第II部 国土交通行政の動向 

2 運輸部門における対策

 我が国全体のCO2排出量の約2割を占める運輸部門は、自動車に起因するものが排出量の約9割を占めている。特に、平成17年のCO2排出状況を2年の排出状況と比べると、自家用乗用車からの排出量は、走行距離・車両の増加等により45%増と大幅に増加している。

(1)自動車単体対策及び走行形態の環境配慮化
1)自動車の燃費改善
 自動車の燃費改善を促進するため、「エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法)」に基づくトップランナー方式(注1)の燃費基準の策定や燃費の公表等を行っている。この結果、平成17年度に出荷したガソリン乗用車の約8割が22年度を目標年度とした燃費基準を達成し、平均燃費値は7年度と比較し約23%向上したが、更なるCO2の削減に資するため、19年7月に新燃費基準の策定を行った。
2)排出ガス低減・燃費性能の向上を促す仕組み
 最新の排出ガス基準値より有害物質を低減する自動車は、低減レベルに応じ低排出ガス車認定制度を実施している。また、一般消費者が低燃費車を容易に識別・選択できるよう当該車の普及促進を目的とした自動車燃費性能評価・公表制度を実施している。なお、低排出ガス認定レベルや燃費性能の表示は、該当車に、「平成22年度燃費基準達成車」等のステッカーを貼付している。
3)自動車グリーン税制
 環境負荷の小さい自動車の普及を促進するため、上述の措置に合わせ、税収中立を前提に排出ガス低減や燃費性能に優れた自動車に対し自動車税の税率を軽減する一方で新車新規登録から一定年数以上を経過した自動車に対し税率を重くする自動車税のグリーン化や、低公害車等を取得した場合の自動車取得税の特例措置を講じている。この取組みと、自動車メーカーの技術開発や商品販売努力、一般消費者の環境への関心の高まり等が相まって、平成19年度上半期における自動車税のグリーン化の対象(☆☆☆☆かつ燃費基準+20%達成車等)は、新車新規登録台数の約71万台(約46%)を占めている。なお、20年度税制改正では、自動車税のグリーン化、低燃費かつ低排出ガス車に係る自動車取得税の特例措置及びディーゼルトラック・バス等に係る自動車取得税の特例措置について、優遇対象をより環境負荷の小さい自動車に重点化することとしている。また、21年10月に導入されるポスト新長期規制に適合し、ガソリン車に比べ燃費が約2割程度優れているクリーンディーゼル乗用車の自動車取得税を軽減する特例措置を講じることとしている。
4)次世代低公害車等の開発
 大型ディーゼル車に代替する、抜本的に環境性能を高めたジメチルエーテル(DME)自動車等は、平成19年度より実使用条件下で実証モデル事業を実施し、実用性の向上を図っている。また、従来の自動車よりエネルギー効率が格段に高く、静粛性に優れ、大気汚染物質の排出もゼロである燃料電池自動車は、国連自動車基準調和フォーラム(WP29)の世界統一基準の策定作業に積極的に参加し、早期策定に向けて貢献している。さらに、有効な地球温暖化対策として利用・普及が期待されるバイオディーゼル燃料は、環境・安全面を満たす車両側対応技術を明確化し、対応車の開発・普及のための環境を整備している。
5)エコドライブの普及・推進
 関係省庁で策定した「エコドライブ普及・推進アクションプラン」に沿って、平成19年度も引き続き、11月をエコドライブ推進月間とした積極的な広報を行うなど、普及・推進を図っている。また、自動車運送事業者等へエコドライブ管理システム(EMS)(注2)用機器の全面導入を支援するEMS普及事業を実施している。

(2)交通流の円滑化
 CO2排出量の削減目標の確実な達成に向け、環状道路等の幹線道路ネットワークの整備、交差点の立体化等のボトルネックの解消等のハード施策、エコドライブ等国民と連携した取組みを推進するエコロード・キャンペーン等のソフト施策を実施している。

(3)物流分野における環境施策の推進
 国内物流の輸送機関分担率(輸送トンキロベース)は自動車が最大で、50%を超えている。トラックのCO2排出原単位(注3)は、大量輸送機関の鉄道、内航海運より大きく、貨物と旅客をあわせた運輸部門におけるCO2排出割合は、鉄道、内航海運が全体の7〜8%に対し、トラックは営業用・自家用ともにそれぞれ15%を超えている。国内物流を支え、CO2の排出を抑制するために、トラック単体の低燃費化や輸送効率の向上と併せ、トラックの自営転換を含め、鉄道、内航海運等のエネルギー消費効率の良い輸送機関の活用を図ることが必要である。鉄道は、輸送需要の多い東京・福岡間について、平成18年度完成の山陽線の輸送力増強に引き続き、北九州・福岡間の輸送力増強事業を実施しており、鉄道の利便性向上等に取り組んでいる。また、海上分野は、内航海運における複合一貫輸送への対応を引き続き行うほか、「海上輸送モーダルシフト推進検討会」を18年10月に設置し、港湾関連施設の整備や長距離フェリー、RORO船等に係る各社の航路別基本情報等を国及び関係業界のHPに掲載し、荷主へのPR等に取り組んでいる。加えて、国際海上コンテナターミナルや、多目的国際ターミナルを整備することで、国際貨物の陸上輸送距離の削減を図っている。
 国土交通省は、経済産業省、物流団体、荷主団体等の広範な参加を得て、グリーン物流パートナーシップ会議を開催し、物流事業者と荷主企業の連携の強化による物流のグリーン化等を推進している。
 19年度においても引き続き、物流事業者と荷主企業のパートナーシップにより実施するCO2排出削減に向けたプロジェクトに対し支援を行う(同年度末で163件)とともに、特に優れたプロジェクトに対しては大臣表彰等によりそのPRを図っている。
 
図表II-7-1-2 グリーン物流パートナーシップ会議を通じた取組みの推進

図表II-7-1-2 グリーン物流パートナーシップ会議を通じた取組みの推進

(4)公共交通機関の利用促進
 自家用乗用車から公共交通機関へのシフトは、自動車の走行量の削減になり、地球温暖化対策の面からも推進が求められている。このため、ICカードの導入等情報化の推進や乗継ぎの改善等による公共交通利便性向上、公共交通利用推進等マネジメント協議会を通じた需要サイドの取組みの促進、省エネ効果の高い先進性・モデル性・政策性のある取組みへ支援等を行っている。さらに、「環境的に持続可能な交通(EST)モデル事業」により地域の取組みへの支援を行うとともに、これまでの知見をもとに、より効果の高い支援のあり方を検討していく。
 
図表II-7-1-3 公共交通利用推進等マネジメント協議会

図表II-7-1-3 公共交通利用推進等マネジメント協議会
 
図表II-7-1-4 環境的に持続可能な交通(EST)モデル事業

図表II-7-1-4 環境的に持続可能な交通(EST)モデル事業

(5)国民・民間事業者による取組みの促進
 地球温暖化対策を実行するためには、国民各界各層の理解と行動が不可欠である。環境問題への取組みに関し、中小規模の事業者が事業活動を行いつつ環境に配慮した取組みを自主的に推進できるよう、国土交通省は、自動車、海運、倉庫及び港湾運送の事業ごとのグリーン経営推進マニュアルに基づき事業者が実施する環境に配慮した経営(グリーン経営)の普及を促進している。
 さらに、鉄道貨物輸送を活用し、地球環境問題に積極的に取り組んでいる商品・企業を表示する「エコレールマーク」の普及・推進に取り組んでいる(平成20年3月末現在、商品20件、取組企業40件を認定)。
 また、エネルギー起源のCO2排出量の更なる抑制等を目的として18年4月に改正された「エネルギー使用の合理化に関する法律(以下「省エネ法」という)」に基づき、特定輸送事業者及び特定荷主より定期報告書等の提出が開始された。今後は、提出された定期報告書等を活用し、運輸分野の省エネに向けた更なる取組みを促進していく。
 
図表II-7-1-5 「省エネ法」に基づく運輸分野の対策

図表II-7-1-5 「省エネ法」に基づく運輸分野の対策


(注1)現在商品化されている製品のうち、燃費が最も優れているものの性能、技術開発の将来の見通し等を勘案して基準を定める方式
(注2)自動車の運行において計画的かつ継続的なエコドライブの実施とその評価及び指導を一体的に行う取組み
(注3)貨物1トンを1km輸送するときに排出されるCO2の量

 

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