■1 地域・住まいの快適化に対応する取組み (都市機能や公共交通、コミュニティの維持等に関する取組み) ■コンパクト・プラス・ネットワーク  今後、我が国において、人口が減少していく一方で、人口密度が低い市街地が拡大していけば、医療、商業等の生活サービス施設や公共交通を維持することが困難となり、徒歩又は公共交通により日常生活を営むことが難しくなるおそれがある。  これに対して、国土交通省では、「コンパクト・プラス・ネットワーク」を推進している。この取組みは、拠点エリアへ医療や商業等の都市機能と居住等を集約・誘導し、コンパクトなまちを目指すとともに、まちづくりと連携した公共交通ネットワークの再構築等を行うものである。このことにより、生活利便性の維持・向上や、地域経済の活性化、行政コストの削減、地球環境への負荷の低減等が期待される(図表3-3-1)。 図表3-3-1 コンパクト・プラス・ネットワーク ■小さな拠点  人口減少や高齢化が進む過疎地域の集落などにおいては、商店や診療所等日常生活に必要なサービスの喪失等により暮らしを続けていくことが危ぶまれる状況となっている。今後、このような動きが全国各地で一層拡大していくことが懸念されている。  このような中、国土交通省では、「小さな拠点」づくりを推進している。この取組みは、小学校区など複数の集落が集まる地域において、商店や診療所等の生活サービスや地域活動を徒歩圏内に集約し、その集落と他の集落をコミュニティバス等で結ぶことにより、新しい生活圏をつくり、集落地域の再生を目指すものである(図表3-3-2)。 図表3-3-2 小さな拠点のイメージ (高齢者等が安心して生活できる住まいの整備に関する取組み) ■サービス付き高齢者向け住宅の普及促進  高齢化が急速に進む中で、高齢の単身者や夫婦のみの世帯が増加しており、住宅において、介護・医療と連携して高齢者を支援するサービスを提供することがますます重要となってきている。  これを受けて、国土交通省では、厚生労働省とともに、バリアフリー構造等を有し、安否確認サービス等高齢者を支援するサービスを提供する、「サービス付き高齢者向け住宅」に対して、財政的な支援を行うなど、その普及を促進している(図表3-3-3)。 図表3-3-3 サービス付き高齢者向け住宅 ■住宅セーフティネット制度  高齢者等を含む住宅確保要配慮者(注21)にとって、安心して暮らせる住宅の確保は重要である。  これを受け、国土交通省は、「住宅セーフティネット制度」を創設している。同制度は、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅について、1)賃貸人による地方公共団体に対する登録、2)登録住宅の改修等に対する賃貸人への経済的支援、3)住宅確保要配慮者の居住に対する経済的支援等からなっている(図表3-3-4)。 図表3-3-4 住宅セーフティネット制度の全体像 (子育て世代等のワークライフバランスを支える取組み) ■子育て・介護支援のための三世帯近居の推進  急速に進展する少子高齢化と都心への一極集中に伴い、都市部では待機児童の発生、郊外部では介護の担い手不足等の問題が生じている。このような中、親世代と子世代が車や電車で1時間以内の距離に居住する「近居」は、核家族同士をゆるやかに結びつけ、子育て世帯や高齢者世帯の諸問題の解決につながるものと考えられる。  これを受け、独立行政法人都市再生機構(UR)は、「近居」を推進するため、家賃割引制度を設けている。具体的には、子育て世帯や高齢者世帯等の支援を必要とする世帯と、それを支援する世帯との2世帯が、1)UR賃貸住宅同士で近居をはじめた場合に、新しく入居する世帯の家賃を割り引く「近居割」、2)UR賃貸住宅とそれ以外の住宅で近居をはじめた場合に、新しくUR賃貸住宅に入居する世帯の家賃を割り引く「近居割WIDE」を実施している(図表3-3-5)。 図表3-3-5 近居割・近居割WIDEのイメージ ■長期優良住宅化リフォーム推進事業  質の高い既存住宅の形成や子育てしやすい環境の整備を図るためには、既存住宅の長寿命化や三世代同居等複数世帯の同居の実現に資するリフォームが重要である。  これを受けて、国土交通省では、耐震性等性能の向上に資するリフォーム工事や、三世代同居に対応する改修工事を行う事業者等に対して支援を行うことにより、「長期優良住宅」へのリフォームを推進している(図表3-3-6)。 図表3-3-6 長期優良住宅化リフォーム推進事業 注21 低額所得者、高齢者、障害者、ひとり親・多子世帯等の子育て世帯、生活保護受給者、外国人、ホームレス等。