自動車によるCO2排出の増加の1つの側面は、モータリゼーションの進展に伴う自動車による旅客・貨物の輸送量の増加である。
我が国の旅客輸送量を人キロベースでみてみると、自動車の輸送量が絶対量も大きく、かつ堅調な伸びを示している〔1−2−10図〕。また、貨物輸送量をトンキロベースでみてみると、内航海運、鉄道の伸びが横ばいで推移しているのに対し、自動車は堅調な伸びを示しており、物流における自動車の占める比重が一層高まってきている〔1−2−11図〕。また、自動車の走行キロについても、旅客、貨物ともに増加傾向にある〔1−2−12図〕。
(2) 自動車からの排出の増加の背景
戦後我が国の経済社会システムの中で自動車の保有台数は増加の一途をたどってきており、9年度末現在、我が国の自動車保有台数は約7,286万台に達している。中でも自家用乗用車(軽四輪車を含む)の台数の伸びがめざましく、9年度末現在では、10年前に比べて約1.4倍の増加となっている〔1−2−13図〕。その一世帯当たりの保有台数は、9年度末現在、全国平均で1.03台となっている〔1−2−14図〕。都道府県別にみると、上位に群馬県、栃木県、茨城県等、首都圏周辺県が多く含まれており、大都市圏の周辺部において自家用乗用車の普及が著しいことがうかがえる〔1−2−15図〕。こうした自家用乗用車の普及の理由としては、利用したいときにいつでも利用できるといった随時性、出発地から目的地まで直接ドア・ツー・ドアで移動することができるという機動性、荷物を持たずにすむといった快適性等、バスや鉄道等の公共交通機関にはない利便性をそなえていることが大きいと思われる。
我が国の乗用車の保有台数を排気量別にみてみると、いわゆる5ナンバーの小型乗用車のうち、1,001cc〜2,000ccの排気量のものの保有台数はほぼ横ばいで推移しているが、2,000ccを超えるいわゆる3ナンバーの普通乗用車については近年大幅に増加しており、8年においては元年の約5倍にもなっている〔1−2−16図〕。このように、近年乗用車の排気量の大型化が進んでいる背景には、元年度に普通乗用車に係る自動車税の額が大幅に引き下げられたこと等の影響があると考えられる。
また、近年の野外レジャーブームに代表されるように、自動車を利用する余暇活動が多様化しており、いわゆるRV車(注)を購入する人が増えている。RV車は車重、排気量ともに大きいものが多いが、3年と9年で比べてみると、国産車全体の販売台数が伸び悩む中、RV車の販売台数は約2.5倍と大幅に増加しており、自動車の排気量の大型化に拍車をかける形となっている〔1−2−17図〕。
さらに、国民の所得水準の向上に伴う自動車価格の相対的低下、自動車の性能や居住性等の著しい向上により、自動車利用者の購入意欲を高めたことは、自動車の保有台数の増加の理由のひとつと考えられる。
(b) 運転免許保有者の増加
自動車保有台数とともに、運転免許保有者の数も増加している。9年12月末現在での運転免許保有者数は約7,127万人となっており、16歳以上の人口に占める保有者の割合は男性83.3%、女性53.0%、全体では67.7%となっている〔1−2−18図〕。特に女性の社会進出の増加等を背景に、女性の運転免許保有率が上がっている〔1−2−19図〕。
(c) 道路整備の進展
高速自動車国道をはじめとする道路整備の進展については、目的地までの到達時間の短縮等の効果を通じて、自動車の利用増加の1つの要因となっていると考えられる。
高速自動車国道は、昭和40年代から全国的に整備がすすめられてきたところであり、平成8年度末の供用延長は6,000kmを超えている。整備に伴って利用台数も確実に増加しており、目的地までの時間短縮等に大きな効果をもたらしている〔1−2−20図〕。
(イ) 自動車の利用増加による国民生活及び経済活動の変化
自動車保有の増加、免許保有者の増加、道路整備の進展という環境の整備に伴い、自動車の利用は飛躍的に増加した。このことは、国民生活上、自動車の利用を前提とした生活スタイルをもたらしている。例えば、近年郊外に、駐車場を併設した大型ショッピングセンター、レジャー施設、レストラン等が増加しており、買い物等の外出時に気軽に自動車が利用されている。郊外大型小売店の近年の開店状況をみると、5年から9年の最近5年間に開店した大型小売店のうち、郊外幹線道路沿いに立地しているものは半分以上となっている〔1−2−21図〕。
また、オートキャンプ場を滞在拠点とした自動車による旅行、旅行先でのレンタカーの活用等も増加している。オートキャンプ場の設置状況をみてみると、着実に増加しており、自動車利用を前提としたレジャー形態が普及していることがうかがえる〔1−2−22図〕。
(b) 輸送の多頻度化・小口化
経済活動の面においても、近年、我が国の製造業等における部品在庫管理コストの圧縮のためのいわゆるジャスト・イン・タイムでの納品体制の普及や、店内在庫を圧縮したコンビニエンスストアの普及等により、自動車による輸送が多頻度化・小口化するようになっており、必要となるトラックの台数も増加する傾向にある〔1−2−23図〕。また、消費者ニーズの高度化、多様化に伴い、戸口から戸口への輸送が可能である宅配便の急成長も物流の多頻度化・小口化傾向に拍車をかけている形となっている〔1−2−24図〕。
(注)レクリエーショーナル・ビークル(Recreational Vehicle)の略で、ステーションワゴン、ワンボックスワゴン、オフロード4WD及びセミキャブワゴンを総称していう。