(1) 我が国外航海運を取り巻く環境の変遷


 (アジア海運の発展)
 アジア経済の発展とともにアジアを巡る貿易は拡大を続けており、アジアにおいて巨大な海運市場を形成しつつある。中でも製品や半製品の輸送に適した海上コンテナ輸送が大きな発展を遂げることとなった。世界のコンテナ取扱量に占める東アジア10カ国の割合は昭和60年の28.6%から平成6年には42.7%にまで高まっている。
 また、我が国とアジアの間での国際水平分業の進展等により貿易構造が変化した結果、北米航路においては6年には中国が我が国を抜き最大の積み出し国となるなどアジアにおけるコンテナ物流の重心は我が国から他のアジア諸国へとシフトしてきている。
 このような状況の中で、従来日本発着貨物に大きく依存してきた邦船社が苦境に立たされる一方で、アジア船社が急増する自国貨物と安い人件費を背景にコンテナ定期部門を中心に急成長を遂げてきた。
 (コンソーシアムの再編)
 1980年代以降、世界のコンテナ航路においてはアジア船社の台頭により激しい競争が繰り広げられてきた。中でも北米航路においては、昭和59年の米国海運法施行以降の運賃水準の低迷等で撤退・倒産する船社が相次いだ。各邦船社は、アジア船社等への対抗上、内陸までの複合一貫輸送(インターモーダル)サービスの向上を図ったが、その投資が重荷となったことに加え、急激な円高の進行による円ベースでの収入の目減りにより、巨額の赤字を計上してきた〔2−7−1図〕

 

 その後、運賃は平成7年はじめにはドルベースでは昭和59年のレベルまで回復するに至り、経営合理化の効果や為替相場が円安に振れたこともあり、平成7年度の邦船社の北米航路における赤字幅は大幅に減少した。しかしながら、平成7年秋以降各社がシェア拡大のため運賃競争を展開したことにより運賃は再び急落し、各船社とも厳しい航路運営を余儀なくされている。
 このような中、コストを抑制しつつサービス水準を向上するための方策として、世界的な規模でのコンソーシアムの再編が進められている〔2−7−2図〕。今回のコンソーシアムは欧州・米国・アジア・日本といった異なる地域の船社が世界的な規模で提携しているのが特徴であり、コンテナ定期航路を営む日本の3船社もそれぞれ外国の船社をパートナーとしている。従来、単独サービスを行っていた船社も多くがコンソーシアムを形成する等、世界の定期航路は巨大なコンソーシアム間で競争が行われる新たな大競争(メガ・コンペティション)時代に入ったと言える。