第I部 進行する地球温暖化とわたしたちのくらし〜地球温暖化対策に向けた国土交通行政の展開〜 

2 渇水リスクの増大

(1)渇水頻度の増加
 水はわたしたちのくらしに不可欠であるが、近年、特に、西日本を中心に渇水が増加している。例えば、平成17年夏には、記録的少雨の結果、四国四県に水を送っている早明浦ダムの利水可能な貯水量がほぼ0%にまで減少するなど、84日間にわたり取水制限が行われた。
 
早明浦ダム(高知県)の渇水状況

早明浦ダム(高知県)の渇水状況

 大雨の頻度が増加している一方で渇水の頻度も増加しているのは、年ごとの降水量の変動が大きくなっているためである。過去の我が国の降水量の変化を見ると、降水量の多い年と少ない年の差が広がる傾向にある。
 
図表I-1-2-8 年降水量の推移(1900〜2006年)

図表I-1-2-8 年降水量の推移(1900〜2006年)
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(2)降水パターンの変化による将来の渇水リスクの増大等
 地球温暖化に伴い、年ごとの降水量の変動幅は引き続き増加すると予測されているため、洪水とともに渇水のリスクがさらに高まることが懸念される。また、水の供給量は降水量の年ごとの変動だけではなく、季節ごとの変動にも影響を受ける可能性がある。温暖化に伴い、特に日本海側において降雪量が減少すると予測されており、融雪量と降雨量を合わせた地表到達水量は特に春季で減少し、河川流出量が減少すると見込まれる。また、雪解けが早まることにより満水状態にあるダムに融雪水が流入すると、貯留できずに有効利用できない水資源が増える可能性がある一方で、春以降、少雨となった場合には、ダムが枯渇する可能性がある。
 気温の上昇と相まったこのような渇水リスクの増大は、我が国の食料生産や土地利用のあり方に大きな影響を与える可能性がある。また、渇水とともに地球温暖化に伴い、湖沼等の閉鎖性水域の水温上昇等による水質の悪化も懸念される。
 
図表I-1-2-9 一級水系における現行(1979〜1998年)と将来(2080〜2099年)の地表到達水量の比較 春期(3〜6月)

図表I-1-2-9 一級水系における現行(1979〜1998年)と将来(2080〜2099年)の地表到達水量の比較 春期(3〜6月)

 

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