4 港湾荷役問題への対応


 8年11月、米国連邦海事委員会(FMC)は、我が国の民間における港湾慣行である事前協議制度等が改善されない場合には、我が国海運企業3社が米国の港に寄港するたびに10万ドルの課徴金を課すとの制裁措置を発表した。我が国は、このような一方的制裁措置は日米友好通商航海条約及びWTOの精神に違反するものとして即時撤回を求めた。
 同制裁措置は、9年4月に日米間で事前協議制度等の改善に関する協議覚書が作成されたことを受けて一旦9月4日まで停止されていたが、FMCは、事前協議制度の改善がみられないとして、同日我が国海運企業3社に対する制裁措置を発動した。
 その後、9月分の課徴金(400万ドル)の支払期日とされた翌10月15日を目前に控え、事前協議制度の改善について運輸省はギリギリまで関係者間における合意を得るべく努力を続けた。具体的には、米国海運企業等を除く運輸省を含めた関係者間で事前協議制度の改善についての事実上の合意を得、10月10日から米国ワシントンD.C.において日米海運協議を開催し、事前協議制の改善についての進捗状況を説明するとともに、制裁措置の撤回を求めたものの、米側が港湾労使問題に対する日本政府の介入をあくまで求めたことから協議は難航、最終的に17日に次官級協議が開催され、事前協議制度の改善等について大筋決着した。
 しかし、FMCは我が国海運企業3社の運航船舶の入港禁止という強行措置の実施は留保したものの、依然として課徴金の徴収に固執したため、10月27日、3社はFMCに150万ドルを支払うことを余儀なくされた。
 その後、11月10日に駐米大使と米国務長官との間で事前協議制度の改善について関係者間で合意がなされたこと、今後日本における港湾慣行について問題が発生した場合には、原則として、まず日米政府間協議による解決を試みるとともに、米国国務省等からFMCに対し協議中は制裁措置を控えるよう勧告すること等を確認した書簡が交換される形で決着し、FMCは13日に制裁措置を停止したが、未だ完全に撤回するには至っていない。
 米側の制裁措置は、入港や貨物輸送等について内国民待遇及び最恵国待遇を相手国船舶に保証した日米友好通商航海条約に違反する行為であるため、その撤回を求めて同条約に基づく政府間協議を我が国より米側に申し入れた。10年1月に米国で予備協議を、7月に東京で第1回目の本協議を行ったが、米側は依然としてその違法性を認めていないため、我が国としては今後ともその撤回を申し入れていく。
 さらに、今回の米国の制裁措置のように、外国政府が我が国海運企業に対し不当に差別的な負担金・課徴金の納付を義務付ける等一方的な制裁措置を行う場合に、我が国として対等な立場を確保し、こうした不当な措置に対抗できるようにするため、当該国の外航海運企業に対し、その国が徴収する負担金・課徴金に相当する金額の納付を通告することができるようにすること等を内容とする「外国等による本邦船舶運航事業者に対する不利益な取扱いに対する特別措置に関する法律(いわゆる対抗立法)の一部を改正する法律」が議員立法により9年12月12日に成立し、19日公布、施行された。


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