(ア) 中小民鉄の維持


 中小民鉄は、地域における重要な生活基盤の一つとなっているが、過疎化による運賃収入の伸び悩みや人件費等の諸経費の増加等の理由から大部分の事業者が赤字経営となっている。このため、自立的経営を目指して鉄軌道設備の近代化等を推進しようとするものについては、設備整備費の一部を補助(近代化補助)し、また、他の交通機関への代替が困難であるものについては、当該鉄道の欠損額の一部を補助(欠損補助)するなど、従来から地方公共団体とともに各種の助成措置を講じている。
 近年は、経営努力による収支好転や並行道路整備の進捗等経営環境の変化等により対象事業者が減少したため欠損補助は縮小しているが、3年に発生した信楽高原鐵道の事故等に鑑み、4年度に安全対策に係る設備整備について近代化補助制度の一層の充実を図るとともに、鉄道係員に対する教育補助制度が新設された。さらには、4年度から転換鉄道等を近代化補助の対象としたことに伴う5年度以降の飛躍的な対象事業者数の増加等に呼応し近代化補助予算の大幅増額を図るなど、中小民鉄に対する支援体制は総合的に強化されている。
 今後、国及び地方公共団体においては、中小鉄道事業者の自立的経営のための努力を近代化補助等により支援し、一方、欠損補助を受けている事業者については速やかに欠損補助への依存から脱却するよう指導していくことが必要である。