第1節 経済・社会状況の変化に伴う物流構造変革


 近年の我が国経済は、緩やかな回復局面に入ってきたものの、さまざまな分野で大きな変化に直面している。国際的には、経済のグローバル化の進展により経済活動の国際競争が一層激化し、その中で我が国が競争力を維持していくために、企業の事業活動に適した環境の整備が求められている。また、国内的には、消費者の意識の成熱の中で、生活の豊かさを実感できるような社会の実現への要請が高まっている。
 物流は、我が国の国民生活と産業の基盤として極めて重要な役割を果たしていることから、こうした経済・社会状況の変化は、物流分野に大きな影響を及ぼしている。一つは、物流システム全体の効率化、消費者のニーズに応じた物流サービスの高付加価値化、物流商慣行の見直し等を通じて、物流分野のコストを低減しようという動きである。もう一つは、輸入品の受入体制の整備とともに、製品、部品等の輸入の急増という輸入品目構成の変化に対応した、国際物流とそれに接続する国内物流の円滑化である〔2−3−1図〕

 

 一方、環境問題についても、大都市地域を中心に窒素酸化物の排出量抑制や、地球温暖化の原因となる二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量抑制が重要な課題となっている。また、道路交通混雑の問題は依然として深刻であり、労働時間の短縮をはじめとする労働環境の改善や、今後予想される若年労働者の減少といった問題への対応も求められている。
 これらの諸点を考慮して、今後とも我が国経済や国民生活の真に豊かな発展を支える、効率的な物流体系の構築に取り組む必要がある。
 特に、我が国経済の高コスト構造の是正・活性化のために、「構造改革のための経済社会計画」が、平成7年12月1日に閣議決定されており、その中の「高コスト構造是正・活性化のための行動計画」において、物流効率化のための目標が掲げられている〔2−3−2表〕

 

 2−3−2表 高コスト構造是正・活性化のための行動計画(抄)
「構造改革のための経済社会計画」より
(平成7年12月1日:閣議決定)

高コスト構造是正・活性化のための行動計画−物流(総論)

3.目標
 (1)目標

  • コンテナターミナル等の基盤整備により、コンテナの輸出入に係る陸上輸送コストの1割低減を目指す。
  • 複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルからの上陸輸送の半日往復圏の割合について現在の約70%から約80%を目指す。
  • 荷主・貨物運送取扱事業者と連携し、鉄道貨物におけるパレタイズ貨物について2割程度を目指す。
  • けん引き重量1,200トン以上の列車本数の倍増を促進する。
  • RORO船、コンテナ船(モーダルシフト対象船種)の船服量が、従来の伸びを下回らない水準で増加するよに目指す。
  • 臨港地区を除く営業倉庫に占める流通型倉庫の割合について、2割程度を目指す。

 このため、港湾、空港といった基本インフラの整備を着実に進めるとともに、貨物駅、倉庫、上屋、トラックターミナル等の物流拠点の整備、海運・鉄道の積極的活用を図るモーダルシフトや複合一貫輸送の推進をはじめとする幹線物流の効率化及び積合せ輸送等を通じてトラックの積載効率の向上を図る地域内物流の効率化が必要となっており、運輸省では、これらの施策を積極的に進めていく。