第3節 国際標準化に向けた取組み

第3節 国際標準化に向けた取組み

(1)自動車基準・認証制度の国際化
 安全で環境性能の高い自動車を早期・安価に普及させるため、我が国は国連自動車基準調和世界フォーラム(WP29)等に積極的に参加し、安全・環境基準の国際調和を推進するとともに、その活動を通じ、高度な自動運転技術などの優れた日本の新技術を国際的に普及させていくこととしている。このような活動を推進するため、具体的には、1)日本の技術・基準の戦略的国際標準化、2)国際的な車両認証制度(IWVTA)の実現、3)アジア諸国の国際基準調和への参加促進、4)基準認証のグローバル化に対応する体制の整備、の4つの柱を着実に実施し、自動車基準認証制度の国際化を推進している。

(2)鉄道に関する国際標準化等の取組み
 欧州が欧州規格の国際標準化を積極的に推進する中、日本の優れた技術が国際規格から排除されると、鉄道システムの海外展開に当たって大きな障害となる可能性があるなど、鉄道分野における国際競争力へ大きな影響を与えることから、鉄道技術の国際標準化を推進することが重要である。このため、鉄道関係の国際規格を一元的に取り扱う組織である(公財)鉄道総合技術研究所「鉄道国際規格センター」において、鉄道の更なる安全と鉄道産業の一層の発展を図るべく、活動を行っている。
 このような取組みの結果、国際標準化機構(ISO)の鉄道分野専門委員会(TC269)において、個別規格の提案及び委員会の運営に貢献するなどの中心的な役割を担い、成果を上げている。引き続き、ISO/TC269や国際電気標準会議(IEC)の鉄道分野専門委員会(TC9)等の国際会議等における存在感を高め、鉄道技術の国際標準化の推進に取り組むこととしている。また、国内初の鉄道分野における国際規格の認証機関である(独)自動車技術総合機構交通安全環境研究所は、鉄道認証室設立以来、着実に認証実績を積み重ね、鉄道システムの海外展開に寄与している。

(3)船舶や船員に関する国際基準への取組み
 我が国は、海運の環境負荷軽減や安全性向上を目指すとともに、我が国の優れた省エネ技術等を普及するため、国際海事機関(IMO)におけるSOLAS条約注1、MARPOL条約注2、STCW条約注3等による基準の策定において議論を主導している。
 また、海上保安庁では、国際水路機関(IHO)傘下の作業部会での海図や水路書誌、航行警報の国際基準に関する議論に参画している。さらに、船舶交通の安全を確保するとともに、船舶の運航能率のより一層の増進を図るため、国際航路標識協会(IALA)e-Navigation委員会において新たな海上データ通信方式であるVDESの国際標準化に関する議論を主導している。

(4)土木・建築分野における基準及び認証制度の国際調和
 土木・建築・住宅分野において、外国建材の性能認定や評価機関の承認等の制度の運用や、JICA等による技術協力等を実施し、また、設計・施工技術のISO制定に参画するなど、土木・建築分野における基準及び認証制度の国際調和の推進に取り組んでいる。また、我が国の技術的蓄積を国際標準に反映するための対応と、国際標準の策定動向を考慮した国内の技術基準類の整備・改定等の双方について検討を進めている。

(5)高度道路交通システム(ITS)の国際標準化
 効率的なアプリケーションの開発、国際貢献、国内の関連産業の発展等を図るため、ISOや国際電気通信連合(ITU)等の国際標準化機関におけるITS技術の国際標準化を進めている。
 特にITSの国際標準化に関する専門委員会(ISO/TC204)に参画し、ETC2.0で収集したプローブ情報の活用等に関する標準化活動を行っている。また、国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)の下に設立された自動車運転分科会及び自動操舵専門家会議において、日本はそれぞれ共同議長を務め、高速道路での自動運転を可能とする自動操舵の基準を提案するなど、自動運転に関する国際基準の策定を主導している。

(6)地理情報の標準化
 地理空間情報を異なる地理情報システム(GIS)間で相互利用する際の互換性を確保することなどを目的として、ISOの地理情報に関する専門委員会(ISO/TC 211)における国際規格の策定に積極的に参画している。あわせて、国内の地理情報の標準化に取り組んでいる。

(7)技術者資格に関する海外との相互受入の取決め
 APECアーキテクト・プロジェクト、APECエンジニア・プロジェクトでは、一定の要件を満たすAPEC域内の建築設計資格者、構造技術者等に共通の称号を与えている。APECアーキテクト・プロジェクトでは、我が国は、オーストラリア、ニュージーランドとの二国間相互受入の取決めの締結、APECアーキテクト中央評議会への参加等を通じ、建築設計資格者の流動化を促進している。

(8)下水道分野
 我が国が強みを有する下水道技術の海外展開を促進するため、現在、「水の再利用」に関する専門委員会(ISO/TC282)、「汚泥の回収、再生利用、処理及び廃棄」に関する専門委員会(ISO/TC275)、「雨水管理」に関するワーキンググループ(ISO/TC224/WG11)等へ積極的・主導的に参画している。

(9)物流システムの国際標準化の推進
 コールドチェーンや宅配サービス等の我が国物流事業者が有する世界でも最高水準のサービスやノウハウ等を基に、我が国物流システムの規格化・国際標準化を推進し、アジア物流圏等における物流環境の改善に貢献するとともに、我が国物流事業者の国際競争力の強化を図っている。


注1 海上における人命の安全のための国際条約
注2 船舶による汚染の防止のための国際条約
注3 船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約


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