平成2年度 運輸白書

第1章 平成元年度の運輸の概況と最近の動向

第2節 設備投資の動向

    1 公共投資
    2 民間設備投資


1 公共投資
 (交通関係公共投資は横ばい)
 平成元年度の交通関係公共投資は、〔2−1−50表〕のとおりであり、総額11兆1,254億円、対前年度比1.8%増と、63年度の伸び率4.0%増をさらに下回る傾向となっている。これは、引き続き行財政改革が推進されたことに加え、民間設備投資と個人消費を中心とする経済の自律的拡大を踏まえ、財政政策がおおむね中立的に運営されたことも反映しているとみられる。
 個別部門についてみると次のとおりである。
 〔鉄道〕
 鉄道全体では、4,268億円、対前年度比5.1%減と減少傾向が続いている。
 元年度の内訳をみると、日本鉄道建設公団(貸付線)は、元年度に北陸新幹線(高崎・軽井沢間)等に着工したが、京葉線の2年3月の全線開業により、23.7%減の480億円となった。新幹線鉄道保有機構は、東北新幹線上野〜東京間建設工事の進捗により60.9%増の214億円となった。
 公営地下鉄は、東京都12号線光が丘〜新宿間、横浜市3号線新横浜〜新羽間、京都市烏丸線北山〜北大路間等の工事が本格化する一方、名古屋市桜通線中村区役所〜今池間、大阪市鶴見緑地線京橋〜鶴見緑地間等が完成したため、全体では0.4%増の2,609億円の微増となった。また、営団地下鉄は、半蔵門線三越前〜蠣殻町間、7号線目黒〜岩淵町間等の工事が進捗しているが、有楽町線和光市〜新木場間及び半蔵門〜三越前間が完成したことにより、全体として17.2%減の724億円となった。また、公営ニュータウン鉄道は、横浜市3号線新羽〜あざみ野間の工事が本格化しており、5.0%増の231億円となった。
 〔港湾〕
 港湾全体では、63年度の伸び率2.7%増に比べ高い伸びの対前年度比11.2%増の8,978億円となった。
 元年度の内訳をみると、港湾整備事業費は、全体としては、横ばいであるが、横浜港、神戸港等7港における外貿コンテナターミナルの整備、東京港、大阪港等26港における港湾の再開発及び小名浜港、苫小牧港等30港における公共マリーナの整備等を重点課題として事業を推進した。
 また、港湾機能施設整備事業等事業費は、港湾関係民活事業が本格化したため、1,670億円とほぼ倍の大幅増加となった。
 海岸事業は、東京港、新潟港、津田港等325港で海岸保全施設の整備、神戸港、博多港等83港で海岸環境の整備が進められ2.0%増の673億円となった。
 〔空港〕
 空港は、全体として3,166億円、63年度の伸び率7.0%増に引き続き、対前年度比11.6%増と高い伸びが続いている。
 元年度の内訳をみると、空港整備費は、2,325億円、13.0%増と高い伸びとなっている。これは新東京国際空港2期工事費が46.2%増と増加したことと、一般空港整備費が27.1%増と高い伸びを示したためである。
 また、周辺環境対策費、航空保安設備の整備費もそれぞれ6.7%増の465億円、9.6%増の376億円となった。
 〔道路〕
 道路全体では、9兆4,842億円、対前年度比1.1%増と前年度の伸び率4.5%増から横ばい傾向となった。
 (港湾、空港はシェア拡大、鉄道、道路は低下)
 元年度の部門別公共投資の交通関係公共投資に占めるシェアをみると、鉄道3.8%、港湾8.1%、空港2.9%、道路85.2%であり、対前年度と比較すると、港湾、空港はシェアを拡大し、鉄道、道路は低下している。

2 民間設備投資 〔2−1−51図〕
 元年度の民間設備投資は、大蔵省「法人企業統計年報」によれば、50兆3,757億円で内需関連産業を中心に積極的な投資が行われた結果、前年度比22.1%増と引き続き大幅な伸びを示した。
 業種別に増加率をみると、製造業は23.1%と前年度(25.7%)に引き続き大幅増となり、非製造業は21.5%と前年度(14.0%)を上回った。製造業では、繊維がマイナスとなったものの、ほとんどの業種で2桁の増加となっており、特に石油製品、鉄鋼等の伸びが大幅であった。非製造業では、ほとんどの業種が2桁の増加となっており、特に不動産、運輸・通信業等の伸びが大幅であった。
(1) 運輸関連民間設備投資の動向
 (運輸関連民間設備投資は大幅な増加)
 「運輸省所管事業設備投資動向調査」(原則として資本金5,000万円以上の3,556社調べ)によると、元年度の運輸関連民間設備投資の実績額は、〔2−1−52表〕のとおり、工事ベースで、総額2兆7,945億円と、前年度の実績に比べ31.1%の大幅増加となった。
 このうち「運送業部門」は、31.2%増で、航空運送業、国内旅客船業、倉庫業、外航海運業、鉄道業等の設備投資が内需の拡大を背景とした輸送需要の伸びに牽引され、極めて活発であったが、通運業、バス業は減少した。
 「製造業部門」は、全体として52.8%増の高い伸びを示し、造船業の90.3%増をはじめ舶用工業、鉄道車両製造業とも大幅な増加となった。「その他部門」は、自動車ターミナル業、航空関連施設業等が大幅に増加し全体として27.3%増となった。
 (鉄道業、航空運送業をはじめ設備投資は活発化)
 次に、主な事業についてその設備投資動向をみると、鉄道業は、輸送力増強に務めたために、車両、電路設備等を中心に22.7%の大幅増となった。
 航空運送業は、地上施設、航空機を中心に、倉庫業は、用地を中心に、トラック運送業は、ターミナル施設、自動車を中心に16業種が投資額を増加させた。
 一方、バス業はターミナル施設等が増加したものの、車庫及び修理工場、自動車が減少したことに伴い4.7%減となった。また、通運業、港湾建設業が減少となっている。
 (旺盛な投資意欲)
 元年度設備投資実績(工事ベース)を投資動機別にみると、〔2−1−53表〕のとおりである。このうち、「研究開発投資」が101.7%増、「安全対策のための投資」が53.4%増、「能力増強投資」が32.3%増で投資動機別の全項目とも増加している。
 また、投資動機別シェアをみると、「能力増強投資」が54.1%、次いで「現有設備の更新等投資」23.0%、「安全対策投資」6.7%となっており、シェアの一番大きい能力増強投資が32.3%増と大幅に増加しており、企業の内需の拡大を背景とした旺盛な投資意欲がうかがえる。
 投資動機別のシェアを部門別にみると、運送業部門においては、「能力増強投資」が過半数を占め、製造業部門においては、「能力増強投資」「合理化・省力化投資」「現有設備の更新等投資」がそれぞれ4分の1を占めている。
 (活発な資金投入)
 元年度設備投資実績を支払ベースでみると、設備投資の大幅な増加に対応して、2兆8,061億円と前年度実績に比べ39.9%増となった。調達資金別には、元年度の金融情勢等を反映し、外部資金が63年度実績額1兆825億円に対して、1兆7,074億円、57.0%と大幅増となった。
 この結果、投資総額に占める外部資金の割合は、60.8%と前年度に比べ6.8ポイントの増加となり、外部資金の内訳では、社債が2.7倍、外資の導入が4.8倍と大幅増加し、シェアも増加したのに対し、民間金融機関からの借入は42.1%増であったもののシェアは微増、政府系金融機関からの借入(17.3%増)、株式(16.2%増)等はシェアが減少した。一方、内部資金は、39.2%と前年度に比べ6.8ポイントの減少となった。
 資金調達別に、5年前の59年度と比較してみると〔2−1−54図〕のとおり、内部資金、外部資金の割合については、大きな違いはないが、外部資金のうち民間及び政府系金融機関の占める率が減少し、社債・株式発行による資金調達の増加が目立っている。
 (堅調な平成2年度投資計画)
 平成2年度の設備投資計画〔2−1−52表〕をみると、総額3兆1,565億円、前年度実績比13.0%増と、経済の好況を反映し運輸業においても堅調な投資意欲がうかがわれる。主な事業の投資計画をみると、鉄道業が車両増強、軌道改良工事等引き続き高い投資が計画されており、前年度の21.4%増1兆2,174億円となっているほか、航空関連施設業、倉庫業、造船業等でも活発な投資が計画されている〔2−1−55表〕
 また、投資動機別内訳をみると、「研究開発のための投資」(58.7%増)が引き続き高い伸びを示しているとともに、「合理化・省力化投資」(46.7%増)が高い伸びを示し、「能力増強投資」(21.1%増)を上回っていることが特徴である。




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