■2 我が国のライフスタイルの動向  本節では、前述した社会経済の現状を踏まえつつ、1)60代以上、2)30代から50代、3)18歳以上30歳未満を中心とした世代をそれぞれ1)「高齢者」、2)「現役世代」、3)「若者」とし、それぞれのライフスタイルの特徴を分析する。 (1)高齢者のライフスタイルの特徴 (高齢者の長寿命化と意欲の高まり)  我が国の平均寿命は、戦後、生活環境の改善や、医学の進歩により急速に伸び、2016年の平均寿命は、男性80.98年、女性87.14年と世界トップクラスの長寿国となっている。さらに、「健康寿命」(注8)については、2001年時点では男性69.40年、女性72.65年であったものの、2016年時点では、男性72.14年、女性74.79年となっており、伸びてきていることがわかる。  また、スポーツ庁「体力・運動能力調査」(注9)によると、10〜20年前と比較して握力が落ちる等加齢に伴う身体機能の低下が5〜10年遅くなっており、身体機能の「若返」現象がみられる(図表1-1-21)。 図表1-1-21 高齢者の体力・運動能力調査結果(合計点)の推移  このような中、高齢者のグループ活動への参加は大きく増加している(図表1-1-22)など、高齢者の社会貢献活動等への参加意欲は高まっている。 図表1-1-22 高齢者のグループ活動への参加状況 (高齢者活躍の場の創出の必要性)  このように高齢者の意欲の高まりが見られる一方で、退職後における自宅以外の居場所についての調査によれば、「見つからない/特にない」との回答が全体の約2割であり、「図書館」との回答は約3割となっている(図表1-1-23)。このような結果からは、高齢者の意欲を十分活かしきれていない現状があることがうかがえる。 図表1-1-23 退職後における首都圏在住高齢者の自宅以外の居場所についての調査(複数回答/「その他」を除く上位9項目)  このような中、地域活動・ボランティア活動等社会貢献活動(注10)に参加している高齢者は、友人やつながりができていること等から(図表1-1-24)、高齢者の意欲を活かす場の1つとなりうるものと考えられる。 図表1-1-24 高齢者が社会参加していて良かったこと (2)現役世代のライフスタイルの特徴 (変わらない現役世代のライフスタイル)  労働者全体の労働時間は減少している一方で、緩やかな景気回復の中での人手不足等の影響により、一般労働者(パートタイム労働者を除く)の残業時間は増加している(図表1-1-25)。さらに、前述したとおり、有給休暇取得の消化率は世界最下位となっている。 図表1-1-25 一般労働者の月間実総労働時間の推移  我が国において、仕事を持つ20〜54歳の既婚男性が家事・育児に費やす時間の平均は平日で1時間以内と少ない(図表1-1-26)。また、6歳未満の子供を持つ夫の家事・育児に費やす時間は欧州主要国と比べて半分程度となっている(図表1-1-27)。  このような中、近年、男性の育児休業者の割合が高まるなど、我が国においても男性の働き方を見直す動きは見られるものの、依然として長時間労働は存在しており、家庭に貢献する時間は短いと考えられる。 図表1-1-26 属性別の労働・家事・余暇時間 図表1-1-27 6歳未満の子供を持つ夫の家事・育児関連時間(1日当たり、国際比較)  このような状況の下、我が国の既婚女性の労働力率は、前述したように、過去に比べて改善しているものの、依然として未婚女性と比べて低い状況が続いている(図表1-1-28)。 図表1-1-28 配偶関係・年齢階級別女性の労働力率の推移  また、女性の就業希望者は、2016年時点で、約274万人であり、求職していない理由としては、「出産・育児のため」が最も多く、33.0%となっている(図表1-1-29)。 図表1-1-29 女性の就業希望者の内訳(平成28年) (3)若者のライフスタイルの特徴 (若者とインターネット)  若者とインターネットの関係について、消費者庁「消費者意識基本調査」(2016年度)によれば、「携帯電話やスマートフォンは自分の生活になくてはならない」と考えている割合は、10代後半では82.4%、20代前半では83.2%、20代後半では85.6%に上る(図表1-1-30)。 図表1-1-30 携帯電話やスマートフォンを生活の必需品と考える割合 (つながりや居場所を求める若者)  若者の居場所の数と生活の充実度について、内閣府「平成29年版子供・若者白書」によれば、若者は、インターネットを含めた自分の居場所(注11)の数が多いほど生活の充実度が高いと感じる(図表1-1-31)。また、他者と関わる際のインターネットの利用について、同白書によれば、インターネットは「自分や相手の気持ちが伝わりづらい」、「自分の情報が悪用されそうで心配だ」等と感じる若者も多く、若者は、インターネットによる他者とのコミュニケーションの質について物足りなさや不安を感じている様子がうかがえるとされている(図表1-1-32)。  このことにより、若者は、インターネット以外の居場所も求めているのではないかと考えられる。 図表1-1-31 居場所の数と生活の充実度 図表1-1-32 他者と関わる際のインターネットの利用について  また、地元の大学に進学するなど、地元に残りたいと考える若者の割合は、他世代に比べると高い(図表1-1-33)。この理由の1つとして、地元に長年住んできたことによって、培われた「つながり」があることが考えられる。 図表1-1-33 各世代の地域移動  さらに、消費者庁「消費者意識基本調査」(2016年度)によると、「スポーツ観戦・映画・コンサート鑑賞」について、お金を掛けていると回答した人の割合は、24歳までの層で高くなっている(図表1-1-34)。さらに、同調査の「交際(飲食を含む)」について、お金を掛けていると回答した人の割合は、20代で45.2%と全体平均の29.0%を大きく上回っている(図表1-1-35)。このことから、若者は「コト消費」に関心が強く、人とのつながりを重視していると考えられる。 図表1-1-34 スポーツ観戦・映画・コンサート鑑賞にお金を掛けている人の割合 図表1-1-35 交際(飲食を含む)にお金を掛けている人の割合 注8 日常生活に制限のない期間の平均(第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料より)。 注9 握力・上体起こし・長座体前屈・開眼片足立ち・10m障害物歩行・6分間歩行の6種目を行い、その合計点で体力・運動能力を測定している。 注10 ここでいう地域活動・ボランティア活動等社会貢献活動とは、地域社会や他人のために、報酬を得ることを目的とせず、自発的に行う活動全般で有り、具体例としては、地域の美化・緑化、災害支援、自然保護、伝統文化の伝承、障害者・高齢者等の生活支援等多岐にわたるものである。 注11 ここでは、「居場所」を1)自分の部屋、2)家庭、3)学校、4)職場、5)地域、6)インターネット空間としている。