(1) 現状と課題


 四面を海に囲まれ、エネルギーの約9割、食料の5割強を海外に依存する我が国では、国際海上貨物は日本の貿易量の99.8%、貿易額では約8割のシェアを占めている。国際ゲートウェイとしての港湾は、物流の主力を担っている。

 

 

 1966年に初めてコンテナ船が国際航路に就航してから30年、海上コンテナ輸送は荷役の効率性等を背景に年々順調に増加し、今や我が国の外貿定期貨物量の約9割、貿易額の約5割を占めるなど、国際物流の主力となっている。近年では経済のグローバル化、円高等を背景とした輸入コンテナ貨物量の伸びが著しく、94年には、初めて輸入が輸出を上回った。

 

 

 世界では、コンテナ貨物量の伸びが特に著しいのがアジアである。アジアでは活発な経済の発展を背景に、4年間で1.7倍と年平均14%の高い伸びを示している。しかしながら、これらの貨物が我が国港湾で取り扱われる比率は相対的に低下しつつあり、昨今ではアジアと北米、欧州等とを結ぶ基幹航路のうち我が国に寄港しない航路の割合が増加している。

 

 

 また、海上コンテナ輸送は、更なる合理化・効率化をめざし、船舶の大型化が進められている。特に、90年代に入ってから、4,000TEU()以上のコンテナを積み込むことができる大型コンテナ船の建造・就航が急激に伸びており、世界的なコンソーシアムの形成の進展により、この動きはさらに加速している。このため、欧米等との長距離基幹航路に就航する船舶の主力となりつつあるこれら大型コンテナ船に対応した、大水深コンテナターミナルが必要となってきている。  

 我が国の大水深コンテナターミナルの整備状況は世界の主要港の水準を大きく下回っており、特に香港、シンガポールで既に供用されている5万トン級の船舶が接岸可能な水深15m級の大水深コンテナターミナルが不足している。加えて、荷役サービス、港湾に係る手続きの簡素化、港湾における情報化などソフト面の改善の必要性も指摘されている。  

 このような課題に適切に対応せず、我が国港湾の国際競争力が失われ、我が国港湾に基幹航路に就航する大型船が寄港しなくなりフィーダーポート化した場合には、

ことなどが懸念され、その影響は港湾のみにとどまらず、我が国経済全体の問題となると考えられる。

 また、真に豊かな国民生活の実現と我が国産業の国際競争力の保持のため、物流の高コスト構造を是正することが喫緊の課題となっている中、物流の基盤として重要な役割を果たしている港湾においても適切な対応を図ることが重要である。

 
(注)20フィート・コンテナに換算したコンテナ個数