円)に関する書簡の交換を行った。
 同年10月、「建築物免震・制震技術普及ワークショップ」の開催を支援し、免震・制震技術をはじめとする我が国の建築物耐震技術についての理解の促進を図った。
 同年11月に「第4回日印道路交流会議」を開催し、山岳地域における災害復旧・復興対策や橋梁技術、ITS施策、高速道路における休憩施設の展開等について、意見交換を実施した。
 また、同年12月には、「第10回都市開発に関する日印交流会議」を開催し、都市交通、都市開発、水環境分野における情報提供及び意見交換を実施した。また、インドの既設有料道路を管理・運営する企業の株式の一部を取得し、有料道路運営に参画する事業について、JOINが支援決定(国土交通大臣認可)した。
 さらに、同月、石井国土交通大臣はインドを訪問し、ゴヤル鉄道・石炭大臣をはじめとする政府要人等と会談し、高速鉄道等の鉄道案件、高速鉄道駅周辺の都市開発、道路等のインフラ・交通分野における協力について意見交換を行った。

・スリランカ
 平成29年12月、石井国土交通大臣はスリランカを訪問し、政府要人との水害・土砂災害対策、下水道整備、気象等の分野における協力について意見交換を実施した。
 平成30年2月、同国における不動産開発分野の協力関係の構築や同国における投資促進の諸課題について意見交換を行うことを目的に「日・スリランカ不動産開発セミナー」を開催した。

・バングラデシュ
 平成29年6月、PPP庁との間で、特定のPPPプロジェクトについて、我が国企業が競争入札を経ずに優先的に交渉権を得られるとする枠組を構築する覚書を締結し、同年8月、具体的なプロジェクトの形成に向け「日バングラデシュPPP協議会」を立ち上げるとともに、同年12月には、同国の関係省庁との間で「第1回日バングラデシュ・ジョイントPPPプラットフォーム会合」を開催した。

3)米国
 米国とは平成29年4月に立ち上げられた日米経済対話を通じて経済面での連携が進められており、日米協力の象徴的なプロジェクトであるテキサス高速鉄道の実現に向けた連携や高齢者の住まいに関する日米共同研究等、交通インフラ分野での取組は、日米経済対話全体の動きを牽引している。
 まず、同年6月、イタリア・カリアリで開催されたG7交通大臣会合の際に、石井国土交通大臣とチャオ運輸長官が交通インフラ分野での幅広い連携を強化することを確認し、10月には、国土交通省と米国運輸省との間で協力覚書に署名した。
 この覚書に基づく協力の第一歩として、平成30年1月、米国ワシントンD.Cにおいて「日米インフラフォーラム」を開催した。同フォーラムにおいては、石井国土交通大臣とチャオ運輸長官による基調講演のほか、PPPとインフラメンテナンスについてパネルディスカッションやセミナーを行い、両国の経験や最新の技術を共有した。日米の民間企業など120団体230名が参加し、国を超えたネットワークを構築する機会となった。

4)中東
・サウジアラビア
 平成29年7月にサウジアラビアのトワイジリ経済企画副大臣が訪日した際に、防災センターの視察を実施し、根本国土交通大臣政務官から国土交通省における防災の取組についてのトップセールスを行った。

・イスラエル
 平成29年10月、イスラエルのカッツ運輸・道路安全大臣が訪日した際、同国における公共交通インフラ整備への日本企業参入を促すべく、国土交通省、運輸・道路安全省との間で、交通分野における協力覚書を締結した。

・トルコ
 平成30年3月、日本企業とトルコ企業が連携した第三国への展開を支援するため、トルコ経済省と共同で「第4回 日本・トルコ建設産業会議」を開催し、両国企業が連携したアフリカ、中東、中央アジア等における事業展開に向けたビジネスマッチング等を実施した。

5)ロシア
 政府全体の方針である「ロシアの生活環境大国、産業・経済の革新のための協力プラン」に基づき、都市環境、交通インフラ分野での協力を進めているところであり、平成29年9月に開催された東方経済フォーラムにおいても、両首脳の間で「協力プラン」の具体化をさらに進めていくことで一致した。同国の都市環境分野では、8項目からなる「協力プラン」のうち、「快適・清潔で住みやすく、活動しやすい都市作り」の具体化に向け、「日露都市環境問題作業部会」を通じて協力を進めており、同年3月に第7回総括会合、8月に第8回総括会合を開催した。モデル都市であるヴォロネジ市では、都市開発のパイロット事業が完了し、ウラジオストク市では、我が国側でとりまとめた都市開発コンセプトを12月にロシア側に提示したところである。
 また、29年8月には日露運輸作業部会第4回次官級会合を開催し、鉄道・港湾・航空等の分野における意見交換を実施した。さらに、同年4月に第2回日露港湾当局間会合を、同年8月に第4回鉄道専門家会合を開催し、専門家間で意見交換を行った。

6)中央アジア
 平成27年10月の総理の中央アジア地域訪問のフォローアップとして、29年7月、ウズベキスタンにてセミナーを開催し、「質の高いインフラ」に資する日本企業の技術を紹介した。また、同年9月、東京にて「第2回日・キルギス官民インフラ会議」を開催し、牧野副大臣とオロゾべコフ・キルギス投資・輸出促進庁長官の間で、インフラ分野における協力関係を継続するための覚書を署名した。

7)中南米
 平成29年7月、田中国土交通副大臣は、メキシコ、ペルー、アルゼンチン及びブラジルを訪問し、各国政府や州の要人に対し、インフラ・交通分野のトップセールスを実施した。
 同年10月、コロンビア共和国のグティエレス・メデジン市長が訪日した際に、都市交通や都市開発の事例を視察し、高橋国土交通大臣政務官との面談により、日本の都市開発及び都市交通技術のセールスを実施した。
 30年1月、あきもと国土交通副大臣は、パナマ共和国とコロンビア共和国を訪問し、パナマでの海事政策対話への出席や、 コロンビア政府要人への鉄道、港湾分野におけるトップセールスを実施した。
 同年2月には、都市交通システムの海外展開を推進するため、メデジン市において「都市交通セミナー」を開催した。
 同年3月、秋本国土交通政務官は、ブラジル連邦共和国とペルー共和国を訪問し、ブラジルでは第8回世界水フォーラムに出席した。閣僚級会議では、水防災意識社会の重要性、水循環の取組等、世界の国々の持続可能な発展に貢献できる日本の取組を発信した。取りまとめられた閣僚宣言文においては、水循環の視点の重要性等が認識され、災害対策に対する十分な財源の確保等が盛り込まれた。また、ペルーでは都市交通分野におけるトップセールスを実施した。

8)アフリカ
 TICAD VIにあわせて平成28年8月にケニアにて開催した「日・アフリカ官民インフラ会議」において採択された閣僚宣言を踏まえて設立した「アフリカ・インフラ協議会」(JAIDA)を活用し、我が国の「質の高いインフラ」を支える技術や経験等についてアフリカ各国に対して積極的に情報発信をするとともに、相手国との官民双方の関係構築を促進した。
 29年度は、これまでアフリカ8カ国(ケニア、エチオピア、モザンビーク、タンザニア、コートジボワール、ナイジェリア、ウガンダ、ザンビア)で開催してきた「官民インフラ会議」(閣僚級)を新たにガーナ、マダガスカル、セネガルで開催するとともに、同会議で構築された良好な関係を継続し、関係者による定期的な意見交換の場となる「質の高いインフラ対話」(QID)を立ち上げることで相手国と合意した。
 さらに、東京にてウガンダと第2回「官民インフラ会議」、ザンビア、マダガスカルと「質の高いインフラ対話」(QID)を開催した。

9)中国
 平成29年6月、東京において、運輸分野における共通課題について日中間で討議する次官級政策対話「第9回日中運輸ハイレベル協議」を開催した。1)日中両国の自動運転等のスマート交通技術の開発状況、2)日中韓物流大臣会合で合意された行動計画の進捗状況や環境に配慮した物流の取組み、3)日中両国の都市間交通の総合発展の実現に向けた取組等について意見交換を行うとともに、今後も運輸分野における両国間の協力を進展させることで合意した。


テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む