(2) 観測・監視体制の充実強化


 気象庁は、地球温暖化の実態解明を進めるため、世界気象機関(WMO)が推進している世界気象監視計画や全球大気監視(GAW)計画等に基づく全球的な監視網の一翼を担うべく、観測・監視体制の強化を図っている。具体的には、大気環境観測所(岩手県三陸町綾里)及び南鳥島気象観測所における、二酸化炭素、メタンなど温室効果ガスの濃度等 の観測に加え、9年1月からは沖縄県与那国島で二酸化炭素濃度等の観測を開始する予定である。また、5年4月から民間団体との協力により行っている日本−オーストラリア・シドニー間における定期航空機による上層大気中の温室効果ガスの定常観測や元年からおこなっている海洋気象観測船「凌風丸」による北西太平洋での大気及び海水中の温室効果ガス〔2−10−1図〕、海水中のフロン、有機炭素等の観測を引き続き実施する。

 

 このほか、WMO等の世界気候研究計画(WCRP)等の一環として、東経137度線に沿った赤道域までの海水温・海流等の海洋観測をほぼ30年間にわたり続けている。  また、二酸化炭素等の温室効果ガスの世界各国の観測・監視データの収集・管理・提供を行う「WMO温室効果ガス世界資料センター」の役割を担っており、これらの観測・監視の成果をもとに温室効果ガスと気候変動の動向についての評価を、毎年「地球温暖化監視レポート」として公表している。
 さらに、アジア・南西太平洋地域各国におけるGAW観測・監視データの品質向上を図る「WMO品質保証科学センター」に関する業務を、7年10月から実施している。
 気象研究所では、WCRPに沿って大気中の二酸化炭素濃度の増加に伴う地球温暖化の予測実験を気候モデルにより行い、その成果は7年末に公表されたIPCCの第二次評価報告書にも取り入れられた。また、雲の地球温暖化への影響、成層圏変動が気候に及ぼす影響、二酸化炭素等の大気−海洋間の循環等の研究を進めている他、人工衛星を用いて地球温暖化に伴う全球の海面水位変動を検出する手法の研究を開始した。
 また、気象庁は、大気中の二酸化炭素濃度の増加に伴う向こう100年間の気候変化の気侯モデルを用いた予測計算結果を基に「地球温暖化予測情報」を作成し、その内容をCD−ROMに収録して8年7月に公表した。
 海上保安庁では、海洋が地球温暖化に与える影響の解明に役立てるため、国連教育科学文化機関・政府間海洋学委員会(UNESCO/IOC)が推進している西太平洋海域共同調査に参加し、本州南方から赤道域において測量船による海流、水温、塩分、波浪等の定常モニタリング観測等を実地している。
 また、海上保安庁及び気象庁は、地球温暖化に伴う海面上昇の実態把握等のため、日本の主な港湾及び南極昭和基地において潮位観測を行っている。
 このほか、南極における国際科学活動の調整・推進等を図るために国際学術連合会議の中に設置された、南極研究科学委員会の調整のもとに実施されている日本南極地域観測の海洋定常観測部門を担当し、南極海の海洋構造把握のため海洋観測及び漂流ブイの追跡調査を実施している。
 一方、海上保安庁の「日本海洋データセンター」では、地球温暖化問題に係る各種共同調査のデータ管理機関として得られた海洋データの収集・管理・提供を行っている。