平成2年度 運輸白書

第1章 平成元年度の運輸の概況と最近の動向

第1章 平成元年度の運輸の概況と最近の動向

第1節 一般経済の動向と運輸活動

    1 旅客輸送の動向
    2 貨物輸送の動向
    3 輸送指数の動向
    4 輸送関連の動向
    5 最近の輸送動向(2年4月〜8月の実績)
    6 青函トンネル、瀬戸大橋開通後の動き


1 旅客輸送の動向
(1) 国内輸送
(ア) 概況
 (高い伸びを示した国内旅客輸送)
 平成元年度の国内旅客輸送量は、総輸送人員773億人、対前年度比(以下同じ。)5.6%増、総輸送人キロ1兆2,670億人キロ、6.4%増と前年度に引き続き大きく増加した。こうした中にあって、乗合バスの輸送人員及び営業用乗用車の輸送人員と輸送人キロについては低調に推移し、対前年度比で減少をみた〔2−1−1表〕
 元年度の旅客輸送の特徴としては、63年度に高い伸びを示したJRの伸びが落ち着いたこと、自家用乗用車による輸送の著しい増加が続いていること、航空輸送は幹線、ローカル線ともに大きく伸びたこと等があげられる〔2−1−2図〕
 こうした全般的に好調な旅客輸送の伸びは、基本的には個人消費や民間設備投資をはじめとした内需の好調に支えられたものと考えられる。
 元年度の消費動向をみると、実質民間最終消費支出は、3.2%増と、63年度の伸び(5.0%増)を下回ったものの堅調な増加を示した。また、家計調査による実質家計消費支出も0.2%増で、63年度の伸び(2.7%増)を下回っている。家計消費支出のうち、交通費(公共輸送機関関係)は4.2%減と63年度の伸び(6.6%増)に比べ大きく減少する一方、自動車等関係費(自家用車関係)は63年度の4.8%増を上回る5.4%増の高い伸びを示しており、消費税の導入等による買い急ぎや買い控えによる影響がうかがわれる〔2−1−3図〕
(イ) 輸送機関別の輸送動向
 (JR(旅客会社)は、堅調に推移)
 JR(旅客会社)は6社合計で、輸送人員2.7%増、輸送人キロ2.3%増となり、63年度が青函トンネル、瀬戸大橋の開通等も反映して高い伸び(それぞれ5.5%増、6.3%増)であったことに比べると鈍化したもののいずれも国鉄時代から引き続き7年連続の増加となり、堅調に推移している。このうち、定期旅客は、輸送人員が3.3%増、輸送人キロが3.8%増と好調を続けており、好景気に伴う就業者の増加を反映している。特に新幹線は輸送人員が34.1%増、輸送人キロが35.4%増と前年を大きく上回ったが、これは税制改正により通勤手当の非課税限度額が引き上げられたこと等から郊外の新幹線停車駅からの通勤旅客が増加している等によるものと思われる。また、定期外旅客については、輸送人員1.8%増、輸送人キロでは1.3%増となり、青函トンネル及び瀬戸大橋の開通等により大きく伸びた63年度に比べて、元年度は鈍化している。
 (民鉄は伸び率は低いものの堅調)
 民鉄(JR(旅客会社)を除く。)は、輸送人員1.9%増、輸送人キロ1.3%増となり、伸び率はいずれも63年度(それぞれ2.9%増、3.0%増)を下回った。これは、63年度末の消費税導入前の定期券の先買需要による大幅増に対する反動減という特殊要因の影響が大きいと考えられ、実態輸送は全体として堅調であったと見られる。定期旅客は輸送人員で1.7%増、輸送人キロでは1.3%増、一方定期外旅客はそれぞれ2.4%増、1.5%増であった。これらを業態別にみると、大手民鉄(14社)は、輸送人員で1.0%増、輸送人キロで0.7%増と伸び率はほぼ横這いに推移した。しかし、東京圏への人口集中のもとで関東圏7社と関西圏5社とで格差が現れており、輸送人員の対前年度伸び率はそれぞれ1.4%、0.4%となっている。地下鉄については、輸送人員は3.1%増、輸送人キロは2.9%増となっている。また、地方中小民鉄は、輸送人員が3.5%増、輸送人キロは3.1%増となっており、増加に転じた。
 また、国鉄改革に伴い分離された第三セクター鉄道は、輸送人員で11.4%増(27社の合計値)、輸送人キロで13.7%増(同)と全体としては好調に推移しているが、路線ごとにみると前年度の水準に達していないものが過半数あり、今後慎重に推移を見守っていく必要がある。
 (自動車は依然として大きな伸び。特に自家用は好調)
 自動車(軽自動車及び貨物自動車を除く。)は、自家用乗用車の伸びが大きく寄与し、輸送人員は7.2%増、輸送人キロは9.4%増となり、いずれも高い伸びが続いている。軽自動車及び貨物自動車を含めた自動車による人員輸送は、輸送人員は6.9%増、輸送人キロは8.1%増であった。
 自動車の内訳を見ると、バスは輸送人員0.4%増、輸送人キロ1.8%増、乗用車は輸送人員9.1%増、輸送人キロ11.1%増、軽自動車は輸送人員7.1%増、輸送人キロ5.4%増であり、貨物自動車は輸送人員3.4%増、輸送人キロ2.1%増であった。また、業態別にみると営業用(バスと乗用車の合計)は輸送人員0.9%減、輸送人キロ1.6%増、自家用(バス、乗用車、軽自動車と貨物自動車の合計)は輸送人員8.8%増、輸送人キロ8.9%増と自家用の好調ぶりに比べ営業用は低迷しているのが目立った。
 (好調な長距離高速バス、深夜バス及び貸切バス)
 営業用バスは輸送人員1.0%減、輸送人キロ2.1%増であった。このうち、乗合バスは、長期的漸減傾向が続くなかで元年度は輸送人員は1.2%減となったものの、輸送人キロでは63年度に引き続き増加となり、3.3%増であった。これは路線距離が300kmを越える長距離高速バスが、63年度及び元年度に合計95路線新設されるなど大都市圏と地方都市を結ぶ路線が着実に増加しており、それが乗合バスの輸送人キロの回復に大きく貢献しているものと考えられる〔2−1−4図〕。また、東京では深夜の輸送需要の増加に対応して都心から郊外への深夜急行バス、深夜中距離バス路線の拡充が進められている。このようにバスについても新たなニーズの開発への努力が行われている。
 また、貸切バスは、旅行需要の活発化を反映し、輸送人員3.9%増、輸送人キロ1.3%増と増加している。自家用バスについても増加傾向(輸送人員6.1%増、輸送人キロ1.0%増)が続いている。
 (依然高い伸びが続く自家用乗用車)
 一方、乗用車は全体として大きな伸びが続き、輸送人員で9.1%増、輸送人キロで11.1%増であった。特に、自家用乗用車については、保有台数も6.6%増と大きな伸びとなっており、輸送人員10.2%増、輸送人キロ11.5%増と63年度(それぞれ8.7%増、10.5%増)に引き続き高い伸びを続けている。
 (ハイヤー・タクシーは輸送能力低下)
 営業用乗用車(ハイヤー・タクシー)は、輸送人員で0.8%減、輸送人キロで0.8%減と経済環境が活発にもかかわらず長期的な減少傾向が続いている〔2−1−5図〕。最近の減少傾向は、実車率(実車キロ÷走行キロ×100)が高水準にあるにもかかわらず、実働率(実働延日車÷実在延日車×100)は低くなっており、これは大都市を中心とした運転者不足の影響を受けたものと考えられる。
 (軽自動車、引き続きシェア拡大)
 軽自動車による旅客輸送(自家用軽貨物車による人員輸送を含む。)は、輸送人員7.1%増、輸送人キロ5.4%増と大きな伸びを示しており、全旅客輸送量のうち、輸送人員で13.0%、輸送人キロで9.7%を占めている。
 (航空輸送は高い伸び)
 航空は、輸送人員13.6%増(幹線12.5%増、ローカル線14.2%増)、輸送人キロ14.7%増(幹線13.2%増、ローカル線16.2%増)と、好景気、通行税の廃止に伴う運賃の値下げ、東京国際空港の発着枠の拡充等を背景として大きな伸びを示している〔2−1−6図〕
 (旅客船は減少から増加へ)
 旅客船(一般旅客定期航路、特定旅客定期航路及び旅客不定期航路の合計)は、63年度においては、瀬戸大橋、青函トンネルの開通の影響が大きく、関連航路の大幅減少により全体としても減少に転じたが、元年度は余暇活動の活発化と景気の拡大により、輸送人員2.1%増、輸送人キロ5.0%増と、増加に転じた。
 また、長距離フェリー(片道の航路距離が300km以上であって陸上のバイパス的な役割を果たすもの)の輸送人員については、1.7%増(63年度3.2%増)と引き続き増加したが、伸び率は低下した。なお、フェリーによる自動車の航送台数は3.0%増となった。
 (分担率では自家用乗用車の増加が続く)
 旅客輸送人キロの輸送機関別分担率をみると、元年度は自家用乗用車及び航空による輸送の伸びが大きかったことによりそれらのシェアが増加したが、その他の機関については、微減となった〔2−1−7図〕
(2) 国際輸送
 (世界の国際旅行者は7年連続増加)
 1989年の世界における国際旅行者数は世界観光機関(WTO)の推計によれば、到着数で4億531万人、対前年比(以下同じ。)3.1%増と7年連続の増加であった。
 (出国日本人数は史上最高の966万人に)
 我が国をめぐる国際旅行の動向をみると、元年(暦年)における出国日本人数は、堅調な個人消費と内需拡大による経済的好調を反映して、14.7%増(63年は23.4%増)と引き続き大幅に増加して966万人となり、8年連続して史上最高を記録した〔2−1−8図〕
 出国日本人の旅行目的別シェアをみると、観光等が前年に比べ0.5ポイント増の83.9%、短期商用・業務は0.7ポイント減の11.5%となり、観光旅行の割合が増える傾向が続いている。
 男女別では、女性の伸び率(15.1%増)が男性の伸び率(14.4%増)を上回る傾向が続いており、男性が61.8%、女性が38.2%(前年は、それぞれ62.0%、38.0%)と女性の全出国者に占めるシェアは増加しているが、元年は小幅な増加となった〔2−1−9図〕
 地域別では、アジア州が全体の47.8%を占め、次いで北アメリカ州35.7%、ヨーロッパ州10.1%の順となっている。また、男女別にみると、男性ではアジア州(53.8%)、女性では北アメリカ州(42.0%)がそれぞれ最も多い。国別では、アメリカが34.2%と最も多く、次いで韓国11.5%、台湾10.5%の順となっている。なお、中国は天安門事件の影響を受けて対前年1.6ポイント減の4.1%となっている〔2−1−10図〕
 年齢別では、男性は40歳代が男性全体の26.4%と最も多く、次いで30歳代(23.4%)、20歳代(19.5%)の順となっている。これに対し女性は、20歳代が女性全体の41.4%と圧倒的に多く、次いで30歳代(14.0%),40歳代(13.0%)の順となっている。また、男女共0〜9歳及び40歳代の伸び率が高い。
 (入国外客数は史上最高)
 元年の入国外客数も、20.4%増の284万人と、これまで最高であった前年の236万人を48万人も上回り、史上最高となった。また、伸び率も、大阪で万博が開催された昭和45年の40.4%増に次いで高い伸び率であった。
 入国外客の訪問目的をみると、観光が150万人、34.2%増、商用が80万人、18.4%増と観光、商用共に史上最高となった。特に、観光はこれまで最高であった60年の133万人を大幅に上回るとともに、観光のシェアは3年ぶりに50%の大台を回復し52.9%となった。しかし、一方では観光ビザ等による不法就労を目的とする入国者の増加が問題となっている。
 観光客についてみると、全観光客に占めるアジア人観光客のシェアは、59.9%と前年に引き続き50%を上回った。これは、韓国において元年から海外渡航を全面自由化に踏み切ったため、これまで以上に伸びが一段と増幅(142.7%増)されたこと、天安門事件以後、台湾、香港からの訪日客の増加傾向が一段と顕著になったことなどの影響が大きく現れたものと思われる。
 入国外客の内訳を地域別にみるとアジア・中近東が164万人で全体の57.8%、次いで北アメリカ60万人(全体の21.3%),ヨーロッパ46万人(同16.1%)の順となっている。
 国別にみると、韓国が渡航自由化を反映して61万人と、アメリカが昭和60年に記録した56万人を更新した。次いで、アメリカは53万人で、漸減傾向を辿っていたが4年ぶりに増加(3.0%)となった。台湾は、28.4%増の53万人、以下、イギリス18万人(14.7%増),中国10万人(10.2%減),フィリピン10万人(5.7%減)の順となっている〔2−1−11図〕
 (我が国航空企業による積取比率は減少)
 元年度に我が国に出入国した旅客(乗換通過客を含む。)のうち航空機を利用した旅客は、2,995万人(対前年度比12.4%増)であった。このうち、我が国航空企業(4社)を利用したものは1,062万人(同8.5%増)であるが、ここ数年の傾向として外国航空企業による新規路線の開設及び輸送力の拡大が著しいことから、我が国航空企業の積取比率は前年度に比べ1.3ポイント減の35.4%と62年度以降減少が続いている〔2−1−12表〕

2 貨物輸送の動向
(1)国内輸送
(ア)概況
 (国内貨物輸送量は、引き続き好調に推移)
 我が国経済は、個人消費と民間設備投資に牽引された内需主導型の経済成長を続けており、平成元年度の実質経済成長率は5.1%と、昭和63年度の5.3%を下回ったものの、3年連続で5%台を維持した。このようななかで、元年度の国内貨物輸送の動向をみると、こうした景気の好調を反映し、総輸送トン数は65億990万トン、対前年度比(以下同じ。)5.8%増と62年度以降3年連続して増加し、総輸送トンキロも5,134億4,000万トンキロ、6.3%増と61年度以降4年連続の増加となった〔2−1−13図〕
 元年度の特徴としては、景気拡大を背景に、前年度マイナスだった民鉄貨物も含め、全輸送機関が伸びていることがあげられる。輸送機関別にみると〔2−1−14表〕、輸送トン数では、内航海運が9.1%増と前年度を上回る大幅な伸びを示し、また、国内航空は8.5%増、営業用自動車(6.7%増)及び自家用自動車(4.8%増)も前年度の伸び率を下回ったものの堅調に推移してきている。JRは0.2%増の横這いである。一方、輸送トンキロでは、国内航空が9.1%増と前年度を上回る大幅な伸びを示し、自動車では、営業用自動車が8.0%増と、前年度より伸び率はやや落ちるものの、堅調に伸びているが、自家用は4.2%増で昨年の伸び率を2ポイント以上下回った。鉄道ではJRが、前年度ほどの大幅な伸びではないものの、7.1%増と好調であり、内航海運も5.7%増と前年度並みの伸びであった。
 この結果、トンキロの分担率は、鉄道は4.9%(うち、JRは4.8%)、自動車は51.2%(うち、営業用は35.9%、自家用は15.3%)、内航海運は43.8%となった〔2−1−15図〕
 (2年連続で実質GNPの伸び率を上回った国内貨物輸送の伸び)
 過去の実質GNP等の動きと国内輸送量の動きを比較してみると〔2−1−16図〕、前々回の景気拡張期(53、54年度)には国内輸送量の伸びが実質GNPの伸びを上回っているが、それ以降はGNPが上昇しても輸送量はマイナスあるいはGNP伸び率を大きく下回る傾向が続いていた。この傾向は、前回の景気拡張期(58、59年度)においても同様であり、輸送トン数はマイナス、輸送トンキロもGNPの伸びを下回っている。これは、我が国において、石油ショック以降、技術革新の進展、産業構造の変化、国民意識の変化等に伴って製品の軽薄短小化が進んだこと、また、財政再建の必要性から、公共投資が抑制されたこと等によるものと考えられる。
 一方、今回の景気拡張期(62年度〜)においては、輸送量が順調に伸びており、63年度にはGNPの伸びを大きく上回り、元年度も引き続き上回っている。この原因をみるために、実質GNPの内需、外需別寄与度をみてみると〔2−1−17図〕、今回の景気拡張期が前々回と同様内需主導型であることがわかる。一方、前回の景気拡張期は輸出の好調を反映した一種の外需主導型とでもいうべき拡大であり、民間設備投資の内容においても輸出関連の加工・組立型産業が中心となっていた。
 それでは、内需主導型成長の場合になぜ国内輸送量が伸びるのであろうか。それは、内需の方が国内配送等国内輸送を誘発する割合が大きいという面もあるが、産業全体、経済全体への波及効果が高いため、消費も伸びる一方、設備投資、住宅建設等の活発化を伴うため、相対的に重量がある大宗貨物としての建設関連貨物の増加が寄与する場合が多いと考えられる。〔2−1−18図〕は、主要輸送品目のうち建設資材として使用される割合が多いと考えられる「木材」、「砂利・砂・石材」、「窯業品(セメント、その他)」、「特種品(建設残土等の廃棄物等)」の合計(以下、「建設関連貨物」という。)と「その他の貨物」の全体の輸送トン数の伸びに対する寄与度を示したものであるが、前回の景気拡張期は住宅建設の低迷等を反映して建設関連貨物の寄与度は大きなマイナスとなっているが、前々回と今回は大きくプラスに寄与していることがわかる。また、内需主導型成長の場合は、民間設備投資の内容において輸送量増大効果の大きい素材型産業における投資も活発化して、機械等の資材輸送が増加するとともに、個人消費も活発化して消費財輸送も増えることから、「その他の貨物」の寄与も大きなプラスとなっている。
 今回の景気拡張期に建設関連貨物が増加した理由としては、62年度に実施された緊急経済対策に基づく総額5兆円にのぼる公共投資等の追加や、その誘発効果、金利安、株・土地高等が加わって全業種にわたって活発化した民間設備投資等によるものと考えられ、さらに、それらの民間設備投資と個人消費等に支えられた「その他の貨物」の大きな伸びと相まって、GNPの伸びを超える国内貨物輸送の伸びが続いているものと考えられる。
(イ) 輸送機関別輸送動向
 (民営化後好調なJR貨物)
 JRによる輸送は、トン数で0.2%増の伸びであり、車扱・コンテナ別のトン数をみると、コンテナ貨物が10.7%増と増加を続けているのに対し、車扱貨物は4.2%減となっている。
 鉄道貨物輸送トン数は、54年度以来減少を続けてきたが、63年度からようやく増加に転じ、元年度も順調なコンテナ輸送に支えられ、わずかながらも増加している〔2−l−19表〕。輸送トンキロの方は、輸送距離の長いコンテナ輸送が伸びている影響で、7.1%増とトン数を大きく上回る伸びを示している。
 一方、長期的推移をみると、貨物量に占める鉄道貨物のシェアは、トン数、トンキロともに、急速に低下しており、鉄道貨物の貨物輸送に占める役割は小さくなっている。しかし、最近はトン数のシェアは減少傾向が止まっており、トンキロのシェアは、足の長いコンテナ貨物の急増で平均輸送距離が急激に伸びている影響で、わずかながらも上昇傾向をみせている〔2−1−20図〕
 国鉄は、62年4月に分割・民営化され、貨物部門についてはJR貨物(日本貨物鉄道株式会社)が事業を行うこととなったが、国鉄時代にはストで遅れが生じたり、運賃の値上げで利用者から敬遠された結果、輸送量が激減した。それが、民営化後においては、好景気による需要が増大したことを背景として、荷主の要望や荷物の性質に合った輸送を実施するようになったため荷主を着実に獲得しつつある〔2−1−21表〕
 上記の新たなサービスのなかで、特にピギーバック輸送は、昭和61年11月に開始以来、平成2年10月までに輸送台数は約9倍、区間も4倍以上に伸びている〔2−1−22図〕
 ピギーバック輸送が大幅に伸びた理由としては、いままで一つの輸送手段(方法)で実施していた輸送を鉄道と自動車のいわゆる協同一貫輸送に変更することにより、トラックの運転手不足の解消と道路の渋滞による長時間にわたる輸送の遅延が解消され、定時に荷が届くようになること、また輸送コストが低下すること等があげられる。
 一方、平成元年度のコンテナ輸送量は、1,787万トンと、60年度と比較して46.7%増であり、産業、国民の利便性重視傾向の強まりに伴い、着実に上昇傾向にある〔2−1−23図〕。また、車扱とコンテナの割合をみると、元年度にはコンテナのシェアが30%を超えているが、コンテナ列車の運転本数を主要都市間及び地域内において40本増発して総計302本とし、荷主のニーズに積極的に、かつ、すみやかに対応したことがコンテナ輸送の伸びにつながっているといえる〔2−1−24図〕
 (国内貨物の9割以上を輸送する自動車、今後は運転手不足が懸念される)
 自動車輸送は、トン数で5.6%増、トンキロで6.8%増と前年度をやや下回る伸びで推移した。
 業態別のトン数、トンキロでみると、営業用自動車は6.7%増、8.0%増となり、自家用自動車では4.8%増、4.2%増でいずれも前年度の伸びを下回った〔2−1−25図〕
 一方、元年度の国内貨物輸送量のうち、自動車はトン数で90.5%、トンキロで51.2%となっており、トン数では昭和57年から全体の9割を占めつづけ、トンキロでは昭和62年から5割を占めるようになっており、自動車の貨物輸送全体に占めるウェイトは非常に大きなものとなっている。また、運送事業者数・保有車両数も着実に増加傾向にある。
 自動車の貨物量の中でも、最近は小口貨物輸送が多くなり、宅配貨物の輸送が急激に増加傾向にある。宅配便は56年度から本格的に始まり、毎年20〜30%ずつ伸びる急成長を続けた。元年度では取扱個数が10億2,854万個(対前年度比12.9%増)となり、初めて10億個の大台に乗った。また、郵便小包も堅調に伸びており、これら小口貨物の取扱個数は合計で約13億3千個(対前年度比15.7%増)となり、この10年間で約5倍、5年間では約2倍という急激な増加傾向を示している〔2−1−26図〕
 急成長の原因は、早くて便利という性格が消費者ニーズに合致したことが一番であり、生鮮食品などを保存に適した温度で運ぶ保冷宅配便や手軽に荷物をもたないで目的地まで行けるスキーやゴルフ道具の宅配、グルメ志向の高まりでそれぞれの産地の新鮮な産物を届ける産地直送などの新しいサービスの開発も寄与している。また、中元、歳暮に宅配便が使われる割合も増えていると考えられる。
 ただし、第1部でも述べたように、トラックの運転手は深刻な労働力不足に陥っており、これが解決できなければ、宅配便のようなきめこまかく、迅速なサービスは提供できないことに留意する必要がある。
 (好調を持続する内航海運)
 内航海運は、トン数で9.1%増、トンキロで5.7%増と前年度を上回る大幅な増加となった〔2−1−27表〕
 船種別の輸送トン数をみると、貨物船(10.1%)が高い伸びを示し、油送船(5.0%)も堅調に増加した。
 また、輸送トンキロでみても、貨物船(4.5%)、油送船(7.5%)と堅調な伸びとなっている。
 内航海運の輸送量は、内需を柱とする景気拡大に伴い、62年後半から上昇し、平成元年度の伸び率は実質GNPの伸び率を超え、昭和54年度の最も高かった水準(トンキロベース)まで回復した。しかし、工場等の統廃合、集約化により平均輸送距離は短くなる傾向にあり、国内輸送トンキロに占める内航海運のシェアも低下傾向にある〔2−1−28図〕
 なお、内航海運の平均輸送距離は元年度で417.6kmと、自動車の約10倍、鉄道の1.4倍となっており、内航海運の大量長距離輸送機関としての性格が現れている。
 今後は、道路混雑やトラック輸送の人手不足に鑑み、大宗貨物のみならず、トラック貨物についても効率的な海・陸の協同一貫輸送が望まれる。
 一方、船腹量は、元年度末9,342隻と、54年度と比較して16.3%、総トン数で369万5,657総トンで5.4%減少している。また、54年度末において350総トンであった平均船型は、元年度末には396総トンとなっており、荷主のニーズに合わせて、船型の大型化が進んでいる。
 しかしながら、内航船では、船令14年以上の老齢船が隻数で約半分を占めていると同時に、老齢船の平均船型は船令7年未満の船舶に比べ約半分と小型船が多くなっており、近代化が求められている〔2−1−29図〕
 (ローカル線を中心に好調な国内航空)
 国内航空は、トン数で8.5%増、トンキロで9.1%増と、トン数は前年度の伸びを下回ったが、トンキロでは上回った。幹線・ローカル線別トン数をみると、幹線は伸びが前年度よりわずかながら下回ったが、ローカル線はわずかに上回る伸びを示した。トンキロでみると、幹線は前年度より少し上回る伸びであったが、ローカル線は前年度比12.0%増と、幹線に比べ大きな伸びを示した〔2−1−30図〕
 また、平均輸送距離も依然900キロ台を維持しており、高速長距離輸送機関であることが印象づけられる。航空も、航空機の発着できない時間帯を鉄道が運ぶという協同一貫輸送(AIR&RAIL)を行うことによって、鮮魚、高級野菜などの輸送の一層のスピード化を図っている(例 札幌〜大阪間を所要時間約12時間で輸送可能である。)。
 (輸送機関の品目別輸送量)
 品目別(トン数ベース。以下同じ。)の輸送量を各輸送機関別にみると〔2−1−31表〕のとおりである。
 鉄道貨物のうち車扱いについては4.2%減となっており、品目別でみると、セメントは鉄道輸送の廃止、石炭は北海道、九州地区における炭鉱閉山、石油は暖冬の影響で減少した。その他の品目では石灰石、食料工業品等が減少しているが、鉄鋼、木材、機械等が増加している。また、鉄道コンテナは、荷主のニーズに対応するため、需要旺盛な区間への列車増発、列車の長大化、全国ネットワークの整備拡充を図った結果、特に紙・パルプ、酒・ビールなどで増加している。
 自動車の輸送トン数を品目別でみると、営業用は廃棄物等特種品(シェア率(以下同じ。)22.4%)が9.3%増、砂利・砂・石材(12.6%)が3.8%増、機械(10.5%)が18.2%増、食料工業品(7.4%)が0.2%増及び窯業品(6.2%)が10.7%増で、5品目で営業用の約6割を占めている。
 自家用は砂利・砂・石材(32.3%)が8.9%増、特種品(24.6%)が3.4%増、窯業品(7.4%)が2.1%増及び工業用非金属鉱物(6.1%)が28.1%増で、4品目で自家用の7割以上を占めている。
 内航海運は、砂利・砂・石材、鉄鋼、原油等が増加し、セメント、石灰石等が減少した。
 なお、航空の品目別では、生鮮魚介類、果実・野菜等の食料品及び切り花等が好調であった。
(2) 国際輸送
(ア) 世界の輸送活動
 (好調に推移する世界の海上荷動き量)
 元年(暦年)の世界経済は、前年ほどの伸びはなかったものの、依然好調に推移した。アメリカ経済は、個人消費、設備投資が順調に推移し、輸出も好調であった。
 このようななかで、世界の海上荷動き量は、トンベースで対前年比(以下同じ。)5.5%増の38億7,700万トン、トン・マイルベースで6.1%増の16兆2,350億トン・マイルとなった〔2−1−32表〕
 品目別にみると、石油は、原油価格の低迷によりアメリカの産油量が減少した一方、ガソリン需要が増大していることから原油並びに石油製品のアメリカへの荷動きが活発になり、元年の世界の海上荷動き量は14億7,000万トン(対前年比7.5%増)、7兆1,100億トン・マイル(9.2%増)となった。
 鉄鉱石は、世界粗鋼生産量が大きく伸びたため、3億5,700万トン(2.6%増)となった。石炭は、鉄鋼業の好況と西欧における石炭火力発電への依存度が高まったことから、原料炭、一般炭とも好調であり、3億1,500万トン(3.6%増)となった。また、穀物は、対前年比0.5%減の1億9,500万トンとなった。なお、世界の海上荷動き量に占める我が国輸出入貨物の割合は、トンベースで19.4%、トン・マイルべースで24.3%となっている。
 コンテナ貨物については、世界の港湾における取扱高がここ数年間年平均10%前後の伸びを見せており、元年には約7,300万TEU(8.4%増)に達した。なかでも、アジアNIEsの港湾で取扱量が増加している。
(イ) 我が国の海上貿易量の動向
 (輸入は引き続き増加)
 元年の我が国海上貿易量(トンベース)は、輸出入合計で3.1%増の7億5,384万トンと、3年連続して順調に増加した〔2−1−33表〕
 輸出については、0.1%減の7,068万トンと引き続き減少しているが、その幅は年々縮小する傾向にある。これを品目別にみると、鉄鋼が前年に引き続き大幅な減少(14.8%減)となったほか、乗用車も1.0%減であった。
 一方、セメントは前年に引き続いて大幅に増加し(32.4%増)、また減少を続けていた電気製品もわずかながら増加(2.4%増)に転じている。
 輸入については、対前年比3.4%増の6億8,317万トンと、62年以来増加を続けている。品目別でみると、鉄鉱石が引き続き順調に伸びたほか(3.4%増)、木材(7.5%増)、パルプ(8.9%増)、原油(6.6%増)等が増加した。
 一方、とうもろこし(4.5%減)、小麦(2.5%減)、大豆(7.2%減)等の穀物類が減少に転じたほか、順調な伸びを続けていたチップも、63年の大幅な増加の反動もあり、元年は減少(23.7%減)に転じており、また、重油は2年連続の減少となっている。

(注)TEU:Twenty Footer Equivalent Unit(コンテナ用語で20フィート型コンテナ換算個数)

(ウ) 我が国商船隊による海上輸送活動
 (輸出、三国間は減少、輸入は増加)
 元年の我が国商船隊による輸送量は、輸出及び三国間輸送における減少、輸入における増加の傾向が続き、全体で5億9,258万トンと1.5%の増加にとどまった〔2−1−34表〕
 このうち輸出は、コンテナ船(10%増)、油送船(41%増)の輸送量が増加しているものの、不定期船(8%減)の輸送量が引き続き大幅に減少したため、3.8%減の3,310万トンとなった。
 一方輸入では、コンテナ船の輸送量が若干減少しているが、不定期船、油送船の輸送量が順調に伸び、4億5,987万トン(4.2%増)となった。
 また、三国間輸送は、不定期船、油送船の輸送量の減少が大きく、全体で7.9%減の9,960万トンとなった。
(エ) 国際航空も堅調な伸び
 元年度の国際航空による我が国の貨物輸送量(継越貨物を除く。)は〔2−1−35表〕、輸出はトンベースで対前年度比(以下同じ。)10.0%増の47万トン、ドルベースで5.5%増の423億ドルと、トンベース、ドルベースともに大幅な伸びとなった。品目別(ドルベース)では、航空機が69.9%増と大きく伸び、次いで食料品、化学製品の順に伸びている。
 輸入は、トンベースで13.5%増の67万トン、ドルベースで12.0%増の466億ドルと大幅に伸び、トンベース、ドルベースとも輸出を上回っている。品目別(ドルベース)では、機械機器の増加が輸入の増加に大きく寄与しており、なかでも、時計、航空機、事務用機器の寄与が高い。また、食料品、金属製品といった品目も輸入の増加に貢献している。
 我が国の航空企業における輸送量(トンベース。継越貨物を含む。)をみると、輸出は6.1%増、輸入は9.6%増となり、積取比率は63年度に比べ、輸出、輸入とも横ばいで輸出は前年度と同じ39.4%、輸入は0.1ポイント減の38.8%となった。

3 輸送指数の動向
(1) 元年度の輸送指数の動向
 元年度の我が国経済は、63年度に引き続き内需が好調に推移したことにより実質GNP成長率は5.1%となった。このような状況のなかで、元年度の輸送指数(輸送業総合)は、経済の順調な拡大を反映し121.5、対前年度比5.1%増と実質GNPと同程度の伸びを示しており、四半期別にみても年間を通じて順調に推移している。
 元年度の自家輸送を含んだ輸送指数(輸送活動総合)は、130.5で対前年度比8.3%増と高い伸びになっており、盛んな経済活動に伴った活発な自家用乗用車輸送(対前年度比11.5%増)の影響が現れている〔2−1−36図〕
(2) 輸送指数の長期的動向
 (単位輸送量当たりの輸送指数の変化)
 輸送指数は、各輸送機関が創出する付加価値額の成長度合いを示すものであるという観点から、単位輸送量当たりの輸送指数(以下、指数原単位という。)の推移を貨物、旅客別にみてみる。
 これによると、国内貨物輸送業については、ここ10数年の間一貫して指数原単位が上昇している。これは、国内貨物輸送業が付加価値の高い輸送機関にシフトしてきていることを示している。具体的には、輸送ニーズの多様化、利便性等が重視され、単位輸送量当たりの付加価値が大きい輸送機関である自動車及び航空の輸送が活発化してきていることの現れであると考えられる。63年度以降については、若干指数原単位の伸びが鈍化してきているが、これは単位輸送量当たりの付加価値が小さい輸送機関である内航海運や鉄道による建設関連、鉄鋼等の重量物の輸送量が大きくなったことによるものと考えられる〔2−1−37図〕
 これに対して、国内旅客輸送業については、国内貨物輸送業とは異なり指数原単位が下降傾向にあり、55年度以降は、輸送量1単位に対する創出付加価値額がほぼ低下し続けている。この背景としては、自家用乗用車による輸送の増大により、公共交通機関の伸びが相対的に低い中にあって、単位輸送量当たりの付加価値が大きい輸送機関であるハイヤー・タクシーによる輸送量が、減少ぎみであったこと、また最近は、ハイヤー・タクシーは、運転手不足による影響を強く受けていることが考えられる。
 (輸送指数のGNP弾性値)
 輸送指数の動きを実質GNPの動きと対比してみるために、輸送業総合、国内貨物輸送業、国内旅客輸送業それぞれの輸送指数についてGNP弾性値(輸送指数の伸び率/GNPの伸び率)を計算してみると、国内貨物輸送業は概ね1.0を超えるものとなっているが、国内旅客輸送業は1.0以下でマイナスの場合もあり、輸送業総合では、1.0を下回る場合が多く、輸送業の経済活動はGNPの伸びほど伸びない場合が多い。ただし、62年度以降は国内旅客輸送業のGNP弾性値も高まる傾向にあり、輸送業総合では、ほぼGNPと同程度の伸びを確保している〔2−1−38図〕


〈輸送指数とは〉

 輸送指数とは、我が国の国内旅客・貨物輸送活動及び我が国企業による国際輸送活動を総合的にとらえ、指数化したものである。具体的には、各輸送機関別の旅客・貨物輸送量(原則として旅客は人キロ、貨物はトンキロ)を、それぞれの輸送機関の創出した粗付加価値額(雇用者所得、営業余剰等)をウエイトとして、基準時加重相対法(ラスパイレス方式)により総合化している。
 従って、人や人キロまたはトンやトンキロを単位とするそれぞれの輸送量に対して、輸送活動を経済的側面からとらえた総合的な指数であり、鉱工業生産指数や国民総生産(GNP)等と対比してとらえることができるものである。
 この指数の系列のうち・輸送業総合は、営業輸送だけからなるもので、輸送活動総合は、自家輸送を含んだすべての輸送からなるものである。


4 輸送関連の動向
(1) 造船
 (新造船受注量は大幅増加)
 元年度の新造船受注量(建造許可ベース:2,500総トン以上)は、世界的な好況の下、863万総トン(対前年度比78.0%増)と大幅な増加をみせた。国内船・輸出船別にみると、国内船は82万総トン(33.7%増)、輸出船は781万総トン(84.4%増)であり、輸出船が全体のうち90.5%と圧倒的なシェアを占めている。これは、我が国船主によるフラッギング・アウトが影響しているためと考えらえる。船種別にみると、貨物船は409万総トン、36.7%増である一方、油槽船は449万総トン、151.7%増と大幅に増加した。
 一方、元年度の新造船工事量(竣工ベース:2,500総トン以上)は、566万総トン、30.7%増と63年度以降の受注量の回復を反映している。元年度末の新造船手持ち工事量は808万総トンとなっている。
 また、暦年ベースの元年の新造船工事量(ロイド統計による竣工べース:100総トン以上)は、537万総トン(対前年比32.8%増)で、世界に占めるシェアは40.5%(63年37.0%)であった。
 なお、元年の船用工業の生産額は7,560億円、3.3%増であった。
(2) 鉄道車両生産
 (生産実績は国内需要増により大きく増加)  元年度の鉄道車両の生産実績(新造)は、前年に引き続いてJR各社の積極的な設備投資や大手民鉄の第7次輸送力等増強計画を中心とした国内需要により、生産両数2,957両(対前年度比10.7%増)、生産額1,743億円(3.9%増)と増加した。これを車種別、需要先別にみると、国内向け(JRを含む。)は、電車2,071両(11.4%増)ディーゼル車156両(56.0%増)等、全体で2,872両(23.7%増)、1,634億円(18.6%増)と生産両数、生産額とも大きく増加した。
 国内向けのうち、JR向けは、電車1,065両(15.3%増)うち新幹線電車318両(42.0%増)、ディーゼル車122両(50.6%増)等で生産車両1,616両(26.3%増)、生産額973億円(22.3%増)といずれも大きく増加した。
 また、輸出は、生産車両85両(75.6%減)、生産額109億円(63.8%減)と大幅に減少している。
(3) 自動車登録台数
 (新車登録台数は2桁の伸び)
 元年度も消費景気が堅調に推移したため、自動車新車登録台数は588万台(対前年度比17.3%増)と、自動車新車登録台数の伸び率は昭和53年度の15.7%増以来の2桁の伸びを示した。内訳は、旅客自動車(乗用とバスの合計値)は471万台(24.2%増)、貨物自動車(特種(殊)車を除く。)は106万台(4.4%減)、軽自動車販売台数(二輪車を除く。)は161万台(9.3%減)となっている。このうち乗用車の伸び(24.4%増)が高く、なかでも小型自動車(18.7%増)よりも上級の普通自動車(153.3%増)の販売の伸びが高いことが特徴である。また、物品税が非課税又は軽減となっていた貨物自動車及び軽貨物自動車(軽自動車に占める比率が高い。)に対して元年度から消費税が導入されたため、それらの伸び率はマイナスとなった。
 また、このように好調な新車の販売を反映し、元年度末の自動車保有車両数は5,799万台(5.2%増)となった。このうち自家用乗用車(軽自動車を除く。)は3,062万台(6.6%増)、自家用貨物自動車(軽自動車を除く。)は782万台(1.3%増)、営業用貨物自動車(軽自動車を除く。)は79万台(5.1%増)、軽自動車(二輪車を除く。)は1,430万台(4.6%増)となった。
(4) 旅行業の取扱額
 (国内旅行、海外旅行とも好調な伸び)
 一般旅行業者(63年12月31日現在の653社)の63年における年間旅行取扱額は、国内旅行が約2兆8,679億円(対前年比10.2%増)、海外旅行が約2兆3,652億円(対前年比22.1%増)と好調な伸びを示したが、外人旅行は約375億円(対前年比3.9%減)となっている。

5 最近の輸送動向(2年4月〜8月の実績)
 引き続く経済と個人消費の拡大及び旅客関係では特に4月から9月まで大阪市で開催された「国際花と緑の博覧会」による需要増を反映して好調な伸びとなっている。
(1) 国内旅客輸送の動向
 (JR(旅客会社)は好調に推移)
 JR(旅客会社)は6社合計で、2年4月〜8月の輸送人員は対前年同期比(以下同じ。)5.3%増と好調に推移している。このうち、定期旅客は4.0%増、定期外旅客は7.6%増と、定期外の伸びが著しい〔2−1−39表〕
 (民鉄も堅調に推移)
 民鉄は、3.1%増と堅調に推移している。このうち、定期旅客は1.7%増、定期外旅客は5.6%増と、JR同様に定期外の伸びが著しい。
 (東京のバスは横這い)
 東京のバスは、0.2%増と横這いに推移した。
 (東京のタクシーは輸送人員減少)
 東京のタクシーは、輸送人員で5.3%減となっているが、実車率でみると0.3ポイント増の55.4%となっている。これは、運転者の不足により稼働台数が不足しているためと考えられる。
 (国内航空は依然好調に推移)
 国内航空は、10.8%増と幹線、ローカル線とも高い伸びが続いている。
(2) 国内貨物輸送の動向
 (JR(貨物会社)は順調)
 コンテナは、農産品、路線貨物、繊維工業品、酒・ビールの増加が目立っており、その他も好調に推移し、14.5%増と高い伸びが続いている。車扱は、ピギーバックが新路線の開設等により89.4%増と高い伸びを示しているものの、化学工業品、車両、紙・パルプ等が減少していることにより、0.1%減と横這いに推移している。全体では、コンテナの増加により4.5%増と増加した〔2−1−40表〕
 (路線トラックは好調)
 路線トラックは、工場・生産地、商社・問屋からの金属製品、化学工業品、機械、食料工業品、日用品等の内需関連の貨物が好調に推移し、5.8%増となっている。
 (内航海運は堅調に推移)
 油送船は、白油、黒油が堅調に推移したことにより、8.7%増となっている。
 貨物船は、特種品、石灰石、砂利・砂、セメント、石炭等が好調に推移したことにより、9.1%増となっている。
 (航空は好調を持続)
 航空は、札幌発の生鮮食料品、沖縄発の鮮魚、切り花等が増加し、6.0%増と依然として好調を持続している。
(3) 国際輸送の動向
 (国際航空旅客は依然好調)
 国際航空旅客は、堅調な個人消費と内需拡大による経済的好調を反映して、7.5%増と依然として増加を続けている〔2−1−41表〕
 (外航海運貨物は減少)
 外航海運貨物は、輸入が1.6%減とほぼ横這いであるものの、輸出4.0%減、三国間10.7%減であるため、全体でも3.9%減となった。
 (国際航空貨物は減少)
 国際航空貨物は、輸出は順調に推移したが、輸入は円安の影響により減少に転じ、全体でも3.9%減となった。

6 青函トンネル、瀬戸大橋開通後の動き
(1) 青函トンネル開通(昭和63年3月13日)後の動き
(ア) 人の流れの変化
 本州〜北海道間の旅客交通量は、大幅に増加した〔2−1−42図〕。昭和63年のトンネル開通後のブームと青函博覧会の開催(昭和63.7.9〜9.18)もあり、平成元年度の7、8月は前年同月をやや下回ったが、その他の月の伸びや総旅客交通量からみて、人の流れが活発化したことは明らかである。
 各交通機関別にみると、JR旅客(青函連絡船および津軽海峡線(中小国〜木古内間)の断面交通量)の元年度実績(上り下り合計、速報値による。以下同じ。)は277.9万人(対前年度比9.2%減、以下同じ。)と前年度を下回ったものの、これは前年度のブームの反動減とみられ落ち着きをみせてきたといえる。一方、航空は元年度実績(千歳〜東京、千歳〜青森、千歳〜三沢、函館〜東京線の合計)が850.2万人(14.4%増)と最も好調で、当初青函トンネルの影響を受けると思われた短距離路線(千歳〜青森、千歳〜三沢線)にも顕著な影響は現われていない〔2−1−43図〕。また、旅客フェリーも輸送人員69.6万人(12.3%増)、航送台数15.1万台(12.6%増)と順調に推移している。
 このように、当初青函トンネルの影響を受けると思われた短距離路線において、JRへのシフトが特にみられない理由としては、新幹線が盛岡まででトンネルが在来線のままであること等が考えられる。
 また、現在、上野〜札幌間直通の夜行特急北斗星は、1日に3往復出ているが、当初から人気を呼び、依然としてその人気は衰えていない。新幹線が盛岡以北に通っていない現状において、このような人気は、列車はフェリーの乗り継ぎ不要という利便性や国民のニーズにあった北斗星の快適性によるものと思われる。
(イ) 物の流れの変化
 本州〜北海道間の鉄道輸送、トラック輸送(フェリー)、海上輸送(内航コンテナ)及び航空輸送における輸送量の変化は〔2−1−44図〕のとおりであるが、景気拡大等による輸送需要全体の増加もあってトンネル開通の影響は顕著に現れておらず、いずれも順調に推移している。輸送機関別にみると、特にJR貨物は青函トンネル開通の効果により約442万トン(8.9%増)と開通初年度の26.1%増に比べると鈍化したものの好調な伸びを示しており、新規の輸送需要のほか、輸送時間の短縮、長距離を中心とするドライバー不足の深刻化等の理由から、JR貨物へのシフトも一部生じていることも考えられる。
 一方、内航コンテナは約19万個(1.2%増)、フェリーのトラック航送台数は関連航路(海峡、中距離、長距離航路)計で約90万台(3.5%増)、また、航空は3路線(千歳〜東京、千歳〜名古屋、千歳〜大阪)計で約18万トン(4.7%増)と、それぞれの63年度の伸び率4.2%増、4.1%増、7.3%増に比べ低くなっているものの堅調な伸びとなっている。
(2) 瀬戸大橋開通(昭和63年4月10日)後の動き
(ア) 旅客の動向
 まず、平成元年度の全自動車通行量は約331万台(14.1%減)で1日平均は1万台を割り9,070台と低い利用率になっている。関連する高速道路網の整備が進められて、瀬戸中央自動車道が本州・四国の一体化という本来の役割を果たすには時間を要するものと思われる。一方、JR(瀬戸大橋線)の元年度輸送実績は約988万人(10.2%減)、1日あたり約2万7千人で対前年度こそ下回ったが、63年度は瀬戸大橋開通後のブームや瀬戸大橋博覧会の開催による観光客の増加のあったことを考慮すれば順調な推移といえる〔2−1−45図〕。また、香川県と岡山県を直結する高速バスは4系統が運行されているが、元年3月より23往復から27往復に増便しているにもかかわらず平成元年度は高松〜岡山が前年度を19.1%上回っているだけで他の3系統(高松〜倉敷、琴平〜岡山、琴平〜倉敷)とも軒並み大幅な減少を示し、4系統合計で約37万人(11.7%減)となった。これは、高松〜岡山間に業務利用等安定した需要があるのに比べ、他の3路線では観光利用の色合いが強く、瀬戸大橋ブームの落ち着きが現われてきたものと思われる。次に四国内の4空港と東京、大阪を結ぶ航空路線の元年度の輸送実績は、約483万人(13.5%増)で路線別にみると、東京便は好調で特に高松〜東京便については元年12月の新高松空港開港に伴い、約36万人(49.7%増)と大幅に伸びた。また、大阪便は約221万人(4.5%増)と全体でわずかに増加したものの特に大阪〜高松便では約27万人(4.6%減)と、大幅に減少した昨年度よりさらに減少したが、これはアクセスを含めたJRとの所要時間の差が縮小したためであろう。最後に四国から中国・阪神への8ルートに航路を持つ37社、59航路(フェリー・旅客船・高速船・水中翼船・ジェットフォイル)についてみると、元年度のバス・乗用車の航送台数については、瀬戸大橋直下(西讃〜中国、高松〜宇野。以下同じ。)や高松〜阪神では相変わらず低迷しているが、大橋の影響が軽微と考えられる他のルートは消費や景気の拡大効果等もあって増加ないし回復傾向を示し、全体で3.6%増となっている。これに対し旅客の輸送人員においては一部ルートで前年度を上回っているものの、大橋直下を中心に全ルート計で2.2%減と減少が続いている。これは、旅客のみの移動の場合、大橋利用の方が料金、時間といった面で優位性を持つためと思われる〔2−1−46図〕
(イ) 貨物の動向
 元年度のJR貨物のコンテナ輸送(四国発)については好景気を背景に相変わらず好調で各月とも昨年度実績を上回り元年度実績は約42万トン(9.8%増)で2年度も好調である〔2−1−47図〕。車扱貨物についても全国的に不振を示しているなかで約12万トン(9.2%増)と好調に推移している。瀬戸大橋経由の四国から本州向け路線トラック16社の元年度実績は約34万トン(19.2%増)と、開通2年目で当初予定数量(1ヶ月3万トン弱)に達し、当初模様眺めの感のあったトラックも徐々に大橋利用の傾向にある。今後の増加も期待されるが2年度にはいって大幅な伸びを示している〔2−1−48図〕。次に、四国内の4空港と東京、大阪を結ぶ航空路線の元年度輸送実績はそれぞれ約2.1万トン(21.2%増)、0.7万トン(11.2%減)と相変わらず明暗を分けている。最後に、四国から中国・阪神への8ルートに航路を持つフェリー32社41航路についてみると、元年度のトラック航送台数は大橋直下航路計で対前年度比6.1%減、その他の航路は合計で微増と大橋直下航路以外ではそれほど影響を受けていないように思われる〔2−1−49図〕




平成2年度

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