第1節 ICTの利活用による国土交通分野のイノベーションの推進

■8 ビッグデータの活用

(1)ビッグデータの活用による交通計画等策定支援
 人口減少や少子高齢化等により、特に地方において、路線バス事業の経営状況が悪化し、公共交通ネットワークの縮小やサービス水準の一層の低下が懸念されている。路線バス事業の経営を安定させ、持続可能な地域公共交通ネットワークを再構築することが喫緊の課題であり、多くの地域で事業者による経営改善と自治体による公共交通の再編計画が検討されている。
 このような状況を受け、平成29年度においては、27年度に実施した「ビッグデータの活用等による地方路線バス事業の経営革新支援調査」により策定した、ビッグデータ等を活用してバス事業の経営分析を行い、バス路線・ダイヤの再編や経営改善策を計画し、経営革新を図るための支援策としての「地方路線バス事業の経営革新ビジネスモデル実施マニュアル」及び「データ収集・分析ツール」について、28年度に引き続き一般への提供を行うとともに、当該ツールについては、新たなビッグデータ(人口流動統計)を活用したモデル地域におけるバス事業の経営分析等の試行を行った上で、発展・高度化を図ったところである。
 30年度においては、当該ツールの普及に向けた取組みを行っていく。

(2)自動車関連情報の利活用
 平成27年1月に策定した「自動車関連情報の利活用に関する将来ビジョン」に基づき、自動車の履歴情報を収集・活用したトレーサビリティ・サービスの実現に向けて、これまでに整理した車両履歴情報の収集・管理・提供の枠組みをベースに、自動車整備時及び中古車販売時の情報収集・活用方法等について実証実験を行った。引き続き実証実験の結果を踏まえ、自動車保有関連手続きの効率化の観点から検討を行っている自動車検査証の電子化と併せ、自動車関連情報の利活用を推進していくための環境整備を進めていく。

(3)IT・ビッグデータを活用した地域道路経済戦略の推進
 地域経済・社会における課題を柔軟かつ強力に解決し、成長を支えていくため、ICTやビッグデータを最大限に利活用した地域道路経済戦略を推進している。
 ETC2.0が平成27年8月に本格導入され、道路交通の速度等のビッグデータを収集する体制が構築されており、その他交通や経済等のビッグデータも、情報流通量がこの9年間で9倍に拡大している。こういった中、地域の交通課題の解消に向けて、27年12月より、全国10箇地域に学官連携で地域道路経済戦略研究会が設立され、各地域での課題を踏まえたETC2.0を含む多様なビッグデータを活用した道路政策や社会実験の実施について検討を進めている。
 例えば、急増する訪日外国人観光客のレンタカー利用による事故を防止するため、外国人レンタカー利用の多い空港周辺から出発するレンタカーを対象に、ETC2.0の急ブレーキデータ等を活用して、外国人特有の事故危険箇所を特定し、多言語注意喚起看板の設置や多言語対応のパンフレットでの注意喚起等のピンポイント事故対策に取り組んでいる。

(4)交通関連ビッグデータを活用した新たなまちづくり
 交通関連ビッグデータ等から得られる個人単位の行動データをもとに、人の動きをシミュレーションし、施策実施の効果を予測した上で、施設配置や空間形成、交通施策を検討する計画手法「スマート・プランニング」の開発を進めている。
 平成29年度は、複数都市での検証を通じ高度なシステムへ改良を進め、評価できる施策や評価指標の充実を図った。また、土木学会のもとに設置された「スマート・プランニング研究小委員会」と連携し、学識者、地方公共団体、コンサルタント、ビッグデータ販売会社等を対象として、28年度に作成した「スマート・プランニング実践の手引き(案)」の内容に関するセミナーを開催する等、分析手法の普及に取り組んでいる。


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