第1節 ICTの利活用による国土交通分野のイノベーションの推進

■1 ITSの推進

 最先端のICTを活用して人・道路・車を一体のシステムとして構築する高度道路交通システム(ITS)は、高度な道路利用、ドライバーや歩行者の安全性、輸送効率及び快適性の飛躍的向上の実現とともに、交通事故や渋滞、環境問題、エネルギー問題等の様々な社会問題の解決を図り、自動車産業、情報通信産業等の関連分野における新たな市場形成の創出につながっている。
 また、平成29年5月に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」並びに26年6月にIT総合戦略本部決定され、27年6月、28年5月及び29年5月に改定された「官民ITS構想・ロードマップ」に基づき、世界で最も安全で環境にやさしく経済的な道路交通社会の実現を目指し、交通安全対策・渋滞対策・災害対策等に有効となる道路交通情報の収集・配信に係る取組み等を積極的に推進している。

1)社会に浸透したITSとその効果
(ア)ETCの普及促進と効果
 ETCは、今や日本全国の高速道路及び多くの有料道路で利用可能であり、車載器の新規セットアップ累計台数は平成30年3月時点で約5,876万台、全国の高速道路での利用率は平成30年1月時点で約91.3%となっている。従来高速道路の渋滞原因の約3割を占めていた料金所渋滞はほぼ解消され、CO2排出削減等、環境負荷の軽減にも寄与している。さらに、ETC専用ICであるスマートICの導入や、ETC車両を対象とした料金割引等、ETCを活用した施策が実施されるとともに、有料道路以外においても駐車場での決済やフェリー乗船手続等への応用利用も可能となるなど、ETCを活用したサービスは広がりと多様化を見せている。

(イ)道路交通情報提供の充実と効果
 走行経路案内の高度化を目指した道路交通情報通信システム(VICS)対応の車載器は、平成29年12月末現在で約5,770万台が出荷されている。VICSにより旅行時間や渋滞状況、交通規制等の道路交通情報がリアルタイムに提供されることで、ドライバーの利便性が向上し、走行燃費の改善が CO2排出削減等の環境負荷の軽減に寄与している。

2)新たなITSサービスの技術開発・普及
(ア)ETC2.0の普及と活用
 平成27年8月より本格的に車載器の販売が開始されたETC2.0は、30年3月時点で約261万台がセットアップされている。ETC2.0では、全国の高速道路上に設置された約1,700ヶ所のETC2.0路側機を活用し、渋滞回避支援や安全運転支援等の情報提供の高度化を図り、交通の円滑化と安全に向けた取組を進めている。また、収集した速度や利用経路、急ブレーキのデータなど、多種多様できめ細かいビッグデータを活用して、ピンポイント渋滞対策や交通事故対策、生産性の高い賢い物流管理など、道路を賢く使う取組みを推進している。
 
図表II-10-1-1 ETC2.0による広域的な渋滞情報の提供等
図表II-10-1-1 ETC2.0による広域的な渋滞情報の提供等

(イ)先進安全自動車(ASV)プロジェクトの推進
 先進安全自動車(ASV)推進計画に基づき、先進技術を利用してドライバーの安全運転を支援する先進安全自動車(ASV)の開発・実用化・普及に取り組んでいる。平成29年度は、路肩退避型等発展型ドライバー異常時対応システムをはじめとする技術や実用化されたASV技術の開発促進等について検討を行った。
 
図表II-10-1-2 通信利用型安全運転支援システムのイメージ(先進安全自動車(ASV))
図表II-10-1-2 通信利用型安全運転支援システムのイメージ(先進安全自動車(ASV))


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