平成2年度 運輸白書

第7章 航空の新たな展開

第2節 航空輸送の活性化に向けて

    1 航空輸送の活性化
    2 国際航空路線網の充実


1 航空輸送の活性化
(1) 三大空港プロジェクト関連
 現在、我が国においては、航空輸送の量的拡大に対する国民の緊急の要望に応えるため、三大空港プロジェクトが同時並行的に進められているところである。その推進にあたっては、空港基幹施設の着実な整備のみならず完成後の三大空港がその機能を十分に発揮し得るよう格納庫、整備工場、貨物上屋等航空関連企業の施設が円滑に整備されることが必要である。
 航空関連企業においては、今後数年間、このような航空関連施設の整備による巨額の設備投資が集中するため、減価償却費負担、金利負担、賃貸料等の急増により収支が悪化し、航空運賃の上昇等航空サービスの低下をもたらしかねない。したがって、運輸省としても、航空関連企業がこのような今後の費用負担の増大及び収支の悪化に備えて、積極的に経営の合理化、財務体質の改善に努め、三大空港プロジェクトの円滑な推進とその完成後の経営の安定化及び航空輸送サービスの安定的供給を図ることが利用者利便の観点からも必要であると考えている。
(2) 航空企業の経営体質の強化のために
(ア) 空港制約の解消とその影響
 新東京国際空港の完全空港化や関西国際空港の開港は、我が国発着の国際航空輸送力を飛躍的に増大させることとなるが、これに伴う外国航空企業の輸送力の拡大は、我が国企業を外国企業との激しい競争下に置くこととなり、我が国企業と外国企業との企業体質の格差を顕在化させるものと考えられる。
 また、国内航空の分野においても、東京国際空港の沖合展開工事の完成や関西国際空港の開港は、国内航空輸送について輸送力の制約を解消し、輸送力の大幅な拡大を可能とすることになるが、このことは、ダブル・トリプルトラック化の一層の推進を促すとともに国内航空輸送分野において我が国航空企業間に激しい競争をもたらすこととなる。
(イ) 経営体質の強化の必要性
 今後の航空企業を取り巻く経営環境について以上に述べたような認識に立つならば、我が国航空企業は国際輸送分野においては外国航空企業との厳しい競争下に置かれ、同時に国内輸送の分野においても、航空企業間の競争が激化することになる。この結果、採算性の高い路線においても、座席利用率の低下等に起因して収益率の低下が生じることが予想され、その場合には、採算性の低い路線の維持が困難となるおそれもある。
 以上のような状況下で経営の安定化を図っていくために、我が国航空企業全体を通じて一層の、あるいは根本的な経営体質の強化を図っていくことが不可欠である。また、このことによって、我が国航空交通ネットワークの維持・発展が図られ、将来における利用者利便の一層の向上のための基礎整備が図られることとなる。
 このため、航空企業においては、安全の確保を基本としつつ、経営の合理化、財務体質の改善等によるコストの改善を図るとともに、関連事業の積極的な展開、創意工夫をこらしたサービスの提供等を通じた需要の喚起を図ることにより、経営の効率化と活性化を積極的に進めていく必要がある。

2 国際航空路線網の充実
 我が国は、2年8月現在、39か国との航空協定を締結し、49社の外国航空企業が我が国に乗り入れているが、我が国をめぐる国際航空需要が大きく、かつ、拡大基調にあることから、これらの国から新規路線の開設や輸送力の拡大の要望が増加している。また、我が国に対し、新たに航空協定の締結を申し入れている国は39か国に達している。しかしながら、我が国の基幹的な国際空港である新東京国際空港及び大阪国際空港は空港能力上の制約があるため、多くの航空企業の増便、新規路線の開設等の要望に対応することが困難になっている。
 したがって、今後は新東京国際空港の二期工事及び関西国際空港の整備の進捗状況を踏まえつつ、地方空港の国際化を推進し国際航空ネットワークの多極分散を図ることも含め、輸送需要への適切な対応、相手国との権益の均衡、我が国航空企業による国際線複数社制の推進等の観点から国際航空路線網の充実を図っていく必要がある。
 他方、一般的に、地方空港発着の国際定期路線の開設は、多くの場合需要状況等から見て難しいため、まず、国際チャーター便を就航させ、需要の掘り起こしを図ることが重要である〔2−7−14図〕。このため、地方空港発着の国際チャーター便を実施する上で必要な需要の掘り起こし、機材の確保、CIQの協力等の課題を総合的に解決するためのテスト・ケースとして、地方空港発着のモデル・プログラム・チャーター〔2−7−16図〕を昭和63年以来これまで4回実施している〔2−7−15表〕。この運航結果等を様々な角度から検討することにより、地方空港の国際化に資することとしている。




平成2年度

目次