(1)旅客輸送

〜順調に増加し、競争力も強化


 49年度にピークを迎えて以降減少していた国鉄旅客輸送量(人キロベース)は、分割・民営化後は、運賃の据え置き、JRのうち6つの旅客会社(以下「JR6社」という。)によるサービスの向上、青函トンネル及び瀬戸大橋の開通等により順調に増加した。62年度から平成3年度までは、好調な国内景気にも支えられ輸送量は高い伸びを示した。4年度から7年度は、阪神・淡路大震災の影響のあった6年度において減少した以外は、景気後退の時期があったことを反映して低い伸びとなった。
 JR6社合計の旅客輸送量を国鉄時代と比較してみると、分割・民営化直前の10年間(昭和52年度〜61年度)の旅客輸送量の伸びが、年平均0.6%減であったのに対して、分割・民営化後9年間(62年度〜平成7年度)では年平均2.6%の増加となっている。また、国内旅客輸送全体におけるJR6社合計の分担率(人キロベース)を国鉄時代と比較してみると、国鉄時代は低下しつづけていたが、分割・民営化後は21%前後で推移しており、国鉄時代に続いていた分担率の低下傾向に歯止めがかかったと言える〔1−3−1図〕

 

 JR6社合計の旅客輸送量の分割・民営化後の9年間(昭和62年度〜平成7年度)の年平均伸び率2.6%は、民鉄の同期間における年平均伸び率1.2%を上回っている。また、これをJR東日本、JR東海及びJR西日本(以下「JR本州3社」という。)と民鉄が競合する大都市圏(東京圏(埼玉県、干葉県、東京都、神奈川県)、中京圏(愛知県、三重県、岐阜県)、阪神圏(京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)、以下同じ)の旅客輸送量(人員ベース)でみると、分割・民営化直前の昭和61年度対比で、民鉄は平成6年度11.1%増であったところ、JR本州3社合計では同25.2%増と伸び率が大幅に上回っている。このように、三大都市圏内においてJR本州3社は民鉄に対して競争力を取り戻しているとみられる〔1−3−2図〕

 

 国鉄とJR6社の距離帯別分担率を昭和61年度と平成6年度で比較してみると、750km以上では下がっているのに対し、500〜750kmでは上がっている。また、6年度の分担率をみると300km未満及び750km以上では低レベルであるが、300〜750kmの距離帯では5割から7割と高い分担率となっている。このように、300km未満では自動車が、750km以上では航空が優位にあるものの、従来輸送特性があるとされていた300〜750kmの中距離の都市間旅客輸送においてJRは依然競争力を保っている〔1−3−3図〕