第I部 進行する地球温暖化とわたしたちのくらし〜地球温暖化対策に向けた国土交通行政の展開〜 

1 国際航空からの二酸化炭素排出削減に向けた課題

(1)国際航空からの二酸化炭素排出量の推移
 世界全体の国際航空からのCO2排出量は世界全体の国内航空からのCO2排出量よりも多く、約4億トンである。これは、フランス一国におけるCO2排出量と同程度であり、大きな排出源となっている。また、国際航空からのCO2排出量は国内航空以上に伸びてきており、1990年(平成2年)から2004年(平成16年)までに約35%増加した。
 
図表I-2-1-37 世界全体の国際航空及び国内航空からのCO2排出量の推移

図表I-2-1-37 世界全体の国際航空及び国内航空からのCO2排出量の推移
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図表I-2-1-38 世界全体の国際航空(旅客)の輸送量の推移・予測

図表I-2-1-38 世界全体の国際航空(旅客)の輸送量の推移・予測
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 このような国際航空からのCO2排出量の増加は、輸送量が増加してきたことによるものである。機体の燃費改善等も進められており、IPCCによると1960年(昭和35年)から2000年(平成12年)の40年間で約70%の燃費が改善された。しかし、それ以上に輸送量が増加しているため、CO2排出量は増加する結果となっている。
 今後も、燃費の改善は続くと考えられるが、その一方で、ICAOによると国際航空の輸送量は年5〜7%程度と急激な伸びで増え続けるものと予測されており、その結果、国際航空からのCO2排出量は増加し続けることが予想されている。

(2)国際航空の地域別の状況と国際的な議論の状況
 地域別に国際航空からのCO2排出量の推移を見ると、EUの伸びが著しく、1990年(平成2年)から2004年(平成16年)までに約80%増加している。
 このような状況を受けて、EUでは、域内航空のみならず域外航空もEUの排出権取引制度の対象とすることが検討されている。EU域内の空港を発着する航空機(EU域外の航空会社も含む)を対象としてCO2の排出権規制を課し、排出量が上限を超える航空会社に対してEUの排出権取引市場での排出権購入を求めるものである。
 一方、東アジアにおいても、急速な経済発展を受けてCO2排出量が大幅に増加している。1990年(平成2年)から2004年(平成16年)までに東アジアでは2倍以上増加しており、国際航空からのCO2排出量削減を議論する際には、急速に排出量が増加している東アジア等も含め世界的に議論する必要がある。
 
図表I-2-1-39 国際航空からのCO2排出量の推移(地域別)

図表I-2-1-39 国際航空からのCO<sub>2</sub>排出量の推移(地域別)
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 このような状況下で、ICAOでも議論が行われており、2007年(平成19年)の第36次ICAO総会において決議がなされた。その中で、国際航空分野の総合的な温暖化対策(航空機の技術革新、運航の効率化策、航空交通管理の改善策、経済的手法等から構成)やエネルギー消費効率ベースでのグローバル目標等を含むICAO行動計画を2009年(平成21年)末を目途に策定することなどが決議された。
 このように、国際航空の分野においても地球温暖化問題に係る取組みの重要性が高まっている状況において、我が国も国際航空に係る総合的な温暖化対策について検討し、ICAO等の国際的議論に適切に対処する必要がある。

 

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