平成2年度 運輸白書

第8章 観光レクリエーションの振興

第8章 観光レクリエーションの振興

第1節 観光の振興

    1 90年代観光振興行動計画(TAP90'S)等の推進
    2 海外旅行倍増計画(テン・ミリオン計画)の推進
    3 外航客船旅行の振興


1 90年代観光振興行動計画(TAP90'S)等の推進
(1) 観光立県推進会議の開催
 運輸省では観光の振興が地域の活性化、国民のゆとりある生活の実現、国際相互理解の増進等に大いに貢献することから、21世紀を目指して観光のより一層の振興を図るため63年4月「90年代観光振興行動計画(TAP90'S)」を策定した。
 この行動計画は、中央及び選定された地方ごとに有識者からなる観光立県推進会議を開催し、官・民、中央・地方が一体となって観光振興に関する具体的施策を提言し、実行に移そうとするものである。
 観光立県推進地方会議は、平成元年度に2回開催され、本年は、6月4日から6日まで北海道において第3回観光立県推進地方会議が、10月29日から31日まで富山・石川・福井県において第4回観光立県推進地方会議が開催された。これらの地方会議では、それぞれの地域の特質に応じた観光振興方策について活発な審議が行われ、その結果は逐次実施に移されるなど、観光立県推進運動は着実な成果をあげている。
(2) 新たな観光地作り
(ア) 総合保養地域の整備
 ゆとりある国民生活の実現、地域の活性化等のため、「総合保養地域整備法」(いわゆるリゾート法)では、国民が余暇を利用して滞在しつつ、スポーツ、レクリエーンョン、教養文化活動等の多様な活動を行うことができる総合保養地域を、民間活力の活用に重点を置きつつ整備することとしている。
 同法により、平成2年6月末までに総合保養地域の整備にかかる24道府県の基本構想が承認されている。
 運輸省としても、周辺の既存観光地との調和やその積極的活用により、魅力ある総合保養地域の整備が図られるよう、積極的に支援していくこととしている。
(イ) 家族旅行村の整備
 家族旅行村は、家族が恵まれた自然の中で手軽に観光レクリエ−ション活動ができるようキャンプ場、ピクニック緑地、スポーツレクリエーション施設、簡易宿泊施設等を整備するもので、現在、32地区において供用が開始され、12地区において整備が行われている〔2−8−1図〕
(3) 外国人訪日促進施策の推進
(ア) 外客誘致活動の充実
 外客の誘致は、国際的な相互依存関係がますます高まる中で、文化的背景の異なる諸国との相互理解・相互交流の機会を提供し、市民レベルでの国際親善を進めていくうえで、積極的な意義を有している。
 このため運輸省としては、海外における観光宣伝や、外国人観光客に対する情報提供といった外客の来訪促進のための事業を、(特)国際観光振興会を通じて行っているほか、訪日外客の利便を増進し、国際交流を一層促進するため、同会や地方公共団体等と連携しながら以下の諸施策を実施している。
(イ) 国際観光モデル地区の整備
 国際観光モデル地区構想は、外客が安心して一人歩きできる環境をつくり、同地域への外客の来訪を促進し、地方の国際化、国際的相互理解の増進等に寄与しようというものであり、現在34道県36地区が国際観光モデル地区に指定されている〔2−8−2図〕。同地区においては、地方公共団体等が中心となって整備実施計画を策定し、この計画に基づき、国際観光振興会と連携して「i」案内所、総合案内板、各種標識等の整備、パンフレットの充実、善意通訳、ホ一ム・ビジットの普及等外客受入体制の整備を推進している。
 この結果平成2年4月には、指定された36地区において「i」 案内所は指定前の29カ所から70カ所に、総合案内板は228カ所から809ヵ所に、善意通訳者は5,485人から13,882人にそれぞれ増加した。
 また、国際観光モデル地区相互間の連携を密にするため、昭和62年11月、各道県及び(特)国際観光振興会で組織する「国際観光モデル地区推進協議会」が設立され、同協議会において、観光宣伝、外国人旅行者受入れ体制整備及びイベントに関する各委員会を設け、その具体的な推進方策等について検討を進めている。特に今年度は、より効果的な受入れ体制の充実を図るため、外国人による国際観光モデル地区の整備状況の現地調査を開始した。
(ウ) 国際交流村の整備
 国際交流村は、国際観光モデル地区における外客誘致の拠点として、外客に地域の自然、文化、歴史等の紹介や外客の伝統的生活文化体験のための施設、イベントを通じた外客と地域住民の交流の場となる施設等を一体的に整備するもので、63年度から事業が開始されており、現在7地区において整備が行われている〔2−8−2図〕
(エ) 国際市民交流基盤施設の整備
 市民レベルにおける国際化の促進に資する交流拠点の形成を図るため、民活法に基づき「国際市民交流基盤施設」(注)の整備を行う民間事業者に対して金融、税制の支援措置を講じることとしている。

(注) 「国際市民交流基盤整備」とは、我が国又は外国の経済・社会・技術等を効果的に紹介するための一群の施設のことであり、以下の施設を一定のエリア内に整備するもののことである。

1.展示施設(ex.歴史博物館、観光情報インフォメーションセンター等)
2.展示物として供される建物又は構築物(ex.城の再現、外国の街並みの再現等)
3.観覧場その他の共同利用施設(ex.イベントスぺース、総合案内所等)

(オ) 登録ホテル・旅館等の整備
 訪日外国人の利便の増進等による国際観光の振興の観点から、国際観光ホテル整備法に基づき、施設・設備の優れたホテル・旅館を登録するとともに、国際観光レストラン登録規程に基づき、外国人旅行者が容易にかつ快適に食事ができる優秀なレストランを登録することにより、外客接遇の充実を図っており、運輸省としては、登録を受けたホテル・旅館等については税制等の支援措置を講ずることとしている。これにより、平成2年10月現在、610軒のホテル、1,630軒の旅館及び145軒のレストランが登録されている。
(4) コンベンションの振興
(ア) 国際コンベンション・シティ構想の推進等
 国際及び国内の各種会議、見本市・展示会などのコンベンションの振興は、地域へ人とともに物、情報、文化等を呼び込むことを通じて、人的交流等による国際相互理解の増進、地域経済の活性化及び地方都市の国際化等に大きく寄与するものであることから、近年、多くの地方都市がその振興に熱心に取り組んでいる。
 このような状況に対応して、運輸省では、国際コンベンション・シティ構想に基づき、63年4月及び12月に全国の25都市を国際コンベンション・シティとして指定し〔2−8−3図〕、(特)国際観光振興会の海外宣伝事務所を通じた諸外国への宣伝、(社)日本コンベンション振興協会によるコンベンション振興セミナー、コンベンション・シンポジウム等による人材育成、ノウハウ及び情報の提供等の支援措置を講じている。
 また、地域におけるコンベンションの誘致・受入れ、主催者に対する支援等の活動を行う中核的推進機関である地方コンベンションビューローの設立等に対する指導を通じて、地域における振興体制の整備を推進している。これまで運輸省の指導のもとに、仙台、福岡、横浜、宮崎、岐阜、浜松、千葉、前橋、富山及び北九州で財団法人としてコンベンションビューローが設立された。
(イ) 国際会議場施設の整備
 運輸省においては、民活法に基づき、国際会議場施設の整備を行う民間事業者に対して、金融・税制の支援措置を講じることとしている。同法に基づき、63年1月に横浜国際平和会議場、平成元年2月には、富山県の宇奈月国際会館に係る整備計画の認定を行っており、本年度においても、昨年度に引き続き当施設の整備を推進している。
(5) 旅行者保護施策
 旅行業は、目に見えない商品を取り扱うサービス産業であり、旅行は予定通りのサービスを履行されることそのものに意味があることから、事後的な補償では補いきれない面が大きい。したがって、トラブルの発生を可能な限り、未然に防止することが強く要請される。
 このため、運輸省では、旅行業法に基づき、消費者保護の見地から旅行業者を登録制とし、営業保証金の供託、旅行業務取扱主任者の選任、取引準則の遵守等を義務付けているほか、主催旅行広告の適正化等についてきめ細かな指導・監督を行っている。
 さらに、旅行業法の遵守を徹底し、消費者保護の一層の充実を図るため、平成2年3月に旅行業者に対する立入検査等旅行業法遵守状況の総点検を行うとともに、(社)日本旅行業協会及び(社)全国旅行業協会が行った「いい旅しよう'90」キャンペーンに都道府県及び(特)国際観光振興会とともに協力し、@旅行者に対する登録業者利用励行の呼び掛け、A営業保証金制度及び弁済業務保証金制度の周知、B無登録業者に対する監視体制の整備、C各種メディアを利用した旅行業制度のPRの促進を図った。また、平成2年7〜8月にはホームステイツアーをより一層有意義なものとするため、(社)日本旅行業協会が行った「ベターホームステイツアー」キャンペーンを後援し、ホームステイツアーの意義の周知等を図った。
 また、近年の海外旅行の増加に伴い、旅行者が事故等に遭遇するケースも増大していることから、旅行業者に対し、旅行者への安全情報の提供及び保険加入促進並びに緊急時における連絡体制の充実を図るよう指導している。
(6) 今後の国内観光の振興に向けて
 運輸省では、今後の観光政策のあり方について審議するため、平成元年11月運輸政策審議会総合部会に「国内観光小委員会」を設置し、平成3年春頃の答申を目途に、21世紀を展望した国内旅行のより一層の振興方策や外客の受入方策等について、現在、検討を進めている。

2 海外旅行倍増計画(テン・ミリオン計画)の推進
(1) 計画の策定及び見直し
 日本人の海外旅行の促進を図ることは、国際相互理解の増進に役立つだけでなく、受入国においては雇用機会の増大や観光関連産業の発展等による経済振興に資するとともに、我が国及び相手国の国際収支のバランス改善にも寄与するものであることから、相互依存関係の深まる国際社会において我が国の安定的な存立を確保するために極めて重要なものとなっている。運輸省は日本人海外旅行者数(昭和61年552万人)を概ね5年間で1,000万人に倍増するとの目標を定めて、海外旅行を計画的かつ総合的に推進するため62年9月に「海外旅行倍増計画(テン・ミリオン計画)」を策定し、63年7月には各方面からの提言等を取り入れつつ日本人の海外での安全対策や長期休暇取得運動の充実を図るため所要の改正を行い、国民の海外旅行を促進するための施策を強力に推進している。
 その結果、平成元年の日本人海外旅行者数は、対前年比14.7%増の966万人と史上最高を記録し、目標年次より1年早い平成2年において1,000万人という目標を達成することが確実となっている。
 国民の余暇活動の充実、国際相互理解の増進、諸外国の経済振興、地方の国際化といった海外旅行促進の意義は我が国にとってますます重要となってきていることから、運輸省では、来年春を目途に新たな政策パッケージ(ポスト・テン・ミリオン計画)を策定する予定であり、平成2年1月運輸政策審議会国際部会に「国際観光小委員会」を設置し、日本人海外旅行の振興方策について審議を重ねている。
(2) 計画の具体的実施状況
 開発途上国における日本人観光客を含めた外客受入れ環境を整備するため、国際観光開発総合支援構想(ホリディ・ビレッジ構想)を推進するなど、諸外国の観光開発・振興に対する経済・技術協力の充実・強化を図り、観光関係従業員の交流等を推進した。また、日本人観光客受入れの促進策や阻害要因の改善策等について意見交換を行うため、官民合同の海外旅行促進ミッションを諸外国へ派遣し〔2−8−4表〕各国の歓迎を受けているが、2年度は米国、英国へ派遣され観光交流を一層促進することが合意されるなど、多大な成果を上げている。さらに、海外観光情報の充実を図り、開発途上国の観光宣伝活動を支援するため、民間企業に参加を呼びかけ「善意観光宣伝事務所制度」を推進し、観光宣伝コーナーの設置、観光展の開催等を行っている。安全対策については、運輸省において「日本人海外旅行安全等対策研究会」を設置し、旅行者への安全情報の提供、事故時の連絡体制の充実に関する旅行業者に対する指導の徹底、学校旅行総合保険の新設、任意保険への加入促進等を検討、実施してきている。また、「海外旅行倍増計画」を民間レベルで推進する母体である海外旅行促進フォーラムにおいては、国際観光開発総合支援構想の推進、モデル・プログラム・チャーターの実施等による地方空港の国際化、外航客船旅行の振興等について、活発な意見交換が行われ、施策に着実に反映させている。

3 外航客船旅行の振興
 平成元年は、本格的な外航クルーズ客船である「おせあにっく ぐれいす」「ふじ丸」が相次いで就航したほか、日韓間を数時間で結ぶ高速の旅客船による定期航路も開設され、外航客船時代の幕開けを迎えた。
 外航客船による日本人旅行者数は、平成元年の実績で定期船旅客(出国者及び入国者の合計)約84,200人、クルーズ旅客(海外まで航空機で移動し、現地でクルーズを楽しむという、いわゆるフライ&クルーズによる旅客を含む)約58,100人の合計約142,300人となっており、引き続き大幅な伸びを示している〔2−8−5表〕
 平成2年以降も、新たな外航客船の就航や近隣諸国との間に数多くの新規旅客定期航路の開設が予定さているなど、今後は国民が外航客船に親しむ機会が急速に増え、外航客船旅行がより一般化していくものと思われる。
 このような状況を背景に、運輸省においては平成元年11月、運輸政策審議会総合部会に外航客船の振興方策について審議するために「外航客船小委員会」を設置した。同小委員会は、2年3月に安全確保対策及び利用者保護対策を中心とした外航客船旅行の振興を図るための施策について「中間とりまとめ」を行っている。
 また、外航客船の整備に関しては、昭和63年度より日本開発銀行からの長期・低利の融資が行われている。




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